時刻は夜になった。

 二人で作った手作りのカレーを食べて(美味しかった)美星はお風呂を借りて、旅の疲れを癒した。

 里の家のお風呂は石造りの湯舟のある古いお風呂で、窓の外は真っ暗で遠くに小さな星の光が見えた。耳を澄ますと夏の虫の鳴き声が聞こえる。

 熱った体から力を抜いて、美星はそんないつもの日常とは違う世界の中にいた。

 都会とは違う時間が流れている。

 本当にそんな気がした。

 なにもかもがゆっくりとしている。

 落ち着いている。

 すごいなと美星は思った。

「おかえり。はやかったな」

 お風呂から出ると里はお茶の間で本を読んでいた。

 テーブルの上にはコーヒーがある。里はお酒を飲まないらしい。美星はお酒が飲みたかったのだけど、我慢する。

「明日は川に行こうか? 綺麗な渓流があんねん。そこで魚釣りしよう」お風呂上がりの美星を見て里は言う。

「うん」にっこりと笑って美星は言う。

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