第10話 新しい装備
渋谷のダンジョン配信を終えた翌日、私は探索者協会に行き昨日のイレギュラー討伐報酬を受け取った。
今回は玲子さんと山分けになるので、半分の5万円となる。
それでも今の私にとっては大金だったが、前回の10万、そして昨日の探索の魔石売却代2万円を足して、私は装備を新調することにした。
新調と言っても、これまでユニ〇ロの既製品の服を着て探索していたので、装備として購入するのは今回が初めてだ。
また、身体上下と頭は既にイレギュラーのドロップ装備があるので、それ以外の部分、手、足、上着、あとは余裕があれば装飾品の類もと考えていた。
もっとも、装備品は服と違ってかなりお高いので、まずは全裸対策用の上着を買ってから、余ったお金で他を買う感じとなる。
「うわー、ここが装備品のデパートかぁ」
装備品を扱うお店は都内でも結構あり、こじんまりとした専門店の他に、秋葉原の駅前には装備量販店の岩丸装備というお店があり、購入初心者の私はCMでかろうじて聞いたことのある、こちらのお店にやってきていた。
専門店よりは入りやすいとはいえ、初めてのお買い物である私は、入口の前に立ってから、ドキドキしっぱなしであった。
もちろん、この店も親友である瑠衣に「るいぃぃぃぃ、へるぷぅぅぅぅぅみぃぃぃぃ!」と夜中に電話して教えてもらったものである。
彼女が言うには、「もっといいお店があるけど、知識無くて初めて買う人にはお勧めできない」という理由で、この装備量販店をお勧めされたというわけだ。
意を決して入ってみると、1階は消耗品フロアになっていて、ポーションとか携帯砥石といった、探索中に使用するものがいろいろと揃っていた。
私はエレベータの近くに行くと、フロアガイドがでかでかと貼られていたので、それを見て目的地を探す。
「とりあえずは、羽織るものだよね。マントみたいな感じじゃなくてローブみたいにしっかりカバーできるものでないと……」
そうつぶやきながらフロアガイドを見ていくと、4階の魔法職フロアにローブの類が置かれているようだった。
ちなみに、2階は戦士職フロア、3階は斥候職フロア、5階が特殊職フロアになっていた。
私は4階に着くと、早速ローブエリアへと向かう。
そこには色とりどりのローブが置かれていた。
商品のタグにはサイズの他にかかっている付与効果についても記載されていて、それを選んで購入するようだ。
と言っても、私の目的はいつ服が消えても良いように上に羽織るものを買いに来たので、色がそこそこいい感じでサイズさえ合っていれば付与効果はどうでもよかった。
とは言うものの、できれば良いものがついている方が欲しくなるというもの。
少し高かったが、薄緑色の攻撃力上昇Lv1の付いた装備を購入した。
Lv2以上のものも売っていたが、付与のLvが1上がると値段がだいたい倍くらいになるので、今の手持ちではLv1が限界であった。
それでも、ローブは魔法職向けの装備なので、攻撃力上昇の需要が少ないせいか、他の装備に比べると安くなっているのだが……。
私はローブを買った余りのお金で敏捷性上昇Lv1の効果が付いた黒いブーツも購入した。
17万円も持って行ったので、もう少し買えるかなと思っていたが、装備、特に付与効果付きのものはだいぶ高く、ローブが11万円、靴が5万円だった。
初めて稼げたお金を装備にパーッと使ってしまったことは、多少の後悔もあったが、これから長く自分の身を――いろんな意味で――守ってくれるのだから、悪い買い物だとは思わなかった。
「さっ、まだ明日からダンジョンで稼がなくちゃね! やっと私も本当の意味で探索者になったって感じだね!」
これまでもダンジョンに潜ってきていたが、ずっと赤字だったため、正直言って趣味の延長としてやってきていたような感じだった。
しかし、ここに来てやっと探索者としてお金を稼げるようになったことで、これまでの努力が報われたような気がして、探索者としての生活に期待が持てるようになっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
装備を購入してから翌日、私は今日は品川のダンジョンに来ていた。
このダンジョンはオークの城と呼ばれている。
階層は全部で30階層しかない難易度が低めなので稼ぎは今一つだが、出現するダンジョンの9割がオークとなっていて戦いやすいダンジョンとなっている。
そのため、探索者になって間もない人たちでにぎわっていた。
私も装備に着替えてダンジョンの入口へと向かう。
今日はローブを羽織っているおかげで、変な目で見られることもなかった。
これだけで、私はローブを買っておいてよかったと、その効果を肌に感じていた。
サクサクと10階層までの雑魚を蹴散らしながら、最初のボスであるオークジェネラルと戦う。
通常のオークが棍棒を持ち、鎧をほとんど着ていないに等しいのに対して、ジェネラルは重厚な鉄鎧を身に着け、バスタードソードという長剣を持っている。
重そうに見えて意外と素早く、私はジェネラルの攻撃を慎重に回避する。
もちろん、服のおかげで1発ならくらっても問題は無いのだが、ローブを着ているとはいえ、全裸になるのは気分的に避けたかった。
慎重に、しかし華麗にジェネラルの攻撃を回避しつつ、手のひらに魔力を集中させる。
「
手のひらをジェネラルの鎧に当てると、超音波の振動が鎧を貫通してジェネラルの体を高速振動させ、激しい熱を発生させる。
ジェネラルは鎧の中から煙を吹き出しながら絶命した。
そして、11階層への扉をくぐって先へと進む。
「さて、今日はここから攻略を進めていきましょうかね!」
品川ダンジョン11階層のワープポイントに登録してから、私は配信のためにドローンとスマホを準備するのだった。
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