「ウチら両方、生還できるといいね」
この夢の中では、地球の政府が宇宙人と戦争をしている。戦局は地球側が圧倒的に不利で、既存の各国軍隊では防衛戦力が不足しており市民を徴兵して戦わせるようになって久しい。
……と、言うのが政府の渋々の公式見解であるが、実際には防衛など碌にできないまま地球各地が制圧されつつある。この状況で徴兵される市民は、まともな訓練を受けられる筈もなく、要するに昔の特攻隊員のように強力な爆弾を積んだ飛行機なり船なりに乗って異星人の艦隊に向けて闇雲に突っ込んで行くのだ。
そして私と「彼女」も徴兵される時が来た。(「彼女」は実在しない。夢の中の「私」は、大学生活の間にできた友達だと認識していた。)
市民生活最後の夜ということで、酒を買って私のアパートで一杯やってから死のう(流石に翌日直ちに特攻ということもないだろうが)と、消灯した部屋の中で乾杯した。
「ウチら両方、生還できるといいね」
帰ってこれないのはわかっているが、夢の中の私には「そうだね」としか言いようがなかった。起きていても、きっとそうとしか言わないだろう。
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
「彼女」がリビングのドアを開け、廊下に出た瞬間……部屋の外は暗黒に包まれた。異星人の襲撃が始まったのだ。真っ二つになったアパートの上空には、巨大な赤い一つ眼が浮かんでいた。「彼女」の最後は呆気なかった―—
そこで目が覚めた。
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