【KAC20245】 黒猫サファイアの厨房ですよ !

るしあん @猫部

黒猫サファイアは、おさかなが好き !

【サファイアside】


「ニャニャ~(みんな、 静かにしてね !)」


 七之助がトラフグを処理しているので珍しく、さくらが小声で指示をしてきた。

 それくらいは、ボクでも知っている……知識としてはね。

 実際に見るのは初めてだけど、丸々と太った河豚ふぐを手早く包丁を使いさばいている。

 食べられる可食部位と毒のある内臓を素早く取り分けていくのは、素直にスゴいと感心してしまう。


 七之助が書く小説は下手くそで笑ってしまうけど、板前さんとしての腕は一流だと思う。


 毒の有る部位、内臓を小型の金庫みたいな箱に入れている。


 もちろん直接では無くて、透明な分厚そうなビニール袋の中に入れて、それを金庫型のゴミ箱に保管しているんだ。


 普通の猫又や猫魈なら知らない知識だけど、ボクやさくらは、七之助の本棚にある本を読んで知っている訳なんだ。


「捨てるのは、もったいないでござる !

 それがしに ! 捨てるくらいなら、某に食べさせて欲しいでござる ! 」


 人狼のダイフクモチがヨダレを流しながら騒いでいる。


はなさないでよね、その駄犬 !」


 ボクが頼むと、タマが黙ってうなずいた。


 妖狐であるタマがダイフクモチをがっかり捕まえてはなさない。

 雑食の人狼と違い、妖狐のタマは油揚げ……特に七之助の特製お稲荷さんを既にもらっているから素直に言うことを聞いてくれる。


 集中している七之助には雑音が聞こえて無いらしく作業が止まらない。


「きゅうちゃん、かわいいー ! 」


 この店の元オーナーである女将が飼っている九官鳥のQちゃんきゅうちゃん五月蝿うるさい。

 女将さんが旅行に行く為に急遽 きゅうきょ預かることに成り、一時的に店に居るんだけど、とにかく五月蝿くて敵わない。


「だせ、だすんだじょぉーー ! 」


 どうやら、女将の家では放し飼いをしているらしく、『鳥かごから出せ』と言うことらしい。


「そのアホウドリもはなさないでよ、タヌキ娘化け狸 ! 」


 ボクの言っていることを理解しているのか、アホウドリQちゃんはコチラを見ながら、


「あーほ、あーほ、まーぬーけぇー 」


 よし、そのケンカ買った !

 ボクが鳥かごの前に行くと怖がりもしないで、翼を広げて威嚇いかくしてくる。

 ときどき、鋭い爪や口ばしを見せつけるアホウドリQちゃん

 その憎たらし姿は、ボク達ネコの天敵であるカラスを思い出す。

 鳥かごから外に放されるとやっかいだ。


「ソイツ、鳥かごからでよ !」


 タヌキ娘が頷いたのを確認して、お仕置きをしようとしたら、


「お主は、何をやっているのじゃ !

 主さまの邪魔をするでないわ ! 」


 みずち、水神であるしずくに捕まってしまった。

 子猫みたいにつまみ上げられたボクは抵抗が出来ない。


「貴様も黙らんと、喰ってしまうぞ !」


 雫に脅されたQちゃんは鳥かごの隅に行って大人しくなった。


「何をやっているのさ、サファイアは ! ?」


 さくらに文句を言われてしまった。


「それよりも、お兄ちゃん七之助が河豚の皮引きをするから静かにで見てなよ !」


 ちょっと目を離している間にまな板がキレイに成っている。

 七之助は河豚の皮をまな板に張り付けてから、出刃包丁で皮引き……河豚のトゲをこそげ始めた。


「出刃包丁は、まな板からで、ピタリとくっ付けて、トゲをこそげ取るんだよ。

 力と技が無いと出来ないんだからね ! 」


 さくらが七之助の代わりにドヤ顔をしていた。




 ◇◇◇◇


 七之助は処理したフグを冷蔵庫にしまい、フグ料理の準備をしている。


 誰がフグ料理を食べるかって !?

 もちろん、ボクらさ !


 七之助がスマホで宝くじのロト10 を買う時にボクが数字を選んだ結果、結構な金額が当選したんだ。

 ボクとさくら、黒猫と三毛猫のダブル福猫パワーにかかれば、宝くじを当てるなんて簡単さ !


 たまには、ボク達の食い扶持くらい儲けさせてあげても罰は当たらないハズさ。


 肉好きなさくらと違い、お魚派のボクは是非ともフグが食べたくて、七之助におねだりをしたら、気持ちよく引き受けてくれた。

 まあ、他のみんな妖怪達も興味が有ったらしく、協力してくれた。



 フグ料理……煮こごり、フグ刺し、フグ唐揚、フグ焼き、フグ鍋にシメのフグ雑炊



 みんな満足した顔をしている。

 ボクは七之助を見ながら、


星、三つです🌟 🌟 🌟 ! 」


 七之助も嬉しそうだ。


 七之助、ボク達をでね。

 むろん、ボクは七之助をけどね ❤️


 ◇◇◇


 ※作者より


 本作品は、


【 黒猫サファイアと三毛猫さくらの日常 ~ 猫魈?猫又! 日常は妖怪、吹き溜まり !! ~】

 https://kakuyomu.jp/works/16817330656371904675


 の続きになります。


 また、KAC2024は、黒猫サファイア▪シリーズで書く予定です。


 コレクションに、まとめてあるので、よろしければ読んでくださいね。

 https://kakuyomu.jp/users/SHIGEMI/collections/16818093073333113174

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