第10話 夕日って大きいよね。
あ…リンゴ先輩、今日も見たな。気になって調べたら2年生だった。
あの日から毎日毎日見かけるんだけど、向こうはあんなこと言っておいて接触してこないからもどかしい。逆に意識しちゃうっていうか。
もう俺の事なんて忘れたのか?どうでもよくなったのか?
意味深な事言っておいて放置かよ。俺の心に火をつけておいてこれじゃぁ、あんまりだよ。
心にぽっかりと空いたこの穴はどうしてくれるんだ?
気にしてないのに、意識してないのに、磁石みたいに目線が引っ張られる。
視界に入ればつい、目で追っちゃう。頭で考えちゃう。
は?待って、これじゃあ俺がリンゴ先輩のこと気になってるみたいじゃん。は?
違う違う。これはただの動揺だから、出会い頭にあんな事言われたら誰だってこうなる。
とりあえずリンゴ食べて落ち着こう。
学校が終わっても頭の中のモヤモヤが消えない。
下駄箱から向かう先は校舎裏にある野田君が生やしたリンゴの木。
すでに改装されてて、木の手前には花が茂って歩道との堺の目印としてレンガで囲われてる。
日に日に立派になってく野田ガーデン。
これに俺はナニカを見た。
個人の趣味ならこんなところでやる必要が無い。野田君ならそのスペースくらい確保できそうだし、平穏を望んでるなら尚更。
わざわざ学校でコソコソやるのはおかしい。
だからこの流れの裏を見る。
家庭菜園をしたい訳でもなくリンゴを食べたい訳でもないなら何か。
一部分にしろ外からの視線を気にした?学校でなければならない理由。リンゴの木だけじゃ不十分。
ここから絞り出しひねり出し導き出して至った結論としては、結界。
少しぶっ飛んでるかもしれないがファンタジー経験者の発想に至るにはこちらもぶっ飛ぶ必要がある。
幾重もの効力を施された結界と見るのがファンタジー的に現実的だろう。
リンゴの木、花、レンガそれぞれが重要なファクターであり、この結界のコアであると。
どれかひとつでは野田君の思う結界には成り得ないから人通りの少ない校舎裏でやった。
そして結界を張る意味。さすがにこれ以上は脳を働かすための糖分が足りない。
普段、片手間で魔法を扱う野田君がなぜこんな回りくどいやり方をしてるのかは未だ究明できてないが、その線で今後の動向を観察するとしよう。
夏休みに考察厨やっててよかった。
俺だけが知ってる野田君の秘密。
そうさ、俺の矢印は野田君以外に向くはずが無い。天変地異なんかで折れるようなやわな矢印を俺は持ってない。
雨ニモマケズ風ニモマケズ、青春のバカヤローニモマケズ。
俺は清き純情な清廉乙女の心を持っている。
それでも、話しかけられたくらいで惚れてたまるかい!
夏の暑さはまだ続く。心に灯った熱き心もまた、燃焼を望んでる。
橙秋(とうしゅう)。
焦(こ)がれた西日に身を焼かれ、地染(ちぞ)め暮慕(くれぼ)に言馳(ことは)せ願(ねが)うは君(きみ)の憩(いこ)い。
地球を押し潰しそうな程に巨大な夕日を見て煮えた思いが口から出た。
これにはさすがの俺も身悶えする程に厨二臭い。
よし、いつもの調子が出てきたかな。
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