可愛いクラスメイトの告白をOKしたらちょっと迷惑なマフラーをもらった件

海音まひる

可愛いクラスメイトの告白をOKしたらちょっと迷惑なマフラーをもらった件



「ずっと前から、好きでした」




 放課後の予備教室で俺を待っていたのは、クラスメイトの川西亜実だ。


 肩で切りそろえた髪。潤んだ瞳。


 大人しくて、教室でも一人でいることが多いが、その可愛さで、俺を含めた男子から密かな支持を得ている。


 クラスの誰かが告白しに行ったけれど、あっけなくフラれたそう。



 だから、川西亜実と書かれた手紙が机に入っているのを見たときは、夢かと思った。


 でも、何度瞬きをしても、「放課後、四階の予備教室に来てください」と書かれていたから、半信半疑でここに来た。



 そして、先程の告白である。




「あのっ、よければ付き合ってください!」




 川西は上目遣いで俺を見つめてくる。


 もちろん、断る理由はなかった。




「ああ、いいよ」


「本当ですか?」




 彼女の顔がパッと輝く。教室ではあまり見せないような笑顔に、胸がぎゅっとなった。




「それじゃあ、あの……これ、受け取ってもらえませんか? 確か矢野くん、今度誕生日でしたよね」




 そう言って川西が鞄から取り出してきたのは、緑色の毛糸のマフラーだった。




「上手に編めてるか、自信ないですが……」


「もしかしてこれ、川西が編んだのか?」


「はい」


「すごいな……」




 見た感じ、店で売っているようなものとそう変わりはないくらい、綺麗に編んであった。


 それが自分のためだと思うと、さすがに嬉しくなる。



 俺が素直に褒め言葉を口にすると、彼女は顔を赤らめた。



 いや、可愛すぎないか。


 ちなみに可愛すぎて、いまだに川西が自分の彼女だという実感がわかない。



 そもそもどうして彼女は、俺なんかのことを好きになったんだろう。


 ちょっと考えたけど、分かりそうになかった。




「よければ、ちょっとつけてみてもらえますか? 長さがちょうどよかったか不安で……」


「ああ、わかった」




 彼女がこちらをじっと見てくる中、マフラーをぐるりと首に巻く。毛糸だからか、かなりあったかく感じる。




「ああ、よかった、すごい似合ってます!」


「ならよかった。じゃあ、大事に使わせてもらうな」




 実際、俺はかなり寒がりだから、使うことも多いだろう。



 ……もしかして、そこまで見越していた? 俺が寒がりなことまで。


 そういえば、俺の誕生日まで把握してたみたいだし。


 ……いや、まさか、な。





「そうだ、あの……」


「うん? どうした?」




 川西が、少し言いにくそうに口を開く。どうしたのだろうか。




「ちょっと迷惑だったかもしれないんですけど、そのマフラー……」




 そして、思い切ったように顔を上げて、彼女は言った。


 実に、いい笑顔で。




「矢野​くん​が浮気したら、首を絞める呪いをかけておきました」


「え?」




 なんだって?




 どうやら、とんでもない彼女ができてしまったらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

可愛いクラスメイトの告白をOKしたらちょっと迷惑なマフラーをもらった件 海音まひる @mahiru_1221

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ