三回頭を振ると忘れるようなことたち

続・温泉宿

　あの滅茶苦茶な道程の先にある変な湯舟と寝床ばかりの温泉宿に、遂に真っ当な湯が登場した。

　男女別浴の露天風呂だ。白く濁った湯から、湯気が出ているのが脱衣所からも見える。とうとう普通に入浴できるのだ。

　そう思って脱衣所を出て風呂に近づくと、そこには刃物を持った女が立っていた。TPOを弁えてちゃんと全裸の上に胴を隠す形でバスタオルを巻いている。

　いやそういう問題ではない。これは引き返すしかない。

　この温泉宿、本当にどうかしている。