第15話 レベル上げ
「レベルが上がらないなぁ」
私は先日の瑠衣の話にあったように、一緒に組むためにレベル上げに励んでいた。
なるべく奥の方のモンスターを倒す方が、レベル上げの効率が高いため、私は渋谷ダンジョンを中心に攻略することにした。
なお、あの日の翌日には、探索者協会でCランクに正式に上がったことが伝えられ、探索者カードもあわせて更新した。
ランクが上がったからと言って何かが大きく変わるわけでもないし、Cランク程度だと人数も多いので探索者協会で依頼を受けるときにランクが高いと信頼されやすい、という程度のものである。
そうは言っても、Fランクから突然Cランクに上がる人間など滅多にいないどころか私が初めての快挙だったらしく、探索者界隈でも話題に上ることが多かった。
そのため、配信の視聴者数が先日までは1500人くらいだったのが、今日は3000人になっていた。
「こんばんは、今日はレベル上げのために渋谷のダンジョンにやってきました! 今回は第三十階層から攻略していきたいと思います!」
《こんばんは、結局ローブは着ないのね》
《こんばんは、先日の時に、服ごと大破してたじゃないか!》
《ローブはアヤカたんの闘気に耐えきれなかったのだ……》
挨拶をしただけで、チャットが恐ろしいスピードで流れていく。
「そうですね、ローブは何故か服が消えるのと同時に弾け飛んでしまいましたよ……。まあ、いいんです。襲ってきた人たちに弁償してもらいましたからね!」
《ヒロキたちに服だけ剥ぎ取られたからね、ローブごと。何故かカチューシャは平気だった件》
《カチューシャの真価は全裸になった時に発揮されるんですけどね》
《ヒロキってヤツは変態なのか?(英語)》
《クソ探索者に加えて変態の称号まで追加されるのか!》
「私は変態じゃないですよ? 何故か服が無くなるだけです!」
《それを変態というんじゃないか?》
《いやいや、脱ぐことによって戦闘能力を高めているのだよ》
チャット欄がにぎやかに流れる中、私はさっそく第三十階層へとワープした。
もちろん、襲撃のための警戒も万全である。
第三十階層は実のところ、私にとっては鬼門のような場所である。
洞窟型のダンジョンなのだが、出てくるモンスターがギガントワーム系、いわゆる巨大芋虫というヤツである。
しかも、その洞窟というのが芋虫が掘った穴というわけで、基本的に通路は芋虫に塞がれてしまう回避型の探索者にとっては厳しいダンジョンなのである。
私は回避型、というか、回避しなかったら全裸待ったなしなので、いろいろと死活問題である。
大事なところはカチューシャの効果でもやがかかるので見えないのだが……見えなければ良いという話ではない。
逆に、通路が塞がれるので同時に相手にしなければならないのがほぼ1匹で済むことと、巨体のため不意打ちがほとんどない点である。
早速歩いていると、前方の通路が塞がれていた。
否、グリーンギガントワームが通路を塞いでいた。
私が近寄ると、最初に糸を吹きかけてくる。
幾筋かに別れるため回避が難しいが、ギリギリ回避する。
その攻撃に続けて、酸を吹きかけてくるが、これは糸の範囲に収まるため、糸を回避できていれば問題なかった。
私は両方の手のひらに魔力を集中させると、糸と酸を吹き付けて隙だらけになったワームの体に手のひらを当てる。
「
私の手のひらの魔力がワームの体内で高周波による灼熱となって、体内を焼き尽くす。
そして、ワームは煙を吹き出しながら、魔石を残してかき消えた。
「ふぅ、デカいだけに結構めんどいわね」
《グリーンワームじゃ、アヤカたんにはかすりもしないか~》
《炎や冷気を吐くレッドとかブルーならワンチャン?》
《ワームの場合、初手が糸だから、そこで倒されなければいけるかも?》
「お、そうなんだ! 教えてくれてありがとう!」
《おいぃぃぃ、バラしちゃダメじゃないか!》
《今日の配信の見どころは終了しました……》
《諦めるのはまだ早い。アヤカたんなら絶対にフラグ回収してくれるはず》
「いやいや、毎回毎回、全裸になるわけないでしょうが! 今日はサクサク終わらせちゃいますよ!」
言葉通り、私はサクサクとグリーンワームだけでなく、レッドワームやブルーワームについても炎や冷気を吐く前に叩き潰していく。
巨大とはいえ、出てくるモンスターがワームとその亜種だけであり、全て初手が糸固定であることから、思ったよりもスムーズに奥へと進み、あっという間にボス部屋までたどり着いた。
「ここのボスはマザーワームかぁ。本体は大したことないらしいけど、取り巻きに大量のワームがいるのが面倒だなぁ」
《俺たちにはマザーワーム、というか取り巻きがいたじゃないか!》
《ああ、大量のワームで囲めば、さすがのアヤカたんも成す術もないやろ?!》
「大丈夫よ、問題ないわ」
私は巨大なボス部屋へ続く扉の前に立ち、扉を開ける。
すると、中からボスの鳴き声が聞こえてきた。
「テケリ・リ!」
「「「テケリ・リ!」」」
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