第16話 ショゴスロード
私は、その声を聞いた瞬間、扉を閉めた。
そして、カバンの中から高性能ガスマスクを装着する。
露出の高いガスマスク付けた姿は、明らかに不審者だが仕方ないことであった。
しゅこーしゅこー、とガスマスク越しに呼吸しながら、視聴者に説明をする。
「はい、どうやら、イレギュラーが出ているようですね」
《またイレギュラー? 遭遇率高くないか?》
《そうですね。普通なら遭遇することすら難しいはずなんだけどな……》
《ガスマスク付けてるし、イレギュラーってショゴスなのか?》
《しかも、ボス部屋だしな、ショゴスロードと取り巻きだろう》
《これはアヤカたんでもヤバいんじゃないか?!》
《その服にガスマスクは明らかに不審者》
「悪臭対策ですよ! 以前に咆哮で脱がされましたからね!」
《滅多に遭遇しないはずのイレギュラーに対策するアヤカたんの本気がうかがえる》
そして、再びボス部屋の扉を開ける。
部屋の中央には太ったハゲの男、ショゴスロードが立っていて、周囲には無数の不定形なモンスター、ショゴスが蠢いていた。
「見た目はスライムなんだけどなぁ。コアがないから力押ししないといけないのがツライ」
《ここはアヤカたんの本気(全裸)見せるしかないね!》
《ええんやで、本気(全裸)出しても!》
「出しませんから! これくらいなら!」
私は、右の拳に魔力を集中させると近くにいたショゴスを殴りつける。
「
拳から発生した電撃がショゴスから別のショゴスへと広がっていく。
10匹ほどのショゴスが一撃で蒸発したが、ショゴスは次々とショゴスロードの腹の中から湧き出てきていた。
「うわー、きりがないな。真ん中のアイツを倒さないとダメかぁ」
そんなことを言っている間に、次々と湧き出るショゴスが合体していき、1匹の超巨大なショゴスが発生していた。
それは私を追い詰めようと部屋いっぱいに広がる。
そして、逃げ場のなくなった私を取り込もうと、雪崩のように襲い掛かってきた。
《アヤカたん(の服が)ピンチ!》
《とうとう、この時が来たか!》
「くそぅ、
私のパンチを受けたショゴスが爆発四散するが、その四散した欠片は地面に落ちると、再び取り込まれて元に戻る。
「くっ、きりがないわね……」
そして、必死の抵抗を試みたものの、迫りくる大量のショゴスに成す術もなく呑み込まれてしまった。
そして、強い力で圧迫されるダメージにより、服が消滅する。
私は、拘束から逃れるために、全身に魔力を巡らせると、全て電撃に変換する。
その力で、ショゴスの拘束を弾き飛ばした。
体中に流れる電撃によって、私の体は金色に輝き、髪が逆立っていた!
そして、当然ながら服はまだ元に戻っていなかった。
《アヤカたんの本気がキター!》
《クールニンジャ!(英語)》
《これはまさに
《戦闘力100万くらいありそうだ!》
「くそぅ、またこのパターンか! もう許せん、これで決めるわ!」
そう言って、私は1枚のコインを取り出して真上に放り投げる。
そして、それが落ちてくるタイミングに合わせて全身の電撃を両手に集中させる。
「くらえぇぇぇぇぇ!
コインは両手の超高圧電流の力によって加速し、ショゴスロードに向かって超音速で飛び、広範囲にわたってソニックブームを巻き起こしながら飛んで行った。
そして、摩擦熱による発熱により、その体はドロドロに溶けていく。
ショゴスロードを倒すと、周囲にいたショゴスも動きを止めて、ゆっくりと消えていった。
「これ結構魔力消費が激しいのよね……」
《アヤカたんの攻撃がヤバすぎる件》
《どうみてもレールガンで草》
《近代兵器を体一つで再現する忍者?!》
《はっはっは、ニンジャは最強だぜ?(英語)》
私の必殺の魔法にチャットがにぎやかになった。
「さてと、今回はどんなアイテムかな?」
私はショゴスロードがいたあたりを調べると、少し派手めのハイヒールが落ちていた。
私は、それを拾って履くと、少し体が軽くなったような気がした。
「お、身体が軽くなった気がする」
《うらやましい、これも何か凄い付与効果がかかってそう》
《たぶん、全裸の時に何かが起きる感じだと思うんだが……》
《それなら要らないかな? 全裸になるのはアヤカたんだけで十分》
《逃げちゃダメだ! パーティーの幸せのためには……》
《男しか幸せにならないという現実、そしてパーティー崩壊……》
付与効果は使ってみないと分からないので履いたまま、次の階層にあるワープポイントに登録するために奥にある階段を目指す。
ダァン!
突然の銃声に私が振り向くと、私に向かって一直線に銃弾が飛んできていた。
かわそうとしたが、間に合わなそうだったので、再び全裸を覚悟する。
「あれ?」
私の体が勝手に動き、銃弾を回避してしまった。
再び銃声が鳴り響き、銃弾が飛んでくるも私の体が自動的に回避するようになっていた。
私は回避しつつ銃弾を摘まむと、速度を落とさないように回転し、そのまま銃弾の飛んできた方向に投げ返した。
「ひぃっ!」
撃ったはずの銃弾が自分に返ってきて、焦った男は一目散に逃げだした。
「うーん、この靴、遠距離攻撃を自動で避けてくれるみたい」
《チート装備じゃねーか!》
《これはアヤカたんの牙城を崩すのがますます大変になりますな!》
《だが、そこは最後にはお約束を守ってくれると信じてます!》
《そうだな、心配するだけ無駄だった!》
ありがたくない信頼をいただきながら、私は41階層にあるワープポイントに登録して、入口へと戻った。
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