彼女は、物語を読む。
やざき わかば
彼女は、物語を読む。
彼女は、読書が好きだ。
昼下がり。外は小雨が降っており、さらさらと心地よい音がかすかに響く。その音に包まれながら、彼女は今日も読書にふける。
物語を読んでいると、そこに登場する人物や動物、植物。建物や大地、空に至るまで、読み取れる情報全てが、頭の中で再構築される。
そうすることで、その物語の一員になったような、まるで自分がそこに昔から住んでいるような、そんな気持ちになれるのだ。
登場人物の中に、性格の悪い者や極悪人がいれば、作中の人間と一緒に嫌悪憤慨し、何か良いことがあれば、一緒に喜べる。そんな素敵な空想に浸れる。
とはいえ、彼女は読書で現実逃避をするような人物かと言うと、そうではない。元々活発な性格で、新しいことに挑戦する行動力もあり、頭も良い。友人も昔から多かった。
友人たちと遊ぶ時間も、スポーツや他の趣味に打ち込む時間も、全てが尊い。しかしその中で、他の人間や、ものによっては亜人、怪物、魔物の今までの「生」を読み取り想像出来る読書が、特に好きだっただけなのだ。
彼女はひとつの作品を読み終え、少しの眠りについた。
さて、彼女は「読書」を通じて、「物語」に出てくるキャラクターの生い立ちや性格、口調、暮らしぶり等々、いろいろなことを知ることが出来た。
それは彼女が読み手…読者だったからである。
そして今、その彼女の人生や趣味、楽しみを読んでいる貴方もまた、読者であるわけだ。
では、貴方の人生や生い立ち、趣味や楽しみもまた、誰かに読まれているのではないだろうか。
視線を感じませんか?
後ろに気配を感じませんか?
変な音は聞こえませんか?
天井は絶対に、見ないでくださいね。
彼女は、物語を読む。 やざき わかば @wakaba_fight
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます