第13話 コラボ攻略

無事に90階層のワープポイントを解放した私たちは、コラボ当日の朝、90階層のワープポイントに向かった。

そこにはすでに『開拓者』のメンバーが揃っていた。


この日、攻略に参加するのは『開拓者』から6名。

我らが一色アヤメ様、二葉さん、三上さんが打ち合わせに参加したメンバー。

それに加えて、四宮由香しのみやゆか伍代玲子ごだいれいこ、八尋

梨乃やひろりのの3人である。


これに私たち3人を加えた9人が、今日の攻略参加者である。

布陣は私がメインタンク、二葉さんがサブタンク、アヤメ様と三上さんが近接アタッカー、四宮さんがヒーラー、伍代さんと早紀が遠隔アタッカー、瑠衣と梨乃が斥候という形になっている。


有明ダンジョンの90階層からは実は水中エリアではなくなり、神殿のような建物の中を進むダンジョンとなっている。

一説には水中に沈んだ都市をモチーフにしているという話もある。


さっそく、『開拓者』の方も配信を始めたらしく、アヤメ様が今日の攻略の説明をしていた。


それに倣って、私もさっそく配信を開始する。


「こんにちは、今日はコラボ配信ということで、ここ有明ダンジョンの90階層に来ております! あちらには日本最高峰の探索者を抱える『開拓者』クランのメンバーの方々がいらっしゃいます!」


《待ってました、コラボ配信!》

《日本、というか世界でトップの探索者が日本最高峰と説明する謎》

《それな! 80階層から90階層の攻略時間でギネス認定されているからな!》

《その時間が50階層以下含めても一番短いというね》

《これが世界最強の探索者か、いがいとちんちくりんだな!(英語)》

《いろいろと小さくてかわいいじゃないか!(ドイツ語)》

《いかにも日本の少女って感じで萌えるじゃないか!(フランス語)》

《世界最強とか、どうせ日本のはったりだろうけどな! 可愛いのは同意だ!(中国語)》


なぜか、前回の攻略でやけくそで進んでいった結果、攻略時間の世界記録を達成してしまったらしく、私の名前が世界的に知られるところとなり、攻略した翌日にはマスコミが大挙して押し寄せてきて大変だった。


もっとも、その次の日からはパッタリと猛攻が止んで平穏な日々が戻ってきたのだが、瑠衣に聞いたところ政府公認のクランメンバーということもあり、政府が圧力をかけたらしい。

その代わりとして、今回のコラボ企画が終わったら、公式の記者会見を行うことになっているのだが、一般庶民である私にとっては胃が痛くなるような話であった。


「ま、まあ、世界最強かどうかは、とりあえず置いておいて……。そのあたりはコラボ終わった後で公式の会見があるらしいから、それを見てください! ってことで、早速攻略を開始していきますね!」


《会見楽しみにしています!》

《あたふたするアヤカたんが見れそう!》

《まあ、生放送じゃないだろうし、そこは編集されると思われるけどな!》

《それはマスコミを甘く見すぎている。ヤツらはハイエナのように弱みを握ろうとしてくるからな!》

《まさにマスゴミで草!》


そんなメッセージが飛び交う中、私たちは攻略を開始する。

幸運にも、水中エリアでないため、私も気兼ねなく回避に集中できていた。

基本的には瑠衣の妹である梨乃がモンスターを2~3匹ずつ引っ張ってきて、私が受け止めたところで伍代さんと早紀が魔法や異能で攻撃するという流れとなる。


その後、残ったモンスターをアヤメ様、二葉さん、三上さんが攻撃する……はずなのだが……。


「なんで魔法と異能だけで倒せてるんだ?!」


三上さんが驚きの声を上げていた。


「確かに……、前に私たちで攻略した時には、もっと苦戦した記憶があるのですが……」

「うーむ、伍代の魔法も普段より激しいような気がするんだが……」


それに続いてアヤメ様と二葉さんも戸惑った様子で続いた。


「えーと、それなんですけど。早紀さんと話をして、『彩香だけなら殺すつもりで撃っても問題ないわ』と言われまして……」


「そうですわね。私の異能ですらもかすり傷程度ですし、魔法程度でダメージ食らうとは思えませんわ」


《アヤカたんの扱いが雑すぎて草!》

《まあ、普段は二葉がメインタンクだろ? 全力出したら味方のダメージも大きいだろうしな》

《まあ、全裸でも二葉より堅いという噂もあるしな!》

《早紀たんの異能でもほぼノーダメって考えると、確実に上だと思うわ》

《アヤカたんのステータス……いろいろとおかしくね?》


そんなメッセージがチャット欄を流れている中、瑠衣が左手を上げる。


「ああ、もしかしたら……。私の強化魔法も効果が上がっているかもしれないわ」


そう言って、瑠衣は先日、ダゴンとハイドラから手に入れた二振りのダガー、そのうちの左手側を掲げながら言った。


「さっき、二人を強化しようとしたら、これがうっすらと光ったのよね。たぶん、効果が上がっているわ。どのくらいかは分からないけどね」


《強化魔法を強化する装備ってヤバくね?》

《たしかに、強化魔法って乗算だから、元の威力が高いとホントにヤバいらしいな》

《そんなの喰らったら、さすがのアヤカたんでもヤバくね?》

《まあ、一発なら死なないからな。なお全裸》

《身体は死なないけど、心は死ぬ……ダメじゃね?》

《まあ、アヤカたんだから、問題ない!》


「問題あるわ!」


チャットで好き放題言われて、思わずツッコんでしまった。








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