大きな海。

 白い砂浜。

 波の音が聞こえる。

 風が思っていたよりもずっと強かった。

「私、自分の名前嫌いなんだ」

 海を見ながら美星は言った。

「美しい星で美星。いい名前やん」

 砂浜の上にあった小石を海に投げながら里は言った。

「そんなことない。名前負けしてる。私はそんなに綺麗じゃないし、心だって美しくない」

 風に飛ばされないように、白いスカートを押さえる。

「綺麗やよ。すごく可愛いよ。美星は」

 笑いながら里は言う。

「馬鹿にしてるでしょ?」同じように笑いながら美星は言う。

「してへんよ。それに美星は可愛いだけじゃなくて心も綺麗やよ。俺は知ってる!!」

 突然、会話の最後のところで大声を出して里は言った。

 周りには数人の人がいる。

 その人たちが里と美星を笑いながら見ていた。

「里。恥ずかしい」

「恥ずかしかってもええやん。本当のことなんやから」

 そんな里に美星は海の水をかけてやろうかと思ったけど、我慢した。(中学生の私なら絶対にがまんできなかっただろうなと思った)

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