第1章 3話 箱庭ゲームと新たな道筋
「愛桜、今聴いた話でまず事件の概要を簡潔にまとめてくれ」
白鷹市民館のスタッフ用通用口から入って階段3階まで上る。何故か週に一度、同じ曜日だけ、警備員が不在になるらしい。期間の長い休館で警備員の常時配置が必要経費だと説明しても、市民の反発を招くのだろうか。
「了解。現場は白鷹市民館2階から3階の大ホール会場。ターゲットは2階ステージ上にいる模様。名前はアルマさん。元劇団に所属している方で現在は白鷹市在住。しかし、3週間前から失踪。失踪前の行動は、事故が原因で劇団を辞めて、退院後も家に引きこもるか夜歩きのどちらか。後日、同じ元劇団所属のローゼルさんのご自宅へ、これから必要になる鍵とアルマさんがここにいることの知らせが、差出人不明の封書で届いたとのこと。」
「そして事実確認のため、行ってみたら居たと」
「はいなの。」
「劇団員なんだ?」
「元なの。それにわたしは裏方で最後の方はあんまり関われなかったです」
おそらく、その時に負い目を感じる何かが起きたのだろう。苦しそうにしている。
ただ同時に、それとは関係が無いところで雪女が彼女を『選ばなかった』何かがある。そのことがどうにも引っかかる。耐性があるとか・・・? 彼女も対象になりえたはずだが・・・。
「雪女は心身が酷く不安定な人間が好物なんだ。きっと、深く落ち込みながらもそんな自分を恥じて、無理やり夜歩きして気分を高めるつもりだったんだろう。そういう衰弱してても強くあろうとするタイプは特に好物になる」
「わたしはそんな風にはなれないの。昔のアルマも苦しい時こそ強くて自信家で太陽みたいな人でした。それが狙われる理由になるなんて悔しいです」
2階は通行止めされていたので3階まで上りきった。
「愛桜、次に中の状況についてまとめてくれ」
後ろを警戒しつつ、ササッと階段を数回で駆け上がった彼女に話しかける。先ほどから必要な事しか話さない。油断も隙もないし、頭の回転も速い。仕事が本格的に始まると集中力を高めるために自然とそうなるらしい。
「了解。会場マップを出します。」
愛桜が小型の端末を取り出してボタンを押すと大ホールの座席表がエアディスプレイで現れた。そこを指さしながら一つ一つ説明していく。
「まず、入り口ですが3階の中央と左右にある3つの扉になります。扉を開けると、中は本来とは異なる世界が広がっています。箱庭の特徴ですね。左右の視界は壁やオブジェクトで遮られるため、連携はしばらく不可能です。それぞれ道を下りながらまっすぐ進んで2階に降りたところで左右が繋がる大きい通り道に着きます。その先は中央にある2本の道、左右端にある各1本の道で計4本全てステージまでの直線ルート。中央の通路から左右に壁はありませんが、様々な形のオブジェクトが連続して配置されているので変わらず視界は厳しいです。中の状況は以上です。」
「さんきゅ、イメージできた」
ローゼルの方を見たが、異論は無く頷いた。
「後は敵の状態と人数について。何をすれば解決と言えるのか。」
愛桜だけに喋らせるのは気が引けるので、自分でも整理しながら話を続ける。
「まず、解決方法はもちろん、ステージ上のアルマさんに取りついている雪女を倒すこと。敵の状態は3週間ほど人間に取りついて生命力を得ているはず。通常よりも強化されているだろう。具体的に言うと、今回は取りついた人間の意識を操って強制的に動かして戦わせることができる。また、読み取った記憶を元に分離体を生み出して、遠隔で操ったりしているっぽいと。その状態は視認できたのか?」
「できたの。青い液体がアルマの周囲をまとっていて、形の変えられる液体を放って、それが人型に変わって攻撃してきます」
経験したことない能力で、聞いてるだけで胃が痛くなる・・・。
「敵の人数は最終的に未知数となるだろうか・・・」
「違うと思うの。人型はそれぞれ同じ劇団員で特に評価された、仲良しの3人。最年長のウィーンさん、その下のミラノさん、アルマの年下で最年少のミース。それぞれ銃を模した武器を手に攻撃をしてきます。つまり、計4人・・・のはずです」
「そもそもなんだが、その編成と銃で撃ってくるのはなんでだ?」
「多分あれは、最後の公演でオリジナルの台本を使用した演劇のつもりなの。最愛の妹に悲劇が起きて、復讐のため、銃を手にした主人公。迎え撃つ黒幕との最終決戦。
本番前の練習でこの市民館を利用したこともあったの。だけど、本番中に事故が起きて、最後まで演じることはできなかった・・・その未練みたいに見えました」
「未練・・・ね」
箱庭ゲーム。箱庭を所有する雪女が侵入する者を妨害または餌とする目的として、生気を奪った人間の記憶を参考にルールを設定。ゲームを仕掛けてくると聞いている。今回のような回りくどくて複雑な設定は何だ? 雪女にどんなメリットがある?
しかも、2回失敗して失ったのが一部の記憶のみ。
稀に行動理由が吸った相手の強い感情に引っ張られることもあるというが、今回のケースは、『誰のどんな望みを叶える』ためのゲームなのか・・・。
・・・。
「オッケーもういいだろう。おかげでこれから起きることのイメージはできた。あとはアドリブ込みで上手く踊ってみせるよ」
「最初の配置は左がわたしで中央がローゼルさん、右はご主人様で入ります。よろしいですか?」
「問題無し。可能なら2階の通路で合流しよう。愛桜はもう配置についてくれ」
「お気をつけて」
扉に向かっていくメイドを横目で見ながら、もう片方に声をかける。
「それから、ローゼル。渡しておくものがある。」
よし、全員配置についた。
今は中央の扉をローゼルが取り出した『箱庭を開く鍵』によって開かれるところ。
開いた瞬間災厄を招くパンドラの箱というのを聞いたことがある。しかし、今回は開いた瞬間、目標をクリアするか負けるまで続く。ダンジョン攻略のゲームみたいだ。
負けて即死になることは今のところ無いが、一度でも気絶すれば外へ強制的に放り込まれる。開錠時に鍵は消え、3つの扉が同時に開いてスタート。失敗に終われば閉じられ、後日また鍵が届く。再挑戦するかは本人の自由らしいが、奪われた記憶を取り戻すためには結局当事者は逃げられない。呪いのようなものだ。兎雪には確認するだけと言われたが、週に一度しか開けない。それも既に3週間経っている。昼間の挙動不審や電話してきた理由も察する。今日を逃せば、アルマさんは手遅れになる。
深呼吸する。扉が開く。
「行くぞ!」
3人とも扉の中に入り、扉が閉まる。事前に聞いていた通り、実際のホールとは異なっていた。床は雪のように白いタイルで2階まで下り道の一方通行。左右は氷の壁でお互いを視認できない。天井は夜空。星空が綺麗だ。
【参加者3名確認しました。私はキステ、箱庭の管理者デス。】
ロボットのような機械音声が館内放送で聞こえる。
【直接介入しませんが、勝敗を決める審判を務めマス。安心してください、公平デスぴょん☆】
「(嘘くさい上に語尾がおかしいっ!)」
先ほど確認し合った、最低限のルールが説明された。
【両者とも準備はよろしいデスネ】
・・・。
【__それでは、《箱庭ゲーム》スタートデス!】
創八木は5秒間数える。ローゼルには30秒数えるように伝えた。
最初に動き出すのは左通路スタートの戦闘メイド、木村愛桜。一気に一本道を駆け降りる。
「(さて、誰が釣れるでしょうか・・・。)」
彼女は裏世界でも活動できる妖。先日の死にかけな雪女では無理だが、今回は強化された雪女。裏世界の住人どうしが持つ特有の匂いや気配、その生命力が強いほど感じ取れる存在を無視できるはずもない。放置していれば自分が刈り取られてしまう。
最初から台本をひっくり返す、なんなら彼女がボス以外全て引き受ける。そのための時間差アクション。
2階に降りて通路に出る。ここから舞台までは4つの通路があり、間に巨大な雪像が様々な形を成してそびえ立っている(左右両端は氷の壁)。
「足もとのライトアップが雪像を照らしていい感じに綺麗ですね」
「素敵でしょう? 舞台セット、たくさんの協力があって実現できたんです」
「(まさか話せるんですか・・・)」
穏やかで余裕のある話し方、聞いていた通りなら年長者の・・・。
「あなたはウィーンさん、ですか?」
はっと、少し驚きながらも嬉しそうに彼女は話す。
「あらあら。ローゼルから話を聞いたんですか? あの娘にお友達ができて良かったです♪」
「う~ん」
やりにくい・・・と愛桜は思った。しかし相手は人間ではない、人の形をした青い化物だ。もうすぐご主人様が通路まで下りてくる。物語はテンポ良く進めないと。
「時間がありませんので、2撃で終わらせます」
右手を前に出して集中する。
『晩春、芝桜』
瞬間、柄が赤で鞘が白色のシンプルな刀が現れた。オッドアイである彼女の右目が光り、周囲に桜がサッと舞った。
「えっ、えっ? えっ?」
「・・・?」
愛桜はウィーンの様子がおかしいことに気づく。彼女の手には銃を模した形の武器がある。しかし、交戦することに戸惑っているようだ。
「(そんな武器を持ちながら、仲良くしましょう、ですか? イラつきますね)」
左の親指で刀の鍔を軽く押し出す。右手で柄に手をかける。腰を低くした抜刀の構え、一瞬桜が相手の視界を遮った後、メイドは姿を消していた。
「ど、どこですか!?」
「はっ! ・・・ここです。」
左斜め後ろに愛桜は居た。既に右手で刀身を抜いて移動しながら横へと払い、抜刀は終えている。少し経ち、鞘に刀身を納めて少し距離を取った。
「当たってない? どうなってるのかしら」
ウィーンは体全体を見回しているが、塞がっていく傷に気づかない様子。
「(それはこちらが聞きたいのですが・・・切った場所が塞がっていく? ですが、この程度は想定内です)」
再び愛桜は集中する。
『起きなさい』
切り口を中心に根が分かれ、広がって対象を囲い、縛る。芝桜は一撃で仕留めそこなった敵を拘束する追効果がある。例え対象の元が冷気のある液体であっても形を成しているなら逃がさない。あと耐寒性あるため、冷気を持つ雪女と相性抜群である。
「く、苦しいです。助けてください」
「へーそうですか。では、今楽にしてあげますね」
命乞いをする相手にも容赦なく刀を振る。そんな愛桜に怯えて銃を構えるウィーン。
「う、撃ちますっ! きゃあっ!?」
足を滑らせたうえに反動でびっくりして放った1発はすぐ後ろの巨大な雪像に当たって死角から愛桜へ向かっていく。しかし、危険を察知して躱す。
「・・・跳弾? 危ないですね」
カン・・・カン・・・カン・・・。
「__いえ、これはマズイ。ご主人様避けて!!」
更に跳弾した銃弾は、2階に降りた創八木の方へ向かっていった。
「雑魚行きまーす。」
右サイドの俺、創八木も愛桜が動いた5秒後、一本道をゆっくり下り始めた。
愛桜が既に一人と交戦中・・・だとして、俺が引き付けるべきは最低でも一人。運が悪ければ二人。
「話を聞く限り、台本のような演劇を箱庭ゲームで再現したいってことだよな・・・。どうせ殺伐としてるんだろうが」
今回は単純に弱いCPUを求めて楽しんでいるわけじゃない気がする・・・。
「むしろ、勝ってほしいような思いさえ感じる・・・いや、俺もどうかしてるな・・・」
もしかしたら、ローゼルが持つ記憶にまだ足りない部分があって、根本的に勘違いしているのかもしれない。
「いつも想定通りが9割、想定外が1割の仕事を求めてるのに本当に世知辛いねー」
はぁ~とため息が出る。慣れたくないものだな・・・そう思いつつ、腰に装着している小型デバイスの電源スイッチを入れる。
『グリッドライン展開』
中心点は彼のため、周囲に広がった網状の銀色ラインは移動と共に動く。この前と同じく、このラインを見ることができるのは特殊なカラーコンタクトをした者のみ。雪女はもちろん、愛桜も見れない。
『オーバーレイ表示』
下りながら準備を進めていく。もうすぐ2階の左右に繋がる通路へ到着する。
『北X7M先に追加の立方体を設置。』
2階の通路上に箱を浮かせる。
『トランスフォーム⇒Y軸縮小⇒続けて拡大』
両手の掌で中央の何かを圧縮するように近づける。すると、箱は巨大な板になった。
自身も2階の通路に下りた。そしてすぐに目の前の板を右手で左から右へ弾く。
「行け」
そのまま巨大な板は壁に激突するまで滑るように右へ移動していく。
「ご主人様避けてっ!!」
左サイドから愛桜の声が聞こえて視線を向ける。
『ミラーオブジェクトY』
危険について視認できる余裕も無いと判断。デバイスを左に向けてから、創八木を中心点とする、『右の壁とは真逆の位置に同じ形をした壁』が瞬時に生成されて銃弾をブロックした。
「一瞬でも遅れたら終わってた・・・超怖え・・・」
「ご主人様大丈夫ですかー!」
「大丈夫だー! そっちは頼むぞー!」
はいっ!と返事が聞こえたので、左の壁を放置したまま、右へ向かう。
繰り返すが、この壁も見えるのは特別なカラコンがあるおかげ。つまり・・・。
「ど、どうして動けないの? お兄さん、何かした?」
少女の苦しそうな声が聞こえる。動いた壁はそのまま右壁に激突するはずだったが、反対に配置するため停止させた。敵を迫りくる見えない壁で押し潰す、先制攻撃。わざと少し時間をずらして出発したのは、通路に着いたこちらの一人目を反対方向から挟み撃ちすると思ったから。必ず通路に現れると予想して、敵を視認する前に仕掛けた見えないトラップ。少女は前後の壁に挟まれて動けない。
「一度分離して人の形になると、破壊されるまで液体に戻れなくなるか・・・。君が最年少のミースさんかな?」
パチャパチャ(?)していた少女は動きを止めてこちらを見る。
「こんにちわ、お兄さん♪ すんごいね~!全然動けないや~」
「初対面でお兄さん扱いしてくれる君の事、好感が持てるわ~」
・・・。
動きを止めた雪女の分離体に話しかけている創八木を見て、2人目も拘束中だと愛桜は察した。跳弾を防いでくれたことにほっとした。同時に油断していた自分にイライラしている。
「お待たせしました。もうあなたには何もさせません。たとえ__シッ!」
体を半回転しながら空を切り上げる動作。ピンッと何かが弾かれる音。
「__たとえ、舞台ステージ前からスナイパーが狙っていようとも、です!」
舞台ステージの状況は通路からは遠すぎて確認できない。それよりも手前、舞台下の通路に隠れられても同じだ。それを中央2つのうち左側の通路から左端の通路までのどこかで射撃姿勢を取っている。そして、雪像の隙間を通して遠距離のターゲットを撃ち抜く技術。初撃は防いだが、厄介であることには変わらない。
刀を風を切るように振り払い、撃ってきたであろう方向に切っ先を向ける。
「邪魔をしないでくださいね」
次の狙撃が来ないことを確認して、再び鞘へ刀身を納める。
「さあ、まずは一人、これにて終いと致しましょう。」
彼女の視線は再びウィーンへと向けられた。
・・・。
「(今です・・・今しかなぁああ×××いっ!!)」
分離体としての限界を越えようとしている。
愛桜が狙撃に反応した瞬間を見逃さなかった。ウィーンは茎の合間から手を伸ばして、距離の離れたミースを助けようとする。少しずつ拘束から抜け出している実感がある。最年長として、後輩の皆を助けるのは何よりも大事でごく自然な事。それが、例え記憶を読み取った分離体では無い、人間の彼女が守ってきた心だとしても。
遠くでミースと目が合う。彼女も同じくあがこうとしていた。
タンッ・・・。
「・・・!?」
その二人がいる通路にもう一人が今、降り立った。
現れたのはローゼルだった。いつも不安と緊張で自信無さそうにしていた少女。
あの頃の光景が蘇る。皆が自分の事だけで精一杯だった。舞台本番で起きたあの事故。それが起きる予兆に私は気づけなかった。引き留めようとしていた彼女が皆に責められ、劇団をやめて塞ぎ込んでしまうその時、馬鹿な私は呑気に談笑していたのだ。きっとあの頃からまだ立ち直れていないだろう・・・。
「えっ?」
ローゼルの顔を見て驚く。彼女の表情は緊張していたけれど、強い意志を感じる顔だった。彼女は左右の状況を確認しつつ、息を吸い込んで叫んだ。
「ソウヤギ!愛桜さん! ローゼル、行ってきます!」
「おう! 中央右側の通路が安全だ、頑張れよ!」
「ここはお任せを!行ってらっしゃいませ!」
勇往邁進。左右の返事を背中で受けながら、先へ進んで行った。
ウィーンは、その姿を眩しく思った。
「行ってらっしゃい・・・今はもう大丈夫なんですね」
心配事が無くなってスッキリした。私の出番はもうすぐ終わるのだ。
愛桜さんという方を見た。
「他の2人も未来へ送ってあげてください」
彼女は調子が狂うとぼやきながらも刀を手にした。
『また会えるその日まで、おやすみさい、ウィーンさん』
こうして一人目の過去は終わり、未来の自分へと帰っていった。
「行ってきます!」
ローゼルの姿を見て、自分の役割も終わりが来たことを悟ったミース。
彼女もまた満足した明るい声で、お兄さんにお願いをした。
彼は何か呟いた後、どこからか銃を取り出して、銃口をこちらに向けた。
その武器は雪女本体や分離体に通用するらしい。お別れの挨拶をしよう。
「わたし達の我が儘に付き合ってくれてありがとう。ローゼルのこと、よろしくね~。楽しかったよお兄さん♪ バイバーイ!」
「約束するよ。未来で会えたら、また遊ぼうな」
そして、二人目も帰った。
「匂いでわかりました。スナイパーは任せてください」
愛桜は嗅覚でスナイパーの位置を把握して、ステージ左端の通路へと走りだした。ローゼルは既に舞台中央へ向かったし、俺も中央の通路から追いかけて・・・。
「___残念だったね。 ハアッ!!」
「___っ!?」
カンッ!
咄嗟に銃で受け止めるが、上からの強打で手が痺れる。我慢できずに銃を落としてしまった。それを襲撃者は遠くに蹴り飛ばす。
「それからこれもっ!!」
身体を捻って回避しようとするも、狙いは人体ではく、腰に装着した小型デバイス。
鋭利な獲物で上から切り離すように振り下げる。
「マズッ!? 回収っ!」
「__させるかっ!!」
デバイスを拾おうとした俺の腹に回転蹴りを加えてノックバックさせた。
痛みで思わず両膝を付く。
「あれ、吹っ飛ばない? ひょっとして防御慣れてる系? おじさんやるね~♪」
「だれが・・・おじさんだ、小娘が」
「その言い方がおじさんなんですけど~ウケる~!」
あん? 事前情報でギャルなんて聞いてないぞ? しかもなんか言動が嘘くさいな・・・咄嗟にキャラを作ってるやつだろこれ。
「どうしたん? もう壊れちゃった? え~、もう少し遊ぼうよ~!」
だだこね始めた。なんだこいつ・・・。
立ち上がって改めて彼女を見る。髪はオレンジショートで右サイドテールの陽キャか~。俺苦手なんだよね。
「あんたは知らないんだろうが、最近はギャル=男に嫌われるとは限らないんだよ。世の中にはオタクに優しいギャルと言って、なんかオタクに興味を持って作品の感想を共有したり、コスプレとかしていくうちに二人の関係がクラスメイトから秘密の恋人に発展したりすんだよ。むしろ、お前が流行に後れたギャルオバサンだろゴフッ!」
いかん、時間を稼ごうと、どうでもいいことを喋りすぎた・・・腹いてぇ。
「流行に後れたギャルオバサ・・・ン・・・」
対する相手は先制有利だったのに落ち込んで蹲ってしまった。言葉のナイフは、ほどほどにしようと思った(今日だけ)。
「ちなみに俺はギャルが嫌いだ」
「・・・? じゃあ! なんでさっきはあんなこと言ったのよバカッ!」
「あれは一般論だ。」
「いや、絶対一般論じゃないでしょ」
む・・・? 言いツッコミをしやがる。
「・・・とにかく! 付け焼刃で無理な演技はするなと言ってるのよ、アルマさん」
そういや、雪女本体が見えないし、取りつかれてもいない。やはり、生身の人間か?
「(考え中・・・)」
「・・・雪女はあんたに取りついて力を得たわけじゃなく、出会った時から力を持っていた? そして、お互いにメリットがあって協力・・・したのか? 今、ステージでローゼルが相対している本体と?」
へー!と感心したような反応をされた。
「大体合ってるわ。一応補足すると、あれが化け物だなんて知らなかったわ。そうだと知っていたら頷かなかった。あたしが贖罪の機会を求めていることを知っている、そんな後ろめたい相手だから協力したのよ」
「(おいおい、それじゃあ、雪女本体の姿は俺の想像したまんまじゃないか・・・。 最悪に困難な役を任せてしまったじゃん・・・フォローしないと)」
「まあ、見抜いたのは褒めてあげる。おかげ様で今のところ順調に物語がフィナーレへと進んでいるわ。でもあんた、いつから気づいたのよ」
「割と最初から。ローゼルから聞いた台本の概要と、役者のパーソナリティ、そして舞台の配役を見て、合ってないなと。主人公が妹を失った復讐者だなんて、あんたには似合わなそうだなって思ったんだ」
「それでも演技できてこそ本物・・・なんだけど、その通りだわ。正義感が強く、まっすぐな心を持ち、太陽みたいに明るく、皆に優しい・・・そんな役にあたしは憧れてるの」
「馬鹿だけど・・・が抜けてるぞ」
「うっさいな、恥ずかしいわね」
「んで、続きをしないのか? その獲物で殴り掛かればいいじゃないか」
「う~ん、そうねぇ~・・・」
「なんだ・・・? これもお前のやりたくない演技だってか?」
ファイティングポーズの構えをする。
「あたしは舞台の結末を見届けたいの。邪魔しないならそれで充分だわ」
そもそも人間同士でやり合う意味なんてあるの?ということらしい。
戦わなくて済むならこんなに楽なことはない・・・。
しかし、取引だか知らないが、みんな覚悟決めてぶつかり合ってるのに、こいつだけ何もなくて解放・・・? さっき、奇襲も受けてるんだがな・・・。
「これが終われば今回の箱庭ゲームは消える。後は煮るなり焼くなり好きにしたらいいじゃない」
まるで、負けた場合に雪女をどうやって殺すのか、こいつには関係ないって言ってるみたいだ。
いいと思うか? それは違うよな・・・?
ブンッ。
突然、視界に現れた多数のオブジェクト。
ゆっくりと近づいて、その一つを手に取る。
「(来たか・・・)」
相手は完全に無力化したと思っている。実際、メインデバイスを狙われたのは痛手だが、保険は常に用意しておくものである。
「誰のためであろうと勝手にここまでしておいて、勝手に舞台降りてるんじゃないよ。舞台に立ちたいのは、あんたも同じだろうが。フィナーレはまだ終わってない。みんな自分の役を演じきって退場するんだ。お前は観客のまま終わるつもりかよ。」
「で、でもっ・・・! それはあたしの我が儘だから!」
「我が儘じゃない! 後悔のままで終わらせるな!」
柄じゃないけど、このままじゃ綺麗に終われない。全部変えるんだ。
柄に手をかけて、姿勢を低くする。
「別にあいつらの邪魔をするつもりは無いけどさ。どうしても舞台を降りるっていうなら、俺が退場させてやるよ!」
「ふっ!」
キンッ!
振りかぶりからの斬り下ろし。
視界を遮る雪像はいくつか崩れ、視界が晴れていく。
銃弾を弾き、嗅覚で追い詰める。
狙撃は相手の位置を知らせてくれるし、短時間で移動していることから、
射撃姿勢がわかるし、焦って命中率を下げていることも愛桜は見抜いていた。
「見つけました。あなたは優秀ですが、所詮、過去の記憶を持つ分離体。舞台もそろそろ終演。美しく舞って見せ場に致しましょう」
敵は片膝ついてこちらに話しかけてきた。
「こんにちは、飛び入り参加者さん。私はミラノと言います。劇団の中では全体のまとめ役で、ここでの責任は終演まであなたを引き付けて、時間稼ぎをすることですね」
「それ、働き過ぎではありませんか? 既に二人は退場しているんですよ」
「お気遣いありがとうございます。しかしながら、メイドと護衛を務めているあなたほどではありませんね」
「わかりますか」
「ええ、わかっちゃうんです」
分離体なので表情が見えるわけではないが、声のトーンで明るくて気遣いのできるタイプだと伝わってくる。
「あなたのような方に出会えて嬉しくもあり、お別れが残念でありません。」
「ですが、時はもう充分に過ぎました。次こそ終わりにします。」
左手に持ち替えた刀を横に向かせて前に出す。手首を左側に回転して切っ先を床へ3回叩く。
コツ、コツ、コツと叩く度、白い鞘が赤く染め上がってゆく。
『晩秋 提琴桜』
「・・・待っててくれたんですか?」
「様式美、ですから」
戦闘時に珍しく微笑みながら。愛桜は抜刀する。鞘は消失し、刀身もまた赤く染められ上げていた。まるで妖刀。居合を捨て、構える。
右足を大きく前に刀は左手で持ち、柄を頭より高く上げる。手首を左に90度回転し、両手はクロスするように柄の前と後ろを支えて持つ。切っ先を下げてまるで上から刺すような姿勢。
「ふう・・・。行きますっ!」
しかしまだ本気で走らない。ライフルから放たれる銃を大きく跳躍して力強く振り下ろす。一発。
すぐにもう一発が放たれる。相手は膝立ちの姿勢で連続で2発撃った。遠距離命中に優れたボルトアクションタイプではなく、何発でも撃てるセミオート式のタイプ(愛桜は詳しくなかったが)だと、相手はこれまで悟らせないように撃ってきた。しかし、今の愛桜に動揺は無く、超反応で対応しきれる。左から横に一閃、銃弾を弾いて最初の構えに戻る(3発目)。左足に力を入れてバネのように相手の方へ飛び込む。
スタンディングの姿勢に切り替えたミラノがさらに撃つ、そしてすぐにまた撃つ。
弾き(4発目)、さらに弾く(5発目)。そしてさらに加速して飛び込む。
もはやこの動きは視界に捉えられず、気づけば真横をすり抜けられていた。
「これはさすがに・・・無理ですね・・・」
横から外へ払うように切りつけられたミラノは、それでも分離体として致命傷にはならないのでは? と考えたが、むしろ体は損壊していった。
「雪女にとってもこの一撃は猛毒なんです。」
「いつか・・・。気が向いたら、未来の私を探して見て・・・ね。きっと、あの娘を助けて・・・礼として力になれるはず・・・ら」
「はいはい。ついでにローゼルさんの近況もお伝えしますよ」
それは嬉しいな・・・とかすかに聞こえた気がした。
『おやすみなさい』
そして3人目も退場した。
「まったく、ああいう善人はどうしてお願い事が下手くそなんですかね・・・」
消えた雪女を背に歩き出す。しかしすぐに倒れて仰向けになる。
「うきゅ~。修行が足りませんね~。疲れた~、床冷たくて気持ち~い」
消耗が激しい動きをし過ぎて、愛桜は休日のようなぐうたらモードで船を漕いでいる。
「ご主人様褒めて~、あと早く終わらせてねローゼルさん」
10分前、ローゼルは舞台に上がって最後の相手と間もなく対面する。
相手は人ではなく、雪女の本体だったが・・・。
「・・・やっぱりなの。どうしてわたしが箱庭ゲームで失敗する度に再挑戦をするべきか迷ったのは。失った記憶が、あることで取り戻せたのは」
凍りに囲まれた舞台を歩きながら、正真正銘最後の機会だと覚悟を決めていく。
「記憶の改ざん。最後の相手があなたではなく、アルマさんだという記憶。この箱庭ゲームは、わたしが当時のあなたを乗り越えるか、失敗してあなたの記憶を奪われて、あなたへの執着を失ったわたしが完全に諦めるか。」
コツコツと周りを警戒しながら、ゆっくりと近づいていく。
「きっとあなたはどちらでも良かった。あなたに対するコンプレックスを失ったら、きっとわたしは過去の自分から変われると信じたから。そうでしょう?」
足を止めて、相手の顔をよく見た。長い銀髪でローゼルとほぼ同じ身長の少女を。
「天使 ローゼルの姉、天使 皐(さつき)さん」
わたしとお姉ちゃんは、日本人とイギリス人のハーフ。生まれは北海道でした。
最初は家族みんな仲良しでした。周りの人が羨むくらいに。
両親は毎年2月に家族で札幌へ旅行して、雪まつりへ連れてってくれました。
北海道は夜になるのが早いです。まだ17時なのに外は真っ暗。雪の夜にライトアップされた雪像が本当に綺麗で、周りの楽しそうな声を聞きながら屋台の暖かいものを食べて幸せになりました。あの頃はみんな笑顔でたくさん笑いました。あの頃は・・・。
10歳の頃でした。何が原因だったのか、もう正直覚えていません。両親が日夜喧嘩しました。最初は大きな声を出して姉妹で止められました。しかし、次第に聞いてくれなくなり、ある日、止めようとしたわたしの顔に投げられたドライヤーが当たりました。とても痛くて泣いてしまったけれど、両親は止まりませんでした。
お姉ちゃんはこのことで大変怒り、両親の身内にこっそり相談しました。身内は嘆きましたが、預かる場合は姉妹バラバラになると言いました。姉妹で離れたくない姉は迷いました。わたしは我慢するつもりだったんです。しかし、思い通りにいきませんでした。
わたしは気づけば、かすれた声しか出せなくなっていたのです。病院で診てもらい、過剰なストレスだと診断されました。姉は優しいので酷く自分を責めました。そして、別れることを決断したのです。
わたしはイタリアに住んでいる祖母に預けられました。祖母は不慣れで弱っていたわたしにいつも優しく大事にしてくれました。祖母のつくる温かいミネストローネがわたしの大好物になりました。つくり方も丁寧に教えてくれました。
そうして、長期療養した結果、普通の声量は出せるようにまで快復したのです。
ある日、祖母は当時13歳のわたしを劇場に連れて行ってくれました。
その時の光景が忘れられず、帰宅してからも興奮していました。
それを見た祖母はある日、わたしと同年代の娘達が演劇をしている、小さな劇団を紹介してくれました。その頃は頑張って声出しながら演じてみたものです。全然ダメでしたが。それでもみんなと仲良かったし、楽しかったです。
14歳の時、お姉ちゃんから誘いの連絡が来ました。一緒に日本の新関東エリアで住まないかとのこと。悩みましたが、仲間と別れの挨拶をして、日本に戻ってきました。お姉ちゃんとの二人暮らし。ドキドキです。生活費は数年間、お姉ちゃんを助けてくれた家族が出してくれることになりました。日本までは祖母が一緒にきて送り届けてくれました。今までの感謝をしてお別れしました。お姉ちゃんは、わたしが過ごした日々を聞きたがりました。特に劇団に興味を持ちました。そして、二人で入れる劇団を探すことになったのです。
15歳になり、私たちは学生をしながらでも受け入れてくれる劇団に入りました。
最初はお姉ちゃんも苦戦していたようで、知識と経験があるだけ、わたしの方が上手だと言われました。しかし半年後、わたしは下手なままで、お姉ちゃんは劇団で一番評価されるようになりました。わたしは嬉しかったのですが、周りはピリピリしていました。お姉ちゃんと仲の良いレギュラーの団員達は、わたしと仲良くしてくれましたが、それ以外は、お姉ちゃんが成長する分だけ、わたしへの当たりが厳しくなっていきます。
やがて、仲の良かった仲間からも相手にされず、12月24日の特別公演が始まりました。その日は夜にお姉ちゃんと二人で素敵なパーティーをする予定だったのですが、実行されることはありませんでした。きっと、二度と叶うことはないのでしょう。数日後にお姉ちゃんは失踪したのですから。
「久しぶりね、ローゼル。背が伸びたかしら? オシャレもして可愛いわね」
おいで、というポーズをしたが、ローゼルは動かなかった。本人のように振舞っていても向かい合ってるのは過去の記憶だ。
「残念。でもせめてお姉ちゃんと呼んでよ。さん付けなんて悲しい・・・」
「・・・はいはい、わかったの。」
そういえば、一度聞いてみたいこどがあった。
「本当のお姉ちゃんは今何してると思う?」
「私? そうねぇ・・・ソフトボールの選手を目指してたり、ラーメン屋の弟子入りをしているかもしれない。あるいは、プロのカメラマンとか?」
カメラを構えたようなポーズをしている。
「違うの。一度は行方不明になって、何故かアイドルとしてライブで歌ってた」
「アハハハ! それは予想できなかった! さっすが私ね」
だけど、わたしや仲間を避けて勝手に生きて、勝手に楽しむなんて、お姉ちゃんらしくもないよ。
「そっか。じゃあ、結局は演劇、辞めるつもりだったんだね」
「うん? そう。だってあいつら影でローゼルのこと悪く言ってたじゃない。許せなかったわ。だけど、最後の公演までは真面目に取り組んで、後腐れなく辞めるはずだった・・・・。」
なのにね、と話を続ける。
「アルマが私から主役を奪おうと無理し過ぎたから。心配したローゼルの再三にわたる忠告も声が小さいとか、自信無いなら意見するなとか皆で逆ギレしてさ。泣いてる妹を何度見たと思う? そして当人は本番で勝手にアドリブ入れて暴走したあげく、ステージから落下して足を怪我して入院。ギリギリの人数だから当然公演も無しになった。最低だと思ったけど、抜け殻のようになったあいつのこと心配して見舞いに行ってる妹達を前に言えないさ。もやもやした終演だったなぁ。」
「必死だったんだよ。それだけ演劇で負けたくないって熱くなれる人だったんだよ。
お姉ちゃんだって、熱が冷めなかったからアイドルを選んだかもしれないよ」
「そうかもね・・・ふふっ」
苦笑しながらコツコツと周囲を歩き回るお姉ちゃん。冷静なわたしを見て少し自分が恥ずかしくなったやつだ、多分。
「当時の私がここにいるのは雪女のせいかな。きっと感情的で隙だらけの時に狙われたんだね。不安定な私はそれでも妹の事が気がかりだったのかも。」
「当時のわたしは演劇の上達が早いお姉ちゃんにコンプレックスを抱いていて、失敗も多かったから。お姉ちゃんを通して仲良くなったメンバーはわたしに優しくしてくれたのに段々とネガティブな事を考えるようになって、昔を引きずって声も出なくなってきて・・・」
「そのことが、周りの反感を買ってしまったんだよね。わかってたけど、私は姉として妹が言いたい事は簡単に理解できたから、あんまり深刻には考えなかったね。周りに自分と同じことを求めた私も悪いし、乗り越えられなかったローゼルにも成長するチャンスをあげたかった。」
それがきっとアルマとお姉ちゃんの契約であり、わたしが今ここにいる理由だ。
「さて、長いお喋りは終わりにしようか。ローゼルにはこのゲームで私を破壊してもらわないと困るのだよ」
・・・。
「・・・そうたね。」
『(集中して)』
ローゼルは左手で小型サブデバイスを起動する。開始前に創八木から借りたものだ。
「だけど、私の意志とは関係なく雪女は襲いかかるから、一生懸命避けてね。実はもう抑えるの限界なの。できる?」
視界に金色のオブジェクトが落ちていたり、設置されたりしている。
それぞれの位置を確認して初動のイメージを固める。
「・・・できるよ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんは、わたしを見ながら首を傾げているが、疑問を浮かべながらも頷いた。
「それじゃあ、始めましょう!」
「集中するように命令、なの?」
「そう、それが切り札(サブデバイス)の起動パスワード」
箱庭ゲーム突入前、ローゼルは創八木から3つのアイテムを渡された。
1つは、創八木が視界内に設置した見えないオブジェクトを装着した人が見れるカラコン。
2つ目は、事前にモデリングして保存した複数のオブジェクトを必要時に取り出す『インポート』のみ可能な『サブデバイス』×2(創八木が持つ『メインデバイス』は、オブジェクトを設置したり、モデリング(形状変化)やインポート全て可能)
3つ目は・・・。
「チョコが入ったマシュマロなの・・・?」
「近くのコンビニで買ったんだ。開始前に食べておくといい。美味しいぞ」
「は、はいなの・・・」
ギャグか本気か、わからない人だなぁ・・・とローゼルは思った。
「カラコンについては最後にテストしよう。先にこっちの説明ね」
サブデバイスを渡される。
「それはメインデバイスが壊れた時の保険であり、独自に起動できる限定的だが切り札になるデバイスだ。それを運ぶのがローゼルが担当する最初のミッションだな」
「最初のミッションなの・・・」
「そう。具体的な作戦は、俺と愛桜が先行して2階の通路両端でドンパチやってるから、君は後から来て誰も見ていないうちに通路の中央どこかに小型デバイスを一つ隠してくれ。できれば伝わるような声で何か報告の合図してくれると助かる」
話しながらジェスチャーで説明してくれるから、わかりやすい。
「そのまま進んで舞台を上がり、君とボスの一騎打ち。それ以外の人数は全部こちらで引き受けるよ」
ローゼルは真剣な顔で頷いていた。これはわたしが過去のお姉ちゃんを超える戦いで、ソウヤギ達はあくまでサポート。自身がやるべき事を怖いからできないなんて言えないし、言いたくない。
「何か獲物をと考えたところでふと思い出した。カバンのアクセサリーだ。あれは趣味かな?」
昼間の時に? ローゼルは彼の記憶力に驚いた。
「よく覚えてるの。そうです、リアルではなくゲームですけど・・・。ファーストだと酔っちゃうので、サードで回避のイメージトレーニングを・・・してたつもりで、最近楽しくなってしまいましたが・・・。」
「俺も似たような理由で遊んでいるよ。すごく下手だが・・・今度教えてくれ」
わたしもすごく下手なのー!と慌てる姿に少し癒される創八木。
・・・。
「ん?スマホに何かメッセージが・・・誰だ?」
≪兄さん、破廉恥です≫してみるべきか?
「と、とにかくだ。もう片方の小型デバイスはローゼルが身に着けて、戦闘開始前に起動してくれ。連動してもう片方のデバイスも起動するから、想定外が起こっても何とかなる。小型デバイスは必ず君の助けになるだろうぜ☆」
謎のポーズを取った後、何事も無かったかのように話を続ける。
「・・・話を戻すけど、小型デバイスの起動パスワードは『集中してと命令すること』起動後有効なのは5分間と短いから集中してねというメッセージさ。説明は以上だ。」
「よろしくお願いしますなの!」
『集中しろ!』
ここからは5分間の時間制限付。
「何がどうなってるのよ・・・」
アルマは戸惑っていた。これでも幼少から父に武術を叩きこまれたのだ。
相手は丸腰のはずだ。実際何も持っていない。おかしなデバイスも壊したはず・・・。
「なのにどうしてこちらの攻撃が弾かれるのよっ!」
少々卑怯だったが、不意打ちで武器を落として完全に有利のこの状態で、獲物を振っても防がれる。まるで見えない武器を持っているかのように。そして相対する創八木の眼はギラついていて、口角が上がって笑っているのだから不気味だ。
いい加減腕が疲れて、体力も無くなってきた・・・。もう後が無い。
・・・。
「(・・・って、状況みたいだな・・・。残念だけど、俺は性格が悪いんだ。何が起こっているのかは、自分で気づいてくれよな)」
創八木は乱雑に地面へ突き刺された8種類の武器から一つを戻し、もう一つを取り出した。
「締めといくぜ、嬢ちゃん」
「キャラまでおかしくなってるんじゃないわよ!」
左手を上へ何かを捧げるように、右手を振り上げ後ろに引いて右肩と肘を下げる。重心をやや前にかけた後、上半身をひねり、右手を伸ばして上から斜め前へ、そして下へ振りぬくスイング・・・アルマはどこかでこの動きを見た気がした。
「あなた、何をやっ・・・きゃっ!?」
何かが急速に迫ってくる気がして慌てて飛び退いた。反射神経は良い方で助かった。但し、一度目は。
「だから後ろに壁を設置したんだぜ」
「はぁ? さっきから訳が分からないごっ! ど・・・なを・・・・。」
・・・。
創八木は近づいて、倒れた相手の状態を確認した。
「頭部も足も避けたから気絶したのはびびったが、色々限界だったみたいだな」
これで、妖相手の得物を使用してたら、後で訴えられて人生終了だった・・・。
「あーっ!ご主人様が生身の女性に何かしようとしてます~っ! 許しませ~ん!」
体力が回復してきた愛桜は戦闘を終えたご主人様の方へ走る。
「おいっ! 誤解を招くような事を言うな。」
愛桜に後ろから捕まってしまう。こうなると逃げられない。
「じゃあ、何をしていたんですか~?(怒)」
え? えっと・・・。
「テニス、だが?」
・・・・・・。
「(次はタックルが来るのかな? 避けるけど)」
皐は自分に向かって急加速したローゼルを甘く見ているから気づかない。
右手で弧を描くように大きく振りぬいたまま、回転するように前へ倒れる。
転がりながら何か手に取って左足に力を入れて距離を取る。
「今のは・・・腹を斬られた? サバイバルナイフ?」
マズイと思い、視線で追いかけながら左手を銃に変えて対象を撃つ・・・が、何かに弾かれたのか銃弾が届かない。ローゼルは左に横移動しながら左手を前に出す。
「(なに?まるで撃ってほしいみたいに無防備に・・・)」
しかし、次の瞬間、身体に穴が開いたのは皐の方。最初こそ距離を取っているだけの相手に有利に攻めていると思っていた彼女だが、今は相手の意味不明な行動に思考や動きが止まり、隙ができて狙われるだけの一方的な展開へとなりつつあった。
・・・。
「(視界の情報が更新された時、ここがTPSのバトルフィールドみたいになった。遮蔽物はたくさんあるし、銃やナイフが落ちている。詳しく聞いてなかったけど、これがわたしを助けるということなのだろう)」
状況を理解したローゼルはまず、自分を助けてくれるものが本当に機能するのか確認する必要があった。何があって何ができるのかを走って転んで距離を取りながらひたすら情報を得た。もちろん皐の動きもだ。皐はローゼルと同じ視界を共有できない。そのうえ、雪女の体質のせいか、あまり速くは動けない。一発でも食らって気絶すれば、今度こそ終わってしまう状況の中、彼女は常に先を予測しながらも余裕が出てきて、微笑んでいた。皐にとっては初めて知る姿だ。
「お姉ちゃん、次は足をもらうねっ!」
左足を撃たれてついに片膝を付く。真剣勝負のつもりで、姉はいつも妹を甘やかしていたが、そんな言い訳もできないくらい妹はかっこよく成長していた。
「(集中しているせいか、いつもの可愛い口調も消えてるし・・・。やれやれだわ)」
そろそろ終わりにしてもらうわね、アルマ。
「・・・。」
ん? 撃ってこないのかしら・・・。弾切れ? さっきのナイフもあるでしょ・・・ローゼル?
「お姉ちゃん・・・。」
・・・。
ふぅ~。姉が甘々なら妹も甘々か。寂しくなっちゃったのね。今の私を殴ってここに引きずり出せればよかったのだけど、私にできるのはもうこれだけなのよ・・・。
皐は拳銃をローゼルの方へ向けた。
「武器を透明化しているのね。すごい技術だわ。きっと良い出会いがあったのでしょう。それに成長を感じられてお姉ちゃん嬉しいよ。だから、最後は失望させないでね」
撃ったが、見当違いなところへ外した。攻撃を受ける度に生命力を失い続けた彼女の視界は真っ白でもう何も映らない。
「私は、人間を脅かす雪女。言いたいことがあるんなら、本人に直接言いなさいな」
「うん、わかってるよ」
ローゼルは深呼吸して、この物語に終止符を打つ。
「また未来で会おうね、お姉ちゃん」
パンッ!
『箱庭ゲームクリア。おめでとうございます』
『また楽しませてくださいね、ヒヒッ』
参加者の視界はぐんにゃりと渦を巻いて
眩暈を感じながら全員の意識は途切れる。
「・・・・・・ん?」
外の騒音が聞こえてくる。外?
「これどっちにしろ、外へ放り出されるのかよ」
時間を確認する、21時か・・・家出て3時間くらいかかったな・・・。
「お~い、みんな大丈夫かー起きてーすぐ起きてーさんはいっ(パアン)」
ぴくっと寝ていた2人は動き出した。愛桜は・・・後ろか。
「ご主人様~お疲れ様でした~」
「ああ、お疲れ様。よくやってくれたな」
雪女が消滅して銀の箱庭も消えた。となれば、陰の状態も解除されて愛桜の力も弱まった。
起き上がったローゼルとアルマで状況の共有をして、俺は牛生さんに迎えの電話をかける。話中に振り向いてアルマに問いかける。
「この時間だ。アルマも車で送るけどいいか? てか、よく考えたら、話聞くまで帰さんから拒否権無いわ、お前。良かったな(圧)」
「えっ、はっ、はいいっ!?」
やたらと緊張していた。ついでにローゼルの顔をちらちら見た。気まずいのか。
「はいはい・・・あっ、じゃあすみませんが、お願いします」
電話を終えて振り返る・・・アルマがいない。あのガキ。
「アルマさんなら、ローゼルさんに手紙を渡して連続平謝りからの爆速ダッシュして帰りましたよ?」
「ああ、ありがと愛桜。」
「ソウヤギ、アルマからこれ電話番号なの。いつでもいいそうです。」
「サンキュ・・・ローゼルは体大丈夫か? 我慢するなよ?」
電話番号をスマホで登録しながら、彼女の様子を見た。服が一部ボロボロだが血や痣ができていたりは無さそうだ。期待以上に上手く立ち回ったらしい。
「問題があるの」
「えっ、どこ? 医者呼ぶ?」
「ソウヤギの連絡先、仕事用しかもらってないの。私用もください」
脱力した・・・心配させるなよ。
「あー。ほら、これが私用の連絡先とメルアドとJOINのIDと現住所だ」
「ご主人様ー? 個人情報渡し過ぎですよー! 今日会ったばかりでしょー!」
「2Xのアカウントが足りないの」
「それだけは勘弁してくれ、頼む」
ただでさえ、最近「猫耳ですが?」さんと「妹ですが?」さんにフォローされて、「それ、寒いですよ」の辛口コメントや毎コメ「♡評価」してくるのに恐怖してるんだから・・・リムブしたい。
「こんばんわ♪」
「ん? お迎え早いな・・・ぎ、銀髪!!」
突然後ろから声を掛けてきた女性はサラサラの銀髪で大きめの帽子をかぶり、サングラスをしていた。背は低くて白のワンピースを着ている。声はローゼルより少し低音かな?
「こんばんわ、お嬢さん。デートのお誘いならいつでもいいぜ☆」
手を広げて胸に飛び込んで来いよのポーズ。これで落ちない女ばかりの現実。
むぎゅ♪
「お久しぶりだね。今夜ここで会えるとは思わなかったな。創八木君♡」
「はっ・・・?」
久しぶり・・・? えっ、抱きしめられてる? 温かくて柔らか・・・。
「この匂いは、桃? 銀髪、桃・・・そしてこの声は。まさか、アイドルの天使 皐?」
サングラスを外してニッコリする少女。
「大正解よ、創八木君」
「あ、あのどうして皐さんがこんなところに抱きしめて(混乱して裏声)」
動揺しながらも後ろの二人を見る。愛桜はドン引きして「マジかこいつ、匂いで推しアイドルだと気づきやがった、気持ちわるっ!」という変顔をしている。ローゼルは・・・怒っているような、緊張しているような?
「うっ!?」
瞬間、また頭痛が酷くなって視界が白黒になる。ラジオから出るノイズのような音が聞こえ始める。
『これから箱庭外の探索を始めます。この●●はあの日、●●●●しまいました。外がどうなっているかわかりません。くれぐれも単独行動は控えてください』
ノイズがうるさくなる。
『お姉ちゃん、ソウヤギが●●●さんをメイドにするつもりなの』
『もう、創八木君は。また住人が増えちゃうね』
『●●●はああいうのほっとけませんからね』
ノイズがうるさくなる。
『大丈夫ですか~創八木君?』
「はっ!?」
気付くと視界は夜に戻る。肩を揺さぶっている人は、皐さ・・・。
「すっすすすんません!!」
少し離れて平謝りした。
「ううん。大丈夫だよ。きっと記憶を持つどうしで再会すると刺激し合うんじゃないかな。私も頭痛がしたからね」
「ローゼルもそうかな? 大丈夫?」
そういえば、記憶の中でローゼルと皐さんは姉妹の関係だった・・・。
あと、そこにいるはずがない、気になる人がいた・・・いったい、いつの記憶だこれ。
「大丈夫なの。 それより聞きたいことがあるよ」
「いいよん。久々に再会して、何してたとか。何でアイドルやってるのかとか? あっ、寂しかった? とりあえず感動のハグする?」
それも良いけどねと、ローゼルは少し笑った。
「今日ここに来たのは、今の記憶と箱庭ゲームの両方とも関係あるの?」
「・・・いいねぇ。合わないうちにずいぶん成長したじゃない?」
くすくすと笑っている・・・なんだか妙な反応だ。まるで、箱庭ゲームを知っているかのように・・・。
「箱庭ゲームはこれが初めてじゃない・・・?」
ビシッと俺に指をさして「それだーっ!」みたいな反応をする。
「私だけじゃないよ。創八木君もローゼルも≪過去に箱庭ゲームを何度か経験している≫この世界でね」
「何度か・・・だと・・・?」
「他にもいるの? 経験者」
「いるよ。だけど私も記憶が完全じゃないんだ。だから今はこれだけ約束をするね」
俺に手紙を渡して、背中を向ける。読めということらしい。
【過去の経験者を探して記憶を広げて。全てを拾い集めたら、もう一度約束の場所で未来を創りましょう】
【これは、私たちが過去に落としてしまった後悔を未来で力に変える物語】
「また会いましょうね」
そう言って彼女はタクシーに乗り込んで離れて行った。
自宅に帰宅したローゼルはシャワーを浴びながら、今日のことを振り返っていた。
昼間に彼と出会い、不思議な記憶を見て、怪しい名刺をもらって。2度目の箱庭ゲームは最初よりは相手の動きがわかって避けれたけど、3人に囲まれて失敗。もう諦めようかなと思った。電話した彼が強つよメイドさんと来てくれて挑んで、わたしが呼ばれた理由を知って、負けられないと思って乗り越えた。本当の姉と再会てきたかと思えば、よくわからないこと言ってまた離れて行ったけど、今度はきっと大丈夫。また会えるから。
風呂場を出て服を着た。明日は今日の件で体調に問題ないか、皆で医者に診てもらうらしい。こういう時の専門のお医者さんだとか。だから今日は早く寝て、そうしたらまたすぐに会えるから。
「あっ、手紙・・・」
同じくアルマも医者に診てもらうことになる。電話で彼が約束させてたから逃げないだろう。そうなると、今日読んで改めてちゃんと彼女と向き合うのがいいよね。
そう思い、封を開けた。
___________________________
≪劇団員の仲間で友人のあなたへ≫
お久しぶりです、ローゼル。
お姉さんの件、聞きました。大変な時期にこのような手紙を書いてすみません。
自宅で一人ということですが、食事とか体調は大丈夫ですか?
あたしも一人暮らしになって、病気など苦労しました。
本当に苦しい時は誰かに相談してください。あたしが行ければいいのですが、今も足の療養が続いていて、力になれそうにありません。ごめんなさい。
本題を話します。まずは忙しい中で見舞いにきてくれたこと、感謝しています。
おかげで順調に回復しています。リハビリもできることが増えています。
しかし、あなたの事情を知らないあたしは、今度も八つ当たりをしてしまいました。
後でウィーンさん達に話してたくさん怒られました。そして、あなたのことを教えてもらいました。ちゃんと周りが見えていれば、考えていれば、あなたが何かを抱えていることは想像できたはず。いいえ、先輩として友として悩みを分けてもらって一緒に考えられたなら・・・。自分の事ばかりで本当に救いようがありません。もう来てくれないかもしれませんが、いつか再会できたその時はこの手紙を読んでくれたら嬉しいです。
信じてもらえないかもしれませんが、ハードワークで体調を壊していたあたしを度々心配してくれて声をかけてくれた事、相手にせず、弱みに付け込んで拒絶してきましたが、舞台本番のステージ落下寸前であなたの事を思い出したのです。妙に頭が働いて、頭部だけは絶対に避けなければならないと守りました。足を怪我しましたが、最悪生死に関わる事故になっていたかもしれません。内容が伝わらなくても、日々声を掛けて心配してくれたあなたの行動が最後にあたしの命を救ったんです。そのことに今更気付きました。いつか、この恩を返したい。そのためなら何でも頑張りたい。
たくさんありがとう。どうかお元気で。
アルマ
______________________________
手紙を封に戻して閉じた。
ふぅ・・・と呼吸が漏れた。とても緊張していたから。
「だけど安心したの。そっか・・・無駄じゃなかったんだね・・・」
ぽつぽつと音がした。そうか、もう梅雨の時期だった。
今日は久々に長く続いた。
前よりずっと心が軽くなった気がした。
「何だか色々あったねぇ・・・。」
「そうですねぇ・・・」
自宅に帰った俺は愛桜と背中を合わせてベランダから夜空を見ていた。
二人ともいつ寝てもいいように準備をしてきた。体はぐったりしているのに興奮していて誰かと話したいと思った。愛桜もそう思ってくれていた。
「もうすぐ夏ですよ~」
「いいですね~」
何がいいのかわからない。というか、話す内容はどうでもよかった。
・・・と思ったら、少し不安げな愛桜が上目遣いに聞いた。
「ねぇ、ご主人様?」
「ん~? どうした」
「・・・これからご主人様は色んな経験者?さんと出会って、あの星空のように絆を広げて行くんですよね。その先まで、妖のわたしは、あなたについて行ってもいいのでしょうか?」
「・・・」
自分だけ過去の記憶を見なかったことで疎外感を感じているのだろうか?
「心配は不要だよ。愛桜が一緒じゃないと、俺は寂しくて死んじゃうから」
頭を撫でていると嬉しそうに目を細めた。犬かな?
「それにさ。いつかのように真っ暗な世界で泣いてる俺を明るい世界へ引き上げてくれるのは愛桜にしかできないことだよ」
「・・・」
体重をかけてきて、コトンと頭を肩に乗せてきた。
「まったく、ご主人様はしょーがないんですから♪」
白メイドはお酒に酔ったかのようなテンションでご機嫌でした。
第一章 終わり
🌸おまけの愛桜さん🌸
第一話 初めてのフード注文
「ん? おーい、愛桜?」
それは、いつものように昼食をデリバリーで受け取った時だった・・・。
F1カーが走ってくるかの如く、褒められると期待してやって来る白メイド。
「今日は愛桜が注文してくれたんだってな?」
「はいっ! 初めてでしたが、頑張りました!(誉めて!褒めて!)」
うっ・・・何て言おう・・・。そんなどや顔で・・・。
ちなみに今日は兎雪の機嫌が良く、自分が全員分奢るとか言い出している。
「その、言いにくいんだが・・・。最後の配達者にチップを上げる画面は基本スキップでいいんだ・・・通常より少し高いし、手数料と送料も支払ってるからさ」
「えっ・・・」
わたし、何かやっちゃいました? みたいな、しょんぼり顔になった。
ここはご主人様として元気付けたいところ。
「いや~、愛桜のそういう優しいところが好きだよ~(頭なでなで)」
「・・・? ふふん、そうでしょ~♪(どや顔)」
「あははははっ!」
10分後、俺は兎雪の前に立っていた。
「こちらがレシートです。ごちそうさまでした・・・」
「いつも家にお邪魔しているからこれくらいは・・・えっ、はぁあああああ!?」
その日の昼食は過去一静かだったが、白メイドだけは楽しそうだった。
おしまい🌸
第2章へ続く🌸
______________________________________
★+設定メモ+★
【第一章の登場人物】
●湊 創八木(ミナト ソウヤギ)
身長:175cm 年齢18歳 誕生日:6月13日
性格:落ち着きがあり、責任感もある。たまにメイドとはっちゃける。
好きなのもの:低身長で長髪の銀髪美少女に出会うと我を忘れる。TPSキャラゲー
苦手なもの:神出鬼没な妹。初対面のコミュニケーション
得意な事:趣味のモデリングソフトと特殊なデバイスで生み出すオブジェクトの操作
補足:名家の白鷹家長男。家を追い出され、祖父の家で暮らす大学生。現在は父方の旧姓である、湊の家名を使用している。学校側の都合で休校中のため、幼い頃から実家の裏仕事で経験を積んだ、妖殺しの依頼を引き受けている。本来は近接戦闘向きだが、本家から武器を没収される。代わりに依頼主からもらった特殊な銃を使用するが、反動に慣れず、ここぞという時にしか使えない。
●木村 愛桜(キムラ チハル)
身長:154cm 年齢18歳 誕生日:6月13日
性格:穏やかだと思ったらテンション高かったり、戦闘時はクールだったりする
好きなもの:創八木、桜、ピンク色で可愛い服や雑貨、2次元の美少女アイドル
苦手のもの:白鷹家、泥棒猫(創八木に群がる雌)
得意な能力:居合・抜刀術と生気を代償とする妖術の合わせ技
補足:裏世界の住人で妖の身でありながら、特殊な経緯で白鷹家に育てられる。幼少時から創八木を守ることが自分の使命だと思っている。一度離れ離れになったが、再び再会する。共に牛生家で暮らし始めて以降は護衛兼メイドとして現在も仕えている。ヘッドフォンが体の一部みたいになってて、常に装着している。
●白鷹 兎雪(シロタカ トユキ)
身長:156㎝ 年齢17歳 誕生日:1月23日
性格:真面目で自分に厳しく兄にも厳しい。(それ以外は無関心)
好きなもの:流行探し、兄の面倒を見る
苦手なもの:兄以外の他人、うるさい人
得意な能力:仕込みステッキでの近接・中距離・遠距離戦闘
補足:高校生だが、白鷹家次期当主としての将来が決まっている。既に本家を追放された兄の様子を見に来ては、だらしない生活をいじりに来るのが習慣というか生きがいになっている。兄の世話をしている白メイドが羨ましくて鬱陶しい。最近、兄が妖殺しの依頼を引き受けていることが心配になっている。
●ローゼル
身長:150cm 年齢16歳 誕生日:12月24日
性格:他人が苦手だが、困った人はほっとけない優しさを持つ。苦労人。
好きなもの:のんびり寝ること。姉。TPS。
苦手のもの:すぐに怒る人(圧をかけてくる人)、他人
得意な能力:射撃(主にゲーム)。走ること。パズルや計算問題を解くこと、料理
補足:日本人とイギリス人のハーフで生まれは北海道。現在は白鷹市の高校生。
幼い頃から両親の不仲が原因で、はっきり意見をしたり大きな声を出すのが苦手。イタリアにいる祖母に引き取られて育つ。祖母に勧められた劇場で二つ上の姉と再会。気に入られて劇団に入る。他人の前では自信が無くて過剰な気遣いをしているが、雑念が消えて集中力が高まると、覚醒したように頭の回転が速くなり、行動力が段違いで変わる。でも、本当はぐうたらのんびりが大好き。
●白鷹 牛生(シロタカ ウシオ)
補足:創八木と兎雪の祖父。白鷹家では表の仕事として酒類販売の経営者を務めていたが既に退職済。一時期民宿として運営していたが、創八木と愛桜が入居してからは
閉じて、自由気ままに過ごしている。日中ほどんど不在な日も多く、何をしているのかは不明。
●天使 皐(テンシ サツキ):創八木の推しアイドル(本人は認めていない)で記憶に引っかかる存在。
●キステ・ターニア・プラグ:箱庭ゲームの進行兼審判。見た目通り、ただのロボットのように見えるが・・・。
【時期、世界観】
●第一章は、2044年の5月頃
●舞台は新関東エリア。妖殺しを裏の家業として担当する3つの名家、『白鷹家』『京築家』『ネオン家』が所在する3つの市、北の『白鷹市』南西の『京築市』南東の『ネオン市』に分かれている。主人公は白鷹市に在住。
【表と裏】
●表は人間が日常生活を送っている世界。裏は妖が集中的に増加した結果、18年前から一部の人間に観測され始めた。妖が静かに暮らすもう一つの世界。表と裏に強固な境目があるが、完全ではない(地上と地下みたいに位置は繋がっている)。表の人間がある日踏み外して裏に迷い込んでしまったケースもあり、裏の妖が表の人間の生気を求めて抜け道を通ったりする。前者は運が良ければエリア担当に救助されるかもしれない。後者も妖殺しに発見されて始末される可能性がある。
【雪女】
●裏の世界に住む妖の多くは表の世界に行くことを好まない。愛桜は生まれながらの特殊体質と表の世界で過ごした期間が長いため、表の世界の方が過ごしやすい。
例外として一部の妖もまた、表の世界での生活を好む。一例として、数年前から急増化している雪女と呼ばれる妖がいる。人間の生気を好み、近くにいると冷気を感じる。人吸い(人間から生気を吸うこと)を長期間続けると自由自在に体を変化させて強化される。あるいは、分離して種族を増やすこともある。特に精神的に不安定でありながら、強くあろうとする人間の生気を好み、通常より早く強化されるが、同時にその人が強く執着している記憶を共有して行動目的に影響を及ぼすことがある。
【行動目的】
●主人公はメイドと共に各地の妖殺しに関する依頼を引き受けては『同じ過去の記憶を持つ者』に関する情報収集をすることになる。たまにお供を連れて行く。
●緊急時の依頼として『箱庭ゲーム』に人数を集めて攻略することもある。
(基本的には各エリア担当の本家が育成する人員を派遣して解決する)
【箱庭ゲーム】
●雪女が表の世界で潜伏する場所は様々だが、最近判明したのは見つかりにくい閉館・休館した施設。特に力を持った雪女は表を侵食する『裏と表が混在する世界=
陰』の空間を創り出すことができて、特定の人にしか開けないその場所を『銀の箱庭』と名付けられた。その箱庭を所有する雪女は侵入する者を妨害または餌とする目的として、生気を奪った人間の記憶を参考にルールを設定。箱庭ゲームを仕掛けてくる。ルールを守りながら主を倒した場合は、箱庭と雪女が消失し、元の空間に戻される。敗北した場合は不明。放置した場合は雪女の力が増大していって・・・。
★読んでくれてありがとうございましたー!
銀と白の箱庭と黒と陰の世界で ジャックTM @JackTM
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