「なにしてるん? 渡辺」

 階段の上からそんな里の言葉が聞こえた。

 上を見るとそこには里がいた。

「なんでもない」

「泣いてるんやけ、なんでもないことないやろ?」

「なんでもないって言ってるでしょ!」

 思わず大きな声で美星は言う。

 美星はその場を去ろうとする。

「外。雨降ってるで」

「そんなの、関係ないよ」

 美星はその場から逃げるように駆け出していく。

 でもその腕を里はしっかりと捕まえた。

「待てって。雨降ってるって」

 里の言葉が鬱陶しい。

 むかつく。

「離してよ」

 冷静な声で美星は言う。

「離さへんよ」と里は言った。

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