第7話
オーちゃんと話していたら、大お祖母様のところに行きますよ、お父様の一声であっという間に馬車に移動し、家族みんなでの大移動となった。
使用人数人と共の移動となるため、馬車は複数台となり、ジョージ、フレイア、ソフィア、ルシルでの同乗となった。
ルシルはオーちゃんと話をして疲れたのか、馬車に乗ってすぐにぐっすりと眠りについてしまった。
ハーベストまでは、魔法で強化してある馬車で移動すれば半日も掛からずに到着する。
転移魔法という方法もあるが、子供たちには強い魔力がかかるためできるだけ避ける必要がある。子供1人の身を守るためには、平均的な魔力量の大人3人が必要になる。
転移魔法の特性上、1度行ったことのある場所でしか使えない。つまり、フレイアを除けば子供たちは行ったことがないハーベストへの転移魔法を使用するには、大人の力を借りる必要がある。
今回は魔力量と移動する人間と物の量を考えると馬車での移動は必須となる。
お兄様の肩を借りて寝ていたルシルに、もう着くわ、とフレイアが馬車の中で各々過ごす弟、妹たちに声をかけた。
んんっという、寝ぼけた声をもらし、目を擦りながら開けると昼前に邸宅をでたはずが、夕日へと日が傾き差し込む光の色が変わっていた。
私の膝の上には例の本と、その上ではオーちゃんが丸くなって眠っていた。
馬車の中では各々好きなように過ごしていたようで、フレイアお姉様とジョージお兄様は学園での話をしていたようだった。ソフィアお姉様は魔法工学の本を読んでいたようで、既に数冊読み終えたのか本が傍に積んであった。
ハーベストは農村地として有名だが、少し離れた場所にあり、栄えた田舎町と言われている。
広々とした田畑には夕日があたり、キラキラと小麦色に輝いていた。
その光景におおっと感嘆の声を漏らすジョージお兄様にフレイアお姉様がくすくすと笑みを零した。
夕日が差し込む窓から少し先の高台に大きなお屋敷が見えた。
お屋敷へと続く道に入ると、道に沿って木々や花々が植えられ、トンネルのような姿に変貌していた。
トンネルから差し込む夕日がきらきらと目に入り、訪れたことのあるフレイアを除き、私たちは窓を覗き込んでいた。
「ここの景色は朝も夜も素晴らしいの。他の時間も見てみましょうね」
その声に3人がうん、と首を縦に振る。
木々のトンネルを抜けると門が見えてきた。
大きな屋敷は辺境伯本邸宅には劣るものの、十分すぎる大きさだ。
ここには主のマリアと数人の使用人で住んでいる。マリアが辺境伯家当主を勤めていた頃からの使用人のみがここにいるらしく、ほとんどは顔の知らない使用人ばかりだ。
屋敷の前には数人の使用人と年老いたものの美しい女性が立っていた。
年は70をゆうに越していると思われるものの、立ち姿はとにかく美しい。
屋敷の前に到着するや否や、私たちより1つ前の馬車に乗っていたユリアが飛び出し、門の前にいた女性に抱きついた。
母親のそんな姿を見たのは、私だけではなくてお姉様もお兄様まみんな初めてだった。
その光景を窓から見ているとソフィアお姉様が、私の左手をギュッと握りしめた。
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