第二話:【芸帝】プルソン
俺に【帝王】についての説明を終えた先輩帝王、ノルンが【帝王録】を閉じる。
すると目の前にあったホログラムが消え、ノルンの小さな手の上に乗っていた本体も泡のように消えた。
きっと俺が【帝王録】を開くのに邪魔だと思ったのだろう。なかなかの気配りさんだ。
ノルンが言う。
「はじめて【帝王録】を開くときは、特定の動作を登録する必要があるんだ。ボクなら手を叩いたやつだね。何でもいいけど、一生変えられないから複雑なやつはおすすめしないかな~」
確かに、開くたびに面倒な作業をしていては気が滅入る。
俺は心の中で【帝王録】を開くことを意識しながら、指をならした。
すると俺の目の前に、重厚な辞典のような書物が現れた。ノルンのものとは見た目がかなり違うが、これが俺の【帝王録】で間違いないだろう。
パラパラとページが捲られ、止まる。
しかしそこに記載されている情報は、ノルンの【帝王録】で見た情報とは違った。
理由が分からず首を傾げていると、ノルンが情報を補足してくれる。
「はじめて【帝王録】をひらくと、まずはステータスページに飛ばされるんだ」
「ステータスってのは?」
「キミが保有している能力を可視化できるものだよ」
ということはつまり、俺の能力をノルンにも見られるということだろう。
ノルンを疑っているわけではないが、彼女の帝王だ。何があるかわからない以上、あまり俺の秘密を知られ過ぎるのも良くないかもしれない。
「なんか怖い顔しているね?」
しまった。顔に出ていたようだ。
しかし、ノルンは特段不機嫌になるわけでもなく、ただ穏やかに笑った。
「キミはほんとに賢いね。でも、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。帝王の根底に関わるような情報は本人以外見えないし、ボクにはキミを倒せるような力はないから」
「ノルンは先輩帝王なんだろ? 俺みたいな新米、一瞬で叩き潰せるんじゃないのか」
「あはは。ちょっと理由があって難しいんだよね。それに例えそうできたとしても、ボクはキミと敵対することはないよ。だってキミを呼んだのは……」
「……ノルン?」
どこか寂しそうに呟いたノルンに首を傾げると、彼女は慌てた様子で笑み作った。
「ああ、ごめんね! ちょっと話が逸れたよ。それじゃ、早速ステータスについて解説するね。ステータスをみてくれる?」
「…分かった」
それ以上何かを言える雰囲気ではなかったので、俺は示された値に目を向ける。
そこにはこんな情報が書かれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:プルソン
種族名:魔族
ランク:S
LV:1
EP:161,350
統率35 知略40 耐久5 攻撃20 魔力60 機動30 幸運15 特殊120
特性:
固有能力:顕現の
≪特性≫
芸具模倣……あらゆる芸能にまつわる道具を使用可能。知識にある楽器、道具などをEPを消費して具現化可能。その規模により消費EPは変化する。
鼓舞の音色……自身の芸能を見聞きした味方の全能力値上昇(上昇幅は熟練度、レベルに応じて変化する)・攻撃力、防御力、機動、固有能力に補正(中)。芸能に応じて様々な効果を付与する。
≪固有能力≫
顕現の芸者……芸に携わる者を方向性を持って召喚可能。また召喚した者の存在の強弱によって必要EPは変化する。また選択した配下の能力値に補正(残り七体)。ただし要求EPが従来に比べて二倍になる。(当人以外閲覧不可)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そっか。キミはプルソンっていう名前だったんだ。はじめましてプルソン。改めてよろしくね」
「プルソン、それが俺の名前か」
しっくりこない。変な名前だが、まぁ決まっているなら仕方ないだろう。俺はこれから帝王プルソンとして生きていく。
「さて、話を戻すよプルソン。ステータスをよく見てね」
ノルンの声で、俺は再びステータスを眺める。
そこには無数の情報があるが、比較対象がいないので俺にどの程度の力があるのか分からない。
ノルンは俺が全体に目を通したことを確認すると、ステータスページの下の方を指さしながら言った。
「…帝王にとって大事なのは特性の一番上にある……プルソンなら【芸の主】っていうのと、こっちの【固有能力】だね」
ノルンの指が、【芸の主】と書かれた場所に移る。
「この【芸の主】っていう特性によって、プルソンにはそれに応じた知識が与えられているはずだよ。他の帝王も【~の主】っていう特性があって、それに応じた知識や力を持って生まれてくるんだ。帝王はこれを使って国を治めるわけだね」
「なるほど」
つまりこの能力が、帝王たちのパワーバランスを左右すると考えて良さそうだ。
恵まれた能力の者には繁栄が、そうでない者には破滅が待っている。
説明を終えたノルンの指が、一番下に向く。
「そして【固有能力】。基本的に帝王は、この固有能力を使って【配下】を召喚していくんだ」
字ずらと帝王としての仕事の説明を通して、ある程度は予想がつく。
俺の王道、いや帝王道を支えてくれる者たちだろう。
なんだか胸が躍る。
召喚という言葉にワクワクしてしまうのは、いったいなぜだろう?
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