第3話 第二次鈴木邸防衛戦
「なんでオーロラがあるの?てか近くね?」
「おっそうだな」
ほぼ真上、ー遠近感が狂ってるだけなのか異様に近く思われたーにオーロラがある。それはまるで真っ赤な血が昏い水底を漂うかの様に見えて、不吉だと感じた。しかも何か急激に寒くなってきたのだが、同時に平野がまるでパソコンを電話線でネットに繋げた時みたいな音がどこからか聞こえてきた。しかも霧が出てきて濃くなりつつある。
「…絶対悪い予感がするんだけど…」
「ちょっと静かに…ちょっと離れてるけど変なのが複数いる」
流石は視力3.6!視界良好だな!こっちは熊と猪共の(ちょい昔は露空挺軍と人民軍)巣窟たる拓也山が窓から飛び出て20秒の距離にあるのに今やそこには元から何もないようにすら見える。
「変だ変だぞあんな窓から見るだけでソ連の国歌の初め部分が連想される拓也山が見えない」
「俺も見えないし、あの変な奴ら、なんか鎧着て剣を持ってるんだけど…歩道の上に居ないなぁ…こっちに向かって歩いてきだした」
これは嫌な予感がする!
具体的には迫撃砲の砲弾が飛んでくる前みたいな感じがする!
<<へい平<<嫌な予感がしたからある程度なら玄関内に置いてあるぞ>><<不明集団は規模不明、手持ちはおそらく中世鎧に剣でこちらに移動中、なお急激に気候が変化しているなり>><<了解以上>>
…必要なことは伝えた筈だ、武器を取って備えるのがいいだろう…
「玄関に色々あるらしいから取りに行くぞ」
「わかった」
「「「何があるかな?」」」
がちゃんと扉を開けると客観的にどう見てもある程度に収まらない火器が玄関に鎮座していた。
銃刀法も真っ青(黒?)である、下手したら叛乱抑制法に引っ掛かる恐れすらある。(近年自衛隊の蜂起の抑制を目下に成立した法で、元自にも適用されるので割とまずい)
M1カービン2丁の時点で銃刀法でアウト(セミオートも完全規制に)なのに、
M4バヨネット(M1用銃剣)2個
M9 HEAT 2発(簡易ロケラン)
これらと箱型マガジン(30発入り)が2個
露 軍 空 挺 戦 車
B M D - 4 の キ ー
があった…確かに心当たりはあるけどさぁ…
「ありすぎない?」
「無いよりはマシでしょ、ホラホラホラ」
「いやあいつじゃなきゃ乗れんからキーは置いてくぞ」
…まあ要らんやろ、玄関奥にひょいと投げ込み後ろへ駆け足。最新の電子鍵は自動で掛かるしピッキングも大音量でお知らせしてくれるので安心である。M9を撃てる方をもらい、二人で外に向かっていった。
5月とは思えない様な冷たい地面に伏せ這っていき、身体中が凍えながら顔を上げて覗き込むと6人の騎士達がこちらを見ている。流石にこんなに霧が濃いとは言え、近づいた分気が付かれてるな。
「匍匐前進中ですが失礼します…」そう言った瞬間、まるで魔法の呪文のような声が騎士たちから聞こえてきた。
火炎がこちらに向かって飛んできた。
身体を転がして咄嗟に避ける。一瞬熱く感じたのでかなり近かったらしい。氷崎に向き直り生きてるか確認をした。
「生きてる?」「生きてる!」
後ろを一瞬見ると鈴木邸の近くに火炎が着弾して、窓から光が覗き込んでくる。バッテリーがもったいないがあれなら大急ぎで回してるな。
「戻るわよ!ここじゃ死ぬ!」「わかった」
中腰になって銃を撃ちながら鈴木邸へと走っていく。もちろん見逃されるはずもなく火炎が飛んでくる。ドライヤーとは比にならない熱さが後ろから通り過ぎていく。
銃は当たってるはずだがカンカンと音を立てるばかりで鎧を貫通していないようだ。どんだけ分厚いんだ。これは普通の弾じゃ無理だと思い、銃の先っぽに擲弾を刺す。もうすぐ玄関だ、二発とも撃とう。
「擲弾使うぞ!当たれ!」
流石に人間が着れるレベルの鎧ではHEATは防げないだろうと思いつつ放つと3人倒れた。そのうち2人は動かないが、一人は爆風で耳でもやられたのかもがいている。残った三人はもがいている奴の両手と片足を持って何処かへと走り去っていった…
玄関に滑り込んだ二人は、AK-12を持った葛城に出くわした。怖えよ。
「お前らか、さっき爆発音とかが聞こえたが大丈夫か?」
「なんとかね、弾が効かないからHEATを撃ってようやく2人やったみたいだ」
「まさか鎧に弾かれるとは思ってなかったので急いで戻ってきました。平野さん達と会議してきますので、ここはお願いします」
「おう!」
靴を脱ぎ階段を駆け上がる。葛城はあそこで守りを固めているだろう。平野と遠野と会って4人で話し合う必要がある。
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