第19話 センスは魔法で補えないらしい。しかし人はそれを個性と呼ぶ。
「えー、1ヶ月後の学年集会で英語の劇をやることになりました。どのくらいはっちゃけるかはみなさんで決めてください。
次の英語の授業から作業に取り組むのでそのつもりでいてください」
授業終わりにそんな事を告げられ困惑するクラスメイト。
何よりこういうイベント事は男1人の俺にとっては嬉しくない。
未だクラスのほとんどが俺との距離を測りかねてる。そのおかげで俺も誰かと関わろうという心意気が全く湧いてこない。というわけでクラスで俺は孤立してる。
まぁ、致し方なしではあると思う。女子校で育ってきて急にクラスに男が混じりだしたら扱いに困るのは目に見えてる。
逆の立場だったら俺は絶対に絡みに行ってない。
そんなわけで休み時間、劇についての話し合いがクラスの至る所で行われてる。
俺は精神統一という名目で目をつむって人間観察。
目をつむると途端に頭の中を音が支配する。クラスの中の半分くらいの声が届き、親父直伝、脳内声門認証を介して会話を盗む聞く。
昔から五感が優れてて中でも触覚と聴覚がずば抜けてた。
片目を失ったハンデはもちろんあるけどほとんど苦にしてない。運動能力も軒並み衰えなかったが、推薦側はそうは見てくれない。
まぁ、わざわざ故障者を招くメリットが高校側には無いわけで。
「野田さん衣装とか作れたりする?」
脳内検索欄にピックアップしてた単語を聞き取り、そっちに意識を向ける。
「うん、結構作ってたりする」
「そうなの?それじゃあ、よかったら衣装お願いしてもいいかな」
「いいよ、とりあえずデザインまとめてくればいいかな」
「うん、大変だと思うけどよろしくお願いします」
ふむふむ、補修だけじゃなくて作ったりもしてるのか。
『は〜い、新しい服できたよ』
『似合うかな?』
『何着ても似合うから』
『そう?』
リビングでの一幕。
直接話した経験からか、妄想が前よりもリアルになった気がする。目を閉じればそこに君がいる。
翌朝。
「野田さんが衣装のデザイン考えてきてくれたからみんなにも見てもらおうかなって」
朝のホームルーム前、何人かが黒板の前に立ってみんなの視線を集める。
そして、野田君が持っていた模造紙を黒板に広げる。
(((((((色使い綺麗なのにデザインが絶望的にダサい!魔法の補正なかったのかな)))))))
模造紙に描かれた綺麗なマネキンキャラが奇抜な衣装を着てた。
(((((((世紀末ならピッタリだぁ!!)))))))
袖を切られたジージャンにトゲトゲが付いた革ジャン。ところどころ敗れたズボンにつま先がとんがったローファー。
言えるのか。そもそも野田君は衣装を作れるってだけでデザインを作るのはお門違いじゃないか。
と、まともな事を今更ながら実感した。
誰もが反応に困る中、1人勇者が現れた。
「いいね、ただ時代背景がずれてるんじゃない?ほら、ここをこうするだけで…イメージ湧かない?」
「「「「「「おお…」」」」」」
たったのひと手間での見事な変貌に教室全体がどよめく。
匠や!これが匠なんや!いや、違うな。
さすが番長。
番長。
入学初日から施された制服魔改造に生徒はもちろん教師もうねった。
その見事なアレンジにこの学校で流行を生み出すまでに至った学校の有名人。
その偉業で初日からオシャレ番長と呼ばれることとなった。
ちなみに既に自分のアパレルを経営してるとか。
「番長すごい。じゃあこれは?これはどうなるの?」
その手腕に魅せられた野田君は嬉々として自分のデザインにアレンジをしてもらった。
野田君を傷つけずに衣装変更させるとはさすが番長。オシャレにおいて右に出る者はいない。
強いて言うなら左に出てくるのは野田君だろうか。
「おっけー、まかせて。とりま全部やっちゃおうか。てかこのデザインもっと活かしたいしこっちもありじゃん?」
野田君を下げることなく、むしろ味を活かして良さを引き出すような提案をする。
オシャレなだけじゃない、気遣いもできる素晴らしい人間だ。
いつの間にか野田君のデザインの味が欲しくなってきた。スパイシーすぎるぜ番長。メインを引き立たせるスパイスでもあるってか。
「すごい。一晩考えて5個しか浮かばなかったのにこんな短時間に…」
「何言ってんの、0から1と1から2は難しさがダンチっしょ」
「そ、そうかな」
阿鼻ですわ。こんなにできた人間を見たことない。こりゃ、劇が盛り上がること間違いない。
半端な演技できないぞ。
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ネタ切れ!!
このままやってしまうとタイトルからストーリーがズレてしまうのでここで一度完結にします。
読んでくれた皆さまありがとうございます。
野田君は戦闘魔法ばかりで日常で便利に使える魔法をあまり習得していないようです。
いつか、野田君がいろんな魔法を習得したらまた再開します。
ありがとうございました。
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