里の車は小さな赤色の可愛らしい車だった。

 里は財布だけ持ってあとの荷物はなにも持たなかったので、美里も持っていくものは財布だけにした。

 山間の道を抜けて街中に入る。踏切をこえて道を曲がるといきなりそこには真っ青な海が見えた。

 思わず美星は目を大きくして驚いた。

 美しい。

 こんなに美しい風景を見たのはいついらいだろう? そう思った。

「どうや? 海やで」里が言う。

「うん。海だ」子供みたいな声で美星は言った。


 二人でとりあえず校舎の屋根の下にあるベンチに座って雨を見ることにした。

 やまない雨。鬱陶しい雨だ。

「俺が笑わせたるよ。面白いことしたる。見といて」自信満々の顔で里は言う。

 里は流行りの動画の真似をする。でも全然面白くなかった。

「全然面白くないよ」と笑いながら美星は言った。

「わろてるやん」と笑いながら里が言った。

「里ってさ。なんでいつもそんなに元気なの? 落ち込むこととかないの?」

「あるよ。いっぱいある」嬉しそうな顔で里は言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る