第1話
「ガハッ」
校舎の影に覆われた体育館裏で複数の人が1人のを虐めているところを、屋上から見つけた
「……」
まあ、だから何だって話だけど
助けに行く義理もないし、意味もない。
この世界は自身の権利は疎か、他人の権利すらも実力がある奴が自由にできてしまう実力主義の世界。
そしてこの学園は、その実力を明確に表す【ランキング】と【ランク制度】が設けられている。
ランキングは、そのまま順位として生徒証明書に表示される
ランクはS~Fの7段階に分けられていて、一番高いランクはS、低いのはFということになってる。
まあ、FとSの人なんて中々居ないけど。
少し長くなったけど、私が彼を助けない理由は簡単、私が弱いから
私のランクはE、下から数えて2番目のランクで、しかも1人。それに対して彼らの人数は十数人、もし全員が私と同じEランクでも人数差で負ける
え?『保身じゃないか』って?……そうだよ、結局誰でも自分が一番可愛いの。…少なくともこの世界に生きてる人間は全員。
だからこの程度の事に一々___
その時、学校中に授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響く。
「あ、授業始まっちゃう」
私は屋上の階段を素早く降りて自分の教室に向かった。
ここは【私立能力高校】 徹底的な実力主義と、強者が蔓延る最悪の学校。弱者虐めを肯定する強者のために創られた最悪の学園だ。
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【私立能力学園】
何の捻りもない名前だが、この国で最高峰の学園。能力の自由使用許可に豪華な学園設備、それに加え学費は無料。
最高峰の学園のため、ここを卒業することは社会的な地位の約束を意味する。
そんなこともあり、この学園の入学希望者は後を断たない。
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「…明日から学園再開かぁ」
学園の規則の説明とか改めて聞く意味もない授業を聞き流しながら、そう言葉をこぼす。
さて、前半の下らないポエムは置いといて、取り敢えず自己紹介。私の名前は《星野 彩香》実力主義の【私立能力学園】に通うしがない平凡な生徒の1人。
学園の名前からもわかるように、この世界は能力が存在する。
人は必ず能力を持って生まれる、それは誰でも例外じゃない。
殆どの人は10歳前後に発現させるか、それよりも早いかのどっちか
例えその時期に能力を発現させなくても、必ずいつか能力を発現させるらしい
だから、全く能力が発現しなかった人間は今まで1人もいない。…と言われている。
まあ、実際のところは分からないけどね。
その時、授業の終わりを知らせるチャイムが教室に鳴り響いた。
「あ、終わった」
今日は春休み明けの初日、一年生は一体どれだけ生き残れることやら。
放課後は必ずどこかで【決闘】が起こる。
決闘に負けた者より勝った者の順位の方が低ければ、勝った者の順位が上がり、その分ランクが上がる。
この学園で行われた決闘は、どちらかが戦闘不能になるか、降参するまで続く。
まだこの学園のルールを理解していない一年生が、決闘の餌食になって順位とランク、酷い時は命を落とすなんてこともよくある。
かく言う私も被害者の1人。
私もこの学園に入学したときは、軽度の厨二病も相まってこの学園のトップに立ってやると豪語してた。
けど、私は入学して早々に負けた。
《黄上 蓮》
学園のランキング2位であり、Aランクの頂点に立つ存在。
私が持っていた全てを出し切っても、彼は顔色一つ変えず、その指一本で私をあしらった。
その時の絶望感と言ったら、それはもう酷いモノだった。自分がいかに小さく弱いモノであるかを、私はたまたま入学できただけの凡人であったと、嫌でも思い知ってしまった。
「…やめよう、思い出したら気分悪くなってきた……」
私は、誰とも会わないようにしながら、素早く寮の自室へと帰った。
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