第7話 チート装備

スケルトンキングを倒した私は全裸のまま、呆然としていた。


「たった一発の咆哮で服が無くなるなんて……」


また外に出る前に新しく着るものを探さないといけないと思い、気分が落ち込む。


《イレギュラーの装備が使い捨てとか厳しいな》

《いやいや、『身代わりスケープゴート』なんて、70階層のボスが使い捨てアイテムとして落とすぐらいだぞ?!》

《そう考えると破格すぎるな。まあ、装備しないといけないことを考えると使い勝手は悪いけど》


腕で大事な部分を隠しながら落ち込んでいると、先ほど着ていた服が少しずつ元に戻っていき、1分ほどで完全に元通りになってしまった。


「あれ? 元にもどっちゃった」


《ファッ?! 『自動復元オートリペア』付き?!》

《本当に第一階層のドロップなのか?! チート過ぎるだろ!》

《これって、一定時間ごとに1回無敵がつくようなもの?》

《そうだな! うちのパーティーの魔法使いにも着せてあげたいくらいだわ》

《攻撃喰らうと全裸になるんだが……》

《死ぬよりはいいんじゃね? 状態異常攻撃も防ぐみたいだし……》

《といいつつ、魔法使いの女の子の全裸を見たいだけじゃまいか?》

《何を言っているんだ! そんなわけないだろう?》

《イレギュラーとはいえ、第一階層で、この性能のドロップがあるとすると狙うヤツ増えそうだな》

《でも、本人専用だろ? パーティーの女の子に「一緒に第一階層のイレギュラー狙わないか?」って言うんか?》

《それは確実に軽蔑案件ですわ!》

《アヤカたんのおかげでパーティー離脱するメンバーが出そうな予感!》


どうやら、私の装備が思いのほか優秀だったようだ。

しかし、「そのせいでパーティーからの離脱する人が出るんじゃないか?」と聞いて焦る。


「え?! ダメですよ、仲良くしなきゃ。でも女の子が嫌がることはしちゃダメですからね!」


《メンバー離脱のリスクと、メンバー強化のメリットのせめぎあいかぁ》

《仮に強化できても、脱がせたくて手を抜いた疑惑が常に付きまとう……やっぱり普通の装備の方がいいかもしれんね》

《死ななければポーション飲めばいいしな》


「さて、服も元に戻ったし、今日はここまでで戻りますね!」


《帰るまでが探索やで、気を付けな!》

《いやいや、アヤカたんは油断するくらいでちょうどいいんだが!》

《ワンモア全裸狙いで草》


「いやいや、ここで油断はしないからね! サクサクと戻りますよ!」


こうして、私が10階層から入口まで戻って、5階層まで来たところで遠くから悲鳴が聞こえた。


「きゃぁぁぁぁ!」


《悲鳴?!》

《これはヤバそうだな。アヤカたんGO!》

《そして、俺たちにワンモア全裸!》


私は悲鳴のした方へと走り出した。


そこには、ムーンビーストと、その触手に捕らえられている全裸の20代くらいの女性がいた。

私の時と同様に、粘液と思しきドロッとした液体まみれになっていた。


「意外とグルメなモンスターだな?! おっと、そんなこと言っていないで助けないと……」


そう言って、私は右手の二本の指に魔力を集中させ、ムーンビーストの体を突いた。


爆発四散拳エクスプロージョン!」


そして、手を引き抜き、少し離れた位置に立つ。


「アンタはもう死んでいるわ!」


その言葉と同時に、ムーンビーストの体は爆発四散する。

それと同時に、女性の体も少しだけ吹き飛ばされてしまうが、探索者なら死ぬことは無いだろう。たぶん。


《強いけど、さっきほどじゃないな。全裸じゃないからか?(英語)》

《忍者だしな!(英語)》

《日本人でもトオヤマの血筋のヤツは興奮すると強くなるらしいぞ! 桜吹雪も、あれは脱ぐことで興奮して強くしているらしい(英語)》

《それは明らかにフィクションだ! だが忍者は実在するぞ!(英語)》

《どっちもフィクションだが!》


ムーンビーストを瞬殺したところでチャットが変な盛り上がり方を見せる中、女性は何事もなかったかのように立ち上がる。

そして、自らの体に清浄クリーンの魔法をかけてから、私の方へとやってきた。


「危ないところを助けていただきありがとうございます。私、田中玲子と申します。まだ新人探索者でして……もう、ダメかと思いました」


そう言ってお辞儀をする。


「あ、私は水無瀬彩香と言いますね。それで、何かあったのですか?」

「はい、私が休憩しておりましたら、4人組のパーティーが走り抜けていきまして、その後から、あのモンスターがやってきて、私を襲ってきたんです」


《またかよ?!》

《懲りない奴らだな!》

《もう、除名処分でいいんじゃねーの?》


「私の時と同じ人たちかな?」


《たぶんそうだわ。こんな低階層で、そんな迷惑行為する奴なんて他に知らんわ》


「服、どうしよう?」


モンスターは倒したものの、女性は相変わらず全裸なままであった。


「その辺のモンスターを倒して、適当に見繕ってから出ます」

「それなら手伝うよ。ついでだしね!」

「あ、ありがとうございます!」

「それよりも、イレギュラーのドロップを見てみようかな……。あれ?」


私が、ムーンビーストのいたところを見ると、アイテムが2個落ちていた。


《もしかして、仮パーティー扱いになったんじゃない?》

《服だったら、ちょうどいいかもしれんね》


「そうだねー。見てみようか。私のは、こっちの猫耳のカチューシャかな? 玲子さんのは白いローブかな? ちょうどいいかも」


私は猫耳カチューシャを頭につけ、玲子さんはローブを身に着けた。


「ん-、私のは付けてみたけど効果がわからないかな? 玲子さんの方はどう?」

「私のは、少し魔力が上がった気がしますね。他は、ちょっとわからないです」


《なんか、またチートくさいアイテムが出てきたな!》

《でも、アヤカたんには似合う!》

《これで服消えたら、猫耳カチューシャが残るだけなんだが……》

《ステータス補正、エロさ+100とかじゃないか?!》


「ん-、まあいいか。とりあえず、服も手に入ったし。帰るとしましょうか!」


こうして、私たちがダンジョンの入口に着き、装備を着替えて受付へと向かう。

と、そこには先日のトレインパーティーがいて、またしても担当者ともめていたのだった。

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