第9話 この出会いが俺の学校性格を大きく変えることとなった。とかなんとか言ってみたかった。
教室に入った瞬間、俺は違和感を感じとった。
何も無いふうを装って自分の席に着いてから観察する。
野田君の様子がおかしい。
普段、本をめくるペースは平均で30秒、遅くても1分。
それなのに今はすでに3分も経ってる。めくってから3分じゃない、俺が見始めてから3分。
つまりはそれ以上の時間、同じページを見てるということになる。
これはおかしい。内容を深く考えてるのか、情景を思い浮かべてるのか、それでも今までに無い出来事だ。
それになんだかソワソワしてる。ほんの僅かな乱れだが、目が泳いでる。本の内容じゃないのか。
本を開いてるのはカムフラージュで別のことを気にしてる?ともかくこの異変が気になる。
こりゃ、目が離せないぜ。
放課後になった。結局、全部の休み時間で同じような出来事を繰り返してた。
本を開くけど全く読んでないし授業が終わる度にソワソワ度が増してる。
目が泳いでたのが指に移り足に移り、午後は体全体がソワソワしてた。
昼休みに動くと思ったけどこれは放課後だな。
ラブレターでももらったか?新刊の発売日か?
ホームルームが終わっても野田君は動かない。けどソワソワは続く。
何を待ってる?残るってことは学校でやることなのか、時間を待ってる?
とりあえず俺は今日質を出て廊下でスマホをいじる。
日が沈み出す頃に野田君は動き出した。
予想外に靴を履き替えた。
ますいなぁ、学校出るのか?
と思ったら、校舎裏へと歩いていった。
オレンジ色に染まる空は低く感じて手が届きそうに思える。
校舎裏の何も無い地面にしゃがみ込むと土をいじり始めた。
それも一定の感覚で横に歩いては土をいじってを繰り返す。
目的を達成終えたのか立ち上がると手の土を払ってから、両手を前に突き出す。
「━━━━」
遠くて聞こえなかったけど魔法だろう。辺りがピカ〜ンと輝いた。
(むりゅっ)
地面から何かが生えてきた。それはぐんぐんを大きくなり幹となって枝に葉をつけた。
葉っぱに紛れるように赤く輝く何か。
ちゃんと見えてるわけじゃないけどリンゴだろう。りんごの木が5本生えた。
こんなことしていいの?普通に学校に怒られそうだけど。
あ、リンゴがプヨプヨ浮いて野田君の手元に収まった。
(ガブッ)
豪快にリンゴに齧りついて帰ってく。
え、コレがやりたくて朝からソワソワしてたの?謎だ、何がしたいんだ野田君!
あ、誰か来た。
おー、驚いてる。キョロキョロと周りを確認して…取った。すごいジャンプ力だな。
華奢で小柄なのに、どんだけ飛んだ?着地も無駄にスタイリッシュだったし。
リンゴ食べてる。美味しそうな表情してるけどいいの?野田君が知ったらどうなるか。
ふぅ、もう帰ろう。すっかり暗くなってきちゃった。野田君が休みの日に食べに来よう。
はっ?気づかれた。気配消してる俺に気づくとはあんた何者だよ。
やばい、こっちに来る。逃げろっ!!
「ちょっ!ちょまっ!見たんすか?今の見たんすか?見てないって言ってくださいっすぅ!
顔覚えたっすからね!明日は背中に気をつけてくださいっすよぉ!ってか速っ!」
俺は飛ぶように逃げた。
俺だって顔を覚えたぞ。人間観察の鬼にロックオンされて何かできると思うなよ。半径3m以内には絶対に入れないぞ。
俺にはあんたがリンゴ丸かじりしてたのを言いふらすことができるんだ、怯えて眠れぇ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます