第12話 ダンジョン攻略全裸RTA

第80階層でユニ〇ロで購入した最新式の装備が完全に破壊されてしまった私は、いつもの装備を身に着けてダンジョンを進んでいた。

本来であれば、第80階層以降はトップレベルの探索者でも攻略に苦労する階層なのだが……。


「うりゃー、連鎖爆烈四散拳チェインエクスプロージョン!」


「おりゃー、連鎖爆烈四散拳チェインエクスプロージョン!」


《おいおい、なんかすごい勢いで攻略していないか?!》

《ここって80階層より下だよな?》

《なんか、ダンジョン入口付近のような勢いでモンスターが爆散しているんだが!》

《会敵して1秒で爆散するんですが、これはいったい……》


第80階層でいつもの装備に着替えた私だが、80階層以降も水中のため、私の移動速度が制限されていた。

そのため、一発食らうと全裸アウトな私は、敵の攻撃を許した時点で終わる。


まさにデッド全裸・オア・アライブ瞬殺という状況によって、私の魔力はいつにも増して高まっていた。


ダンジョン最深部に近い階層とは思えない速度による攻略速度に、コメントも活気づいていた。


《これはヤバいな。敵が死ぬ前に次の敵に向かっていて、1秒後に死ぬとか漫画でしかみたことないぞ?!》

《あの技って、いつもは「アンタはもう死んでいるわ!」って言ってから爆散するえ」けど、今日はセリフ言っていないからね》

《逆に言えばセリフを言う余裕もないほどの強敵って事だろ? ヤバくね?》


「もうぅ、最初はゆっくり行こうとしたんだけど、すぐ服が無くなっちゃんだよ?!」


《そらそうだ》

《水中ダンジョンは回避タンクにはきついよね》

《しかし、アヤカたんの強さもちょっとヤバいぐらいで引くわ》

《あれって、全裸だと装備のバフがかかるとか言っていなかったっけ?》

《言ってたな。今は普段の1.5倍以上の能力だろうな》


そう、どう足掻いても全裸回避できないと知った私は、服が戻るのを待たずにモンスターを蹂躙していった。

私の攻撃を受けたモンスターが爆散し、その肉片に触れたモンスターも爆散するという状況が、私の高速移動と攻撃によって同時多発的に発生していたのである。


「あまりに早すぎて、私が異能を使う時間すらありませんわ!」


「彩香がやってくれてるんだから、私たちはフォローに回りましょ」


「そ、そうですわね」


私が怒涛の勢いで倒していくのを見ていた二人が、私のフォローに回る。

瑠衣と早紀の強化魔法によって、私の殲滅速度はさらに上がり、討ち漏らしも二人がテキパキと片付けていった。


そうして、30分もしないうちに、ボス前の89階層に到達した。


《おいおい、開始してから30分も経っていないぞ?!》

《1階層3分かかっていないとか、これで最深部手前って信じられるか?!》

《なんか、アヤカたんだけでも大丈夫なんじゃないかと思えてきたわ……》

《それな!》

《突然現れたと思ったら、半年もしないうちに最強とかヤバくね?!》

《いや、配信自体は1年以上前からやっているぞ。第一階層でスライム相手に死闘を繰り広げていたらしい》

《おいおい、そんな餌で俺様が釣られ――クマー!》

《また一人、アヤカたんの真実を知った者が出たな!》

《この配信動画、マジかよ?!》

《大マジだぞ! 当時はアヤカたんはユニ〇ロも買えなくて、しま〇らで3着1000円の装備を着ていたらしいぞ》

《おいおい、しま〇ら、安すぎじゃね? そんな装備で大丈夫か?!》

《性能自体はそこそこってところだな。アヤカたんみたいな駆け出しだけどお金のない人にはありがたい装備だ》


「ちょっと、何で私の過去のことを知っているのよ!」


私はモンスターたちを爆散させながら、コメントに答える。


《そりゃ、ここまで有名になったら調べるだろ?!》

《そうだな。しかし、1年以上も第1階層でやってたとか、いまだに信じられないんだが》

《それを言ったら、半年で全探索者を追い抜く勢いで最強と言う、今の状況すら信じがたいんだが》

《そうだな、でも俺たちもいつかは芽が出るんじゃないかと言う希望が持てるようになったぞ》

《たしかに、アヤカたん効果か、探索者を目指す学生が増えてるらしいぞ》

《そして現実を知って、心が折れるまでがセットだけどな!》


「ま、まあいいですよ。どうせ私はずっと第1階層でちまちまやっていた底辺ですからね! さって、とっととボスも倒しちゃいますよ!」


そう言って、私はボス部屋の扉を開けて飛び込んだ。

そこには巨大な半魚人のようなモンスターが2体いた。


《これってダゴンとハイドラじゃね?》

《80階層のボスに加えて、もう一匹かよ》

《しかも、ハイドラってヒーラーだって話だぞ》

《ダゴン削っても回復されるってことかよ。ヤバくね?》

《だが、今のアヤカたんならもしかしたら》


その2匹が気づく前に私は魔力を集中しながら高速で接近する。


水龍顎拳リヴァイアサン!」


私は龍の構えをとり、1匹の腹に拳を打ち込んだ。

その1撃を受けたダゴンの腹に巨大な穴が開いた。


それを見たハイドラが慌ててダゴンに回復魔法をかける。

しかし、私はその間にハイドラに近づき、龍の構えをとった。


水龍顎拳リヴァイアサン!」


ハイドラは回復を終える前に、私の1撃によって腹に大きな風穴を開けて倒れた。

わずかに回復を受けたおかげで生き延びたダゴンが哀しみの雄叫びを上げるが、再び開いた風穴が広がりダゴンの命を刈り取った。


「よし、攻略完了ね。イレギュラーじゃないから、ドロップは大したことないと思うけど……。さっきも何も落とさなかったしね。あれ?」


ダゴンとハイドラを倒した跡に2つの宝箱が置かれていた。

宝箱にはそれぞれ、2振りのついとなるナイフと虫眼鏡(?)が入っていた。


イレギュラーでないにも関わらず、ナイフは瑠衣に、虫眼鏡は早紀に適合したようだったので、二人に装備してもらうことになった。


瑠衣の装備は効果がわからなかったが、早紀の装備は異能関連だろうと思い、それを装備して異能を使ってもらった。


すると、普段は広範囲に降り注ぐメテオが、虫眼鏡で除いた範囲に集中して落ちるようになった。


《なんだ、その装備は!》

《見た目はちょっとアレだけど、異能を集中させる効果がある?》

《それヤバくね?!》

《単体相手でも異能を使いやすくするとか、マジおかしいって!》


そんなコメントが流れる中、早紀が突然へたり込む。


「早紀、大丈夫?」


「大丈夫ですわ。おそらく……これを使って異能を集中させると消耗が10倍くらいになるみたいですわ。でも、集中させるだけでなく、一発の威力も上がっているみたいですね」


《メリットもヤバいが、デメリットもヤバいな》

《ユニーク装備ってことは、イレギュラーだったのか?!》

《でも、何で80階層の時は何もドロップしなかったんだ?》

《もしかしたら、あのダゴン、80階層でやられた後で移動した設定なのかも》

《なるほど、そういうことか!》


「と、とりあえず、今日の配信はここまでですっ! あとはワープポイント解放して出ていくだけですので!」


《おつかれ! それはそうと、80階層から90階層が29分って世界記録じゃね?》

《そうだな、公式の記録でも28時間とかだった気がするわ》

《むしろ、50階層以降で1時間切っている記録なくね?》


こうして、知らないうちに私たちの名声が世界に広がっていった。

しかし、そのことを私が知るのは、だいぶ後になってからだった。
















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