第8話 全てが丸く収まるようにできてる。
「体育の後の調理実習って最高じゃん?」
教室は少し浮かれている。3時間目の体育が終わり、調理実習の為に別館にある調理準備室へ向かう。高校では初めての調理実習だ。
部活の合宿なんかではこの別館に泊まるらしい。部活なんて入ってないから知らなかった。別館自体初めて入るから結構ワクワクしてる。
授業に遅れないようにクラスメイトの後ろをすーっと着いていく。
さあ、俺の案内役になってくれたまえ。
うおぅ、シャワー室に大テーブルがずらりと並ぶ部屋、和室、大広間、調理準備室とかなり綺麗だ。
4人テーブルがずらりと並んで部屋の後ろには長いシンクと何個か蛇口がある。
「配られたプリントは持ってきた?それじゃあ前回の授業で決めた役割ごとに仕事始めて〜。時間内にちゃんと終わらせるようにね」
「「「「「「はーい」」」」」」
食材を取りに行く者、調理器具を取りに行く者と分かれて調理実習が始まった。
まぁまぁ、今回は野田君と同じ班になれなかったけどこの1回だけじゃないからね、野田君の手作り料理を食べれるのは。
バレンタインデーかホワイトデーにまでに貰えるような関係性になるのがとりあえずの目標、それまではしたたかに行こう。ヤハハ。
それぞれの班、ピザ生地づくりは順調にいってる。差が出るのはここからだ。
トッピングの盛り付け、見栄えがその班の技量を測る項目となる。
そのため、誰が食材を切り分けるかなど壮絶な取り合いが起きた。
「大丈夫っしょ。こう見えて家庭的だからっ」
村岡君が包丁を手に取ってマッシュルームとミニトマトを切る。
(スー)
「こういうのは奥から手前に引くだけで…ほら綺麗っしょ?」
見事なお手前で。
続いて大根の千切りに入る。
「ここまで切ったらあとはばっパッパっしょ」
(ダッダッダッ)
均等に切れてる。自ら家庭的というだけはある。意外な一面を見れた。
小気味よく大根を切っている村岡君にクラスメイトのおしりがぶつかった。
「今日まじ寝てねぇんだよな、寝み〜わっごめん」
(ドン)
「やっ!」
おえっ!押された拍子に大根を押さえてた人差し指に包丁がくい込んだ。
「ぎゃー!こ、え、こ、ど……え?」
テンパる村岡君を前に俺はどうすることも出来ない。まな板に血が広がってく。
「ごめんっ。どうしよう……先生!」
わらわらと人が集まる中、野田君が村岡君の手をとった。
何をするのかと思ったら手が光だした。
「中級回復…」
みるみるうちに傷口が塞がっていき血も無くなった。光が収まると傷口1つ無い人差し指に戻ってた。野田君凄い、これが異世界の力。
「時間転移…」
小気味よく大根を切っている村岡君は少し自慢げだった。
「今日まじ寝てねぇんだよな、寝み〜わっごめん」
クラスメイトの寝てない自慢が聞こえたが、それはただ不健康な生活を送ってるのを吹聴してるだけだぞと言いたい。
寝不足の人に包丁持たせたくないな。班が違くてよかった。
ピザ生地にケチャップを塗りたくって、マッシュルームとミニトマトと大根、ウィンナーを乗せてフライパンで焼く。
よしよし、もう消化試合だな。村岡君のこだわりもあり、今のところはかなり見栄えが良い。
「点火っ!」
横の班ではコンロの火をつける時に合わせて指パッチンと掛け声をつけてた。
「先生ぇ〜、火がつかないよ〜」
「え〜どうしてだろう、どれどれ?」
(ボフッボワァッ!)
「「きゃっ!」」
『チリリリリリリリリリリリリっ!』
火災報知器が鳴り出し、スプリンクラーが作動した。
火元にいた生徒と先生には火が移り腕と顔を焼いた。
しばらくガスが漏れて充満してたらしく一気に火が立ち上った。
みんな事態も分からず、とにかく火から離れるために部屋から駆け足で逃げる。
「時間転移…」
よしよし、もう消化試合だな。村岡君のこだわりもあり、今のところはかなり見栄えが良い。
「点火っ!」
横の班ではコンロの火をつける時に合わせて指パッチンと掛け声をつけてた。
「ふっ、我は火の妖精に好かれし者。これからはいくらでも頼ってくれてもいいぜ。我の指が火を噴くぜっ」
何をやってんだか。
中々楽しそうなことを、仲間に入れてもらいたい。水の妖精使いとして相棒で。
(ジューっ)
「こんくらいっしょ。ほら綺麗」
香ばしい匂いが広がってきたところでピザの完成。
4等分に切り分けて、ピザを食べた。1人分は相当に少ない、片手にすっぽり収まるくらいで一口で食べれそう。
「うん、美味い。これはみんなの愛情が入ってるわ」
確かに美味しかった。何事も無く終わってよかった。
片付けも終わらせて、高校では初めての調理実習は終わった。
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