5
里の車は小さな赤色の可愛らしい車だった。
里は財布だけ持ってあとの荷物はなにも持たなかったので、美里も持っていくものは財布だけにした。
山間の道を抜けて街中に入る。踏切をこえて道を曲がるといきなりそこには真っ青な海が見えた。
思わず美星は目を大きくして驚いた。
美しい。
こんなに美しい風景を見たのはいついらいだろう? そう思った。
「どうや? 海やで」里が言う。
「うん。海だ」子供みたいな声で美星は言った。
二人でとりあえず校舎の屋根の下にあるベンチに座って雨を見ることにした。
やまない雨。鬱陶しい雨だ。
「俺が笑わせたるよ。面白いことしたる。見といて」自信満々の顔で里は言う。
里は流行りの動画の真似をする。でも全然面白くなかった。
「全然面白くないよ」と笑いながら美星は言った。
「わろてるやん」と笑いながら里が言った。
「里ってさ。なんでいつもそんなに元気なの? 落ち込むこととかないの?」
「あるよ。いっぱいある」嬉しそうな顔で里は言う。
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