8
時刻は夜になった。
二人で作った手作りのカレーを食べて(美味しかった)美星はお風呂を借りて、旅の疲れを癒した。
里の家のお風呂は石造りの湯舟のある古いお風呂で、窓の外は真っ暗で遠くに小さな星の光が見えた。耳を澄ますと夏の虫の鳴き声が聞こえる。
熱った体から力を抜いて、美星はそんないつもの日常とは違う世界の中にいた。
都会とは違う時間が流れている。
本当にそんな気がした。
なにもかもがゆっくりとしている。
落ち着いている。
すごいなと美星は思った。
「おかえり。はやかったな」
お風呂から出ると里はお茶の間で本を読んでいた。
テーブルの上にはコーヒーがある。里はお酒を飲まないらしい。美星はお酒が飲みたかったのだけど、我慢する。
「明日は川に行こうか? 綺麗な渓流があんねん。そこで魚釣りしよう」お風呂上がりの美星を見て里は言う。
「うん」にっこりと笑って美星は言う。
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