超合金戦姫KAGUYA

竜田くれは

超合金BANBOOとKAGUYA姫の物語

 ある所に讃岐造さぬきのみやつこと呼ばれる天才科学者の翁がいた。

 彼は山の中にある研究所で新たな超合金BANBOOタケの研究を行っていた。そして完成したのが少女型戦闘用ロボット、KAGUYAである。

 強度とエネルギー効率を兼ね備えたBANBOOタケで構成された彼女は高い戦闘能力を誇る。見る者全てを魅了する美貌と七日間で世界を火の海に出来る破壊力、暴走するリニアモーターカーを止める程の出力、最大出力で充電なしに七日間稼働し続けられるエネルギー効率を持った翁の最高傑作であった。

 このKAGUYAの存在を知った五人の男たちは彼女を手に入れたいと望んだ。彼女の美しさに惹かれた者、力を求める者様々であったが、彼らはKAGUYAに求婚もとい決闘を申し込んだ。決闘の申し出を受けたKAGUYAは一日ずつ彼らの相手をすることになった。

 一人目の相手は「火光獣ひのねずみ阿部右大臣御主人アベノミウシ卿、炎熱への完全耐性をもった秘宝アーティファクト火鼠の皮衣を身に纏った中距離銃手ガンナーの実力者だった。だが、KAGUYAは一瞬で間合いを詰め、物理でKOノックアウトした。KAGUYAは、「張り合いが無いあへなし」と呟いたとされる。

 二人目の相手は「大海の燕ローンディネ・ディ・マーレ石上麻呂足イソノカミノマロタリ、タカラガイを生み出す神の燕に変身する能力者だった。だが、攻撃力が足りずKAGUYAの装甲を突破することができなかった。KAGUYAは「期待外れだかいなし」と嘆いたという。

 三人目の相手は「覚者の大砲キャノンオブブッダ石作皇子イシツクリノミコ、仏の宝具とされる鉢状の大砲による高火力の持ち主だった。壮絶な打ち合いの末、彼は鉢を捨てて近接戦闘で勝利を狙った。結局彼は敗北したものの、KAGUYAは「はちを捨ててまで勝利を目指す姿勢は見事」というコメントを残したという。

 四人目の相手は「奇跡の生還者ミラクリアス・サバイバー車持皇子クラモチノミコ、仙境の一つである蓬莱に旅に出て、宝物を手に帰還した希代の冒険者であった。蓬莱で手にした様々な宝具、特に“あらゆる能力への適応”の力を有する珠の枝レインボー・ロッドにはKAGUYAも苦戦を強いられていたが、珠の枝の充電エネルギー切れで決着した。

 最後の相手は「龍殺しドラゴンスレイヤー大伴御行オオトモノミユキ、海龍を討伐した当代最強の剣士でKAGUYAが唯一近接戦闘を避けた恐るべき相手だった。討伐した海龍から手に入れた龍の首の珠によって召喚した龍と連携し、KAGUYAを追い詰めた。だが、リミッターを解除した彼女に一歩及ばず敗北した。

 五人の強者の敗北。これを耳にした帝はKAGUYAに大層興味を持ち、科学者の翁を呼びつけ彼女を献上するように申し付けた。KAGUYAを渡したくない翁は代わりに研究データを提供することを提案した。一度はそれを了承した帝だが、本物のKAGUYAに会いたいという思いを抑えられず、宮殿から出て直接彼女に会いに行った。その肢体に目を奪われた帝は彼女にセクハラを仕掛け、ビンタで吹き飛ばされた。KAGUYA曰く、「私より強くない人間には興味がない」。それを聞いた帝は一カ月後、彼女に決闘を申し込んだ。翁の研究データを基に改造人間サイボーグとなった帝はKAGUYAに挑むも、あっさりと返り討ちにあった。サイボーグ帝は諦めきれず改造を続けた。

 そんな中、KAGUYAに搭載された演算機器が異常を示した。月に脅威があるという。翁と共に月を観測したが、何者かに妨害されているかのようにデータを取ることが困難であった。

 ある日の夜、星空から列車がやって来た。銀河列車から降りてきたのは神の如き光を纏った美女であった。TUKUYOMIツクヨミと名乗った彼女はKAGUYAを迎えに来たという。彼女曰く、「超合金BANBOOタケは月で作られたものであり、それで作られたKAGUYAは我々月の民が所有すべきだ」。

 当然翁とKAGUYAは反発したが、TUKUYOMIが飲ませた不老不死の霊薬オイルによってKAGUYAは自我を失い、彼女の手に落ちてしまった。そのまま月に帰ろうとしたTUKUYOMIだが、翁が銀河鉄道を乗っ取り駿河の国へまで暴走させたことでKAGUYAを巡る決戦は駿河の国の火山で行われることとなった。

 決戦当日。翁は旧型機OUNAオウナを連れて戦場へ赴くと、そこにいたのは千を超える軍勢。サイボーグ帝がTUKUYOMIに対抗するためにBANBOOタケで作らせた自立型武装絡繰武士アーマード・サムライであった。これなら勝てる、翁がそう思ったのも束の間、TUKUYOMIが動いた。「停止せよ」、その一言で全ての武士が動きを止めた。神言、月の民が持つ超合金BANBOOタケで作られた機械への絶対命令権によって翁たちは一気に劣勢になってしまった。

 彼らの窮地に駆け付けたのはかつてKAGUYAに決闘を挑んだ五人の男たち。大伴オオトモは神速でTUKUYOMIの背後に回り彼女の首を刎ねた。だが、不老不死の霊薬を飲んだTUKUYOMIはすぐに復活し、KAGUYAを彼等に差し向けた。大伴オオトモの召喚した龍と車持皇子クラモチ、サイボーグ帝が彼女を抑えている間に翁は神言への対策プログラムを完成させた。車持皇子クラモチが持つ蓬莱の反不老不死霊薬と対策プログラムによってKAGUYAは翁たちの手に戻った。

 KAGUYAを失ったTUKUYOMIだったが、凄まじい力で彼等を圧倒した。石作皇子イシツクリの砲撃を反射し、再起動した武士たちをスクラップに変えたKAGUYAと男たち、サイボーグ帝は連携しなんとかTUKUYOMIを火山の火口まで追い詰めた。だが、彼女はKAGUYAを道連れにしようとして、二人とも火口に消えていった。翁とサイボーグ帝、四人の男たちは嘆き悲しんだ。

 不死の存在が火口に落ちたこと、大量の破壊された武士が残っていることからこの山は富士ふじ山と呼ばれるようになった。

 しばらく時は流れ、KAGUYAは強くなって翁の元へ帰ってきた。彼女が火口に落ちたあの日、皆が気づかないうちに助けに行った者がいた。阿部アベである。炎熱への完全耐性を持った火鼠の皮衣を纏って溶岩の中を探し、KAGUYAを救出したのだ。溶岩浴の代償に阿部アベは大火傷を負ってしまった。あはれに思ったKAGUYAは車持クラモチと共に蓬莱へ渡り火傷を治す霊薬と自身の強化素材を入手し、翁の元へ帰った。

 TUKUYOMI戦を経て更に強くなったKAGUYAは世界最強の座を維持するために五人の男達やサイボーグ帝と切磋琢磨して一時代を築いたと伝わっている。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

超合金戦姫KAGUYA 竜田くれは @udyncy26

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ