「里はどうして里って言うの?」

「さあ。知らん。自分の名前の由来なんて親に聞いたことないわ」車を運転しながら里は言う。

 海の見える街で買い物をして里の家に帰る。

 玄関でつまづいて、「あぶな!」ととっさに里に体を触られると、美星は思わず顔を真っ赤にして里の顔を見ることができなくなってしまった。

「大丈夫か?」

「……うん。大丈夫」里から離れながら美星は言った。

「どじやな。そういうところは中学生のときから変わらへんな」玄関にあがりながら里は言った。

「今日はもうゆっくりするやろ? 夕ご飯にしようや」台所に大きな買い物袋を置きながら里が言った。

「うん。ありがとう」

 思っていた以上に長旅で疲れていたのかもしれない。

 なんだかどっと強い疲れと眠気に美星は襲われた。(表情には出さないように気をつけた)

「夕飯はカレーにしようか?」

 買ってきた野菜を出しながら里は言った。

「いいね。私カレー作るよ」

「いいって。今日はお客様やし俺がやるよ。美星はそこに座ってて」

 里に邪険にされて美星は不満そうな顔をする。

「そう言うわけにはいかないよ」

 美星は台所に立つ。

「私も一緒にカレー作る」

「頑固やな。変わんないな」手を洗いながら、にっこりと笑って里が言う。

 たん、と気持ちのいい野菜を切る音が聞こえる。

 思っていた以上に里は料理が上手だった。

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