第6話
オーちゃんとわたしの2人きりになって、オーちゃんは口を開いた。
「まだこんなチビで、ちっせーけど、マリアはまだ元気だから大丈夫だ」
オーちゃんは私の目の高さに浮かんで、柔らかい手で頬を撫でた。
オーちゃんって、浮かべるんだ。
言われている意味がわからなくて、なにが?と思ったけど、オーちゃんが何考えてるのか全然わからなかった。
5歳をすぎたと言っても私はまだ子ども。
みんなが話してる事の全部は、わからないや。
どこまで理解できるか何から話をするか、とボヤいたオーちゃんの声は私に届かなかった。
沈黙の中、ルシルが口を開いた。
『マリア大お祖母様とオーちゃんはお友達なの?』
「ああ、相棒だった。ま、今の相棒はお前だがな」
にかっと歯を見せて笑った。
『相棒とお友達は違うの?』
「まあ、ほとんど一緒だな。でも、支え合える大事な存在だよ」
友達と相棒を使い分けるオーちゃんにルシルはそうなんだあと間の抜けた返事をした。
「そういや、ルシル。お姫様のお伽話は知ってるか?妖精さん出てくるやつだ」
『うん知ってるよ。オーちゃんに聞かせてあげる!』
私は胸を張って自信ありげにオーちゃんに話し始めた。
ーーーーー
昔々、この国でまだ魔法がなかった頃のお話。
今では考えられない魔法のない暮らしをしていました。
ものを運ぶ時も、水を使う時も、田畑を耕す時も
みんなが魔法なくして生きていた頃のお話です
ある日王国に魔法を使う悪い生き物が人々を襲いました。魔法を使える生き物のことは、魔獣と呼ばれています。
魔獣の力には、歯が立ちませんでした。
お姫様は人間の危機に悩み苦しみ、天を仰ぎ
主よ、お助けください、と毎日祈っていました。
ある月が照らす夜のことです、祈る姫様に天から声がかけられました。
天命を受けたのです。
【姫よ、人を思い慈しめる其方に救いの手を与えよう】
その時、人々に身を守る力をお与えになりました。人々は身を守るための魔法の力を与えられ、魔獣から身を守れるようになりました。
人を思い、慈しみ懸命な姫様には魔法とは別に特別な力をお与えになりました。
その力とは悪きものを吸い取り癒す力。
守る力。
そして、姫様と共に人々を守る妖精の力です。
妖精との結び付きとして指輪をお与えになりました。
この指輪は姫様と妖精との固い絆を示したと言われています。
悪しきもの、襲う魔獣たちから守るために使われました。
姫様は病める時も、健やかなる時も
人を愛し人を守られました。
姫様の祈りと妖精様のおかげで今、人々は安心して暮らせているのです
おしまい
ーーーーーー
『お母様が言ってたの。お姫様は妖精さんと愛し合って幸せに暮らしましたって』
「大体あってるな、ちょっと違うところもあるけどよ」
『毎日お母様にこのお話してもらってるから覚えてるんだ』
「…ルシル、これはおとぎ話じゃなくてベンティンク家のご先祖さまの話だ」
『…え?』
ご先祖さま?
コンコン
「お嬢様、失礼します」
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