第7話 人気者は今日も人を寄せ付ける。

 このクラスには将軍がいる。

 周りとは頭1つ飛び抜けた知識を有し活用するスペシャリスト。


 R18の話題において、右に出る者はいない。R18将軍、略して将軍と呼ばれている。


 海千山千をその身ひとつで渡り歩いた覇者。自ら開拓している道もあるとかないとか。


 学校随一の守備範囲を誇り、学校随一のストライクゾーンを誇る性癖回覧のファンタジスタ。

 将軍の前ではありとあらゆるアブノーマルがノーマルへと変換される無敵の変態。


 入学から6ヶ月で絶大な信頼を置かれている。

 入れ替わりに訪れる相談者はその深い共感と寄り添いに心酔させられてしまうセンシティブアドバイザー。


 またの名をセンシティバイザー。センシティーチャー。

 その性癖理解は3年生とも正面からやり合った程の知識を有していると噂されている。


「将軍、マジ話わかる。良い奴すぎっしょ」


 俺も相談したい。語り合いたい。共感してもらいたい。

 日々暴走していく妄想は果たして許されるものなのか。早く楽になりたい。


 クラスでも半分以上が既にお世話になってるという事実。悪い噂を聞いた事が無い。




 将軍の会話に耳を傾ける。


「━━━とかどう思う?」

「ファンタジーものの定番といえばやはり、触手にスライム、獣人にエルフってところですなっふ」

(クイっ)

「スライムってなに?」

「粘体生物、ゼリー状の不定形な生物の総称ですなっふ。

 その身体を自在に変形させ丸呑みにしたり手足を拘束したり、代表的なのが服だけを溶かすってところですなっふ。

 さらに触手を兼ね備えている場合もあって、想像を無限大に広げてくれるファンタジー生物なんだっふ」

(クイっ)

「服を溶かしても皮膚には問題ないの?肌荒れとか炎症起こしたりは?」

「ふふっ。この機会に1つ魔法の言葉を覚えて帰って欲しいですなっふ。


 ファンタジーだから。

 全てはこの言葉で片付けられるんですなっふ。

 成分も理論も常識もファンタジーという言葉の前には無に帰すんですなっふ。


 例えばよくある時間停止ものでも、時間が止まってれば光も空気も止まってるなんて言われてますが、これに対して」

「ファンタジーだから!」

(クイクイっ)


「迅速な理解に敬服ですなっふ。また1つ、大人になりましたなっふ」

「なるほどね、ありがとう」

「容易(たやす)い御用で」

(クイっ)



 相変わらず堂々としたその佇まいに憧れるなぁ。意図せず小声になってしまう話題に対して恥じることじゃないとアピールも兼ね備えてる。

 性教育の躍進の一助になってるのは間違いない。


 卒業アルバムに載る尊敬する人ランキング1位は将軍だな。



 今の話を聞いてもしかしたら野田君はそういうの経験してるんじゃないかと見てみたら。


 こほーっ。顔真っ赤にしてる!経験者でしたか。どんなことがあっのやら妄想が捗る。

 やはり将軍の知識はファンタジーを現実のものにしてる。これだからみんなに信頼されるんだよな。



「ねぇ、今度将軍の家行ってもいい?」

「紳士淑女は大歓迎ですなっふ。嗜みを披露する時が来ましたなっふ」

「マジウケる!!」


 これが青春…。


「あの噂ってもう、耳に入ってる」

「もちろん。ただ、人の品位を落とすような噂は二流のやることですなっふ」

「だよね、将軍は清廉潔白の変態紳士だもん」


 噂とは、村岡君の日焼け後がエロいと少し前に噂になった。あれは、野田君の体操服を借りた時に出来た日焼けらしく、サイズが合ってなかったから際どい日焼けができていた。


 将軍は人に迷惑のかかる話題には乗らないというプロ意識を持っている。

 これはクラス全員が知っている事だ。


 ちなみに真摯な将軍はこの噂を否定しなかった。

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