「王様の耳はロバの耳」について
月這山中
「よいか、我が耳の事は決して、誰にも話してはならぬぞ」
ロバの耳をぴこぴこと振るわせながら、王様は言った。
床屋は震えあがって、はさみを落としそうになった。
「王様の耳はロバの耳なんですね」
「話したらどうなるか、わかっておるな」
「はい!」
「さっさと仕事をせよ」
「はい!」
床屋はロバの耳にはさみの先を当てないように、王様の髪をチョキチョキ、チョキチョキ、切って整えた。
「まさか王様の耳はロバの耳だったとは」
「もう言わんでいい」
「はい王様、ロバの耳の王様」
「言わんでいいと言うておる。もしも他の者に言うてみろ、こうだぞ」
王様は首をビッ、とはねるしぐさで床屋を脅した。
床屋は震えあがって、王様の部屋から飛び出した。
執事に挨拶された。
「本日は王様の髪を整えていただきありがとうございました」
「王様の耳はロバの耳!」
メイドに挨拶された。
「どうぞお気をつけてお帰りくださいませ」
「王様の耳はロバの耳!」
床屋は王宮を飛び出した。
馴染みの八百屋に声をかけられる。
「おや、どうしたんだい床屋の。今日は王様に呼ばれたんだろう、昼間から酒でもごちそうになったかい」
「王様の耳はロバの耳! 王様の耳は、ロバの耳ぃいいいいい!!」
床屋は叫びながら街を駆け抜けた。
「へんなやつ」
床屋は街の外の森へ来て、そこで穴を掘って叫んだ。
「王様の耳はロバの耳ぃい!」
「ちょい待ち、ちょい待ち」
森の妖精が聴いていた。床屋は口を手でふさぐ。
「いや遅いて。アンタさっきからずっと言いふらしよる」
「えっ!?」
「無意識かいな困った奴やわー」
床屋は青ざめて、森の妖精に懇願した。
「どうか助けてください死にたくありません」
「そしたらあれや、時の妖精に頼んで時間巻き戻してやるさかい、一回限り。今度は気張りや」
そうして時は巻き戻った。
「よいか、我が耳の事は決して、誰にも話してはならぬぞ」
ロバの耳をぴこぴこと振るわせながら、王様は言った。
「王様の耳はロバの耳!」
「耳元で叫ぶな。そうだ。話したらどうなるか、わかっておるな」
「はい!」
床屋はロバの耳にはさみの先を当てないように、王様の髪をチョキチョキ、チョキチョキ、切って整えた。
「もしも他の者に言うてみろ、こうだぞ」
王様は首をビッ、とはねるしぐさで床屋を脅した。
床屋は震えあがって、王様の部屋から飛び出した。
執事に挨拶された。
「本日は王様の髪を整えていただきありがとうございました」
「王様の耳はっ……とてもいい形ですね!」
「はあ」
床屋は耐えた
メイドに挨拶された。
「どうぞお気をつけてお帰りくださいませ」
「王様の耳っ!すばらしい!」
「はい?」
床屋は王宮を飛び出した。
馴染みの八百屋に声をかけられる。
「おや、どうしたんだい床屋の。今日は王様に呼ばれたんだろう、昼間から酒でもごちそうになったかい」
「王様の耳はすごい! 王様の耳はやばいぃいいいいい!!」
床屋は叫びながら街を駆け抜けた。
「あいつ、なにに目覚めたんだ?」
床屋は街の外の森へ来て、そこで穴を掘って叫んだ。
「王様の耳はロバの耳ぃい!」
「それはやらなあかんのかいな」
森の妖精が聴いていた。床屋は口を手でふさぐ。
「まあな。ロバとは言うてないからセーフか」
「よかった」
「いいわけないやろドアホ。怪しすぎるやろ」
その頃、街では王様の耳のことがバズっていた。
床屋が走って逃げるほど素晴らしい、かっこいい、超映える。
そんな噂が広まっていたので、皆、王様に懇願した。
「王様! 耳見せてください」
「王様! 耳出してこっち向いて~!」
王様は頭巾を固く握って部屋を歩き回っている。
「困った、困ったぞ。あの床屋め」
王様はかんかんに怒っていた。床屋を処刑すると執事に言おうとした、その時。
『王様の耳はロバの耳ィ!!』
巨大な葦が街を襲った。
「な、なんだあれは!」
王様はバルコニーから身を乗り出す。
『王様の耳はロバの耳ィ!!』
「これで耳を見たいと思う奴はおらんくなるやろ」
「本当に大丈夫ですか?」
超巨大葦型怪獣、アッシーくんに乗った妖精と床屋の二人は滅んでいく街を見下ろしながらそう言った。
王様は頭巾の上から操縦ヘルメットをかぶり、城の変形スイッチを押した。
『この痴れ者共めがぁ!』
超巨大変形ロボ・ミダース5が大地に降り立った。
「あかん、分が悪いで。こういうのは後から出た奴のほうが強いねん」
「大丈夫じゃないじゃないですか!」
ミダース5は空中に飛び上がり錐揉み回転でアッシーくんにキック。
爆散。
こうして街の平和は守られた。
「やれやれ」
王様はヘルメットを脱いだ。
その時、ヘルメットと一緒に頭巾が外れて落ちた。
「あ! 本当に王様の耳はロバの耳だったんだ!」
民の子供が指をさす。
王様は恥ずかしくなったが、民の声援は街を守った王様への感謝、それだけだった。
王様は今まで民を欺いて来たことを反省し、その後は耳を出したままにしたとさ。
その頃森の中では、魔法を乱用した罪で妖精と床屋が強制労働に従事していた。
「もう魔法はこりごりやで~!」
「処刑されなくてよかったけど~!」
おわり
「王様の耳はロバの耳」について 月這山中 @mooncreeper
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