第4話

 お母様に呼び出されたウィルはハーベストのお屋敷への報せをすぐに出し、お父様をすぐに呼びに行った。

 急ぎの馬車で戻ってきた父親はバタバタと広間へ入ってきた。

 広間には私、お母様、ジョージお兄様、ソフィアお姉様。

 使用人のウィルとリーサがいる。

 長姉のフレイアお姉様は魔法学園の寮にいるので、まだ家に向かっている最中みたい。

 バタバタと駆けつつ、広間の扉が開いた。

 顔にわずかに汗を滲ませながら、お父様は飛び込んできた。

「ユリア!」

 家族全員の顔を見てホッとした顔をして、お姉様、お兄様、私と順番に抱きしめ、最後にお母様をぎゅっと、力強く抱きしめた。

「大丈夫かい?」

 ええ、と声をこぼしたお母様の頬をお父様が両手で包んでいた。

 ジョージお兄様の膝の上でオーちゃんとお話ししていた私には、お母様が泣いているように見えた。


 お父様が私とお兄様の前に来て、私とオーちゃんと同じ目線になるよう片膝をついた。

「ルシル、オーちゃんを…彼をお父様に紹介してくれるかい?」

 うんいいよ、と頷き私はお友だちのオーちゃんですと紹介した。


 オーちゃんはお父様をじぃっと見つめると口を開いた。あっと口を開いた。その間、お父様は頭を下げていた。

「お前、リシュリューんところの坊主か」

「はい。ご挨拶させていただきます。今はユリアと結婚し、ベンティンク家に」

「堅苦しいのは好きじゃねえから、やめろ。今はルシルんところにいるしな。そもそも今の俺はなんもできねー」

 ふんっと鼻を鳴らしそっぽを向くオーちゃん。

 はっと息を吐き出し、お父様が答える。

「そうか。それでは、家族の一員として関わらせてもらうよ」

 問題ないとしたのか、その答えかのように首を縦に振りニカッと笑った。

 その姿を見て、ジョージお兄様から私へと感じていた身体の強張りが抜けた。

 違和感を感じて、下からお兄様を見上げるといつもの明るいにっこりとした笑みを浮かべていた。


 立ち上がったお父様は家族全員とウィル、リーサに向け伝えた。

「フレイアが屋敷に戻ったらすぐにハーベストへ立つ。準備をしておいてくれ」

 その答えを受け、リーサが失礼いたしますと声をかけ外の使用人に伝えるため駆けていった。

 リーサってあんなに走れるんだな〜と思った。

 お父様とウィルは屋敷を不在にする間の話をすると言って、そそくさと出ていった。

 私はオーちゃんの猫っ毛のようなしっぽの毛を触りながら質問した。

『オーちゃんも一緒に来てくれる?』

 キョトンとした顔をしてニカッと笑った。

「ルシルの友達だから行くに決まってんだろ」

 ふふっと微笑みあっていると、私を膝の上に乗せているジョージお兄様が口を開いた。

「僕もオーちゃんと呼んで構わない?」

 私も!とソフィアお姉様も横から尋ねた。

「ルシルの兄貴と姉貴なんだから当たり前だろ」

 言葉は少しぶっきらぼうだが、子どもたちへ柔らかい笑みを浮かべた。


「オーちゃんもう一つ質問させて欲しいんだけど。……大お祖母様は、大丈夫なの?」

 大丈夫と言う意味がわからない私は、質問を似てきたお兄様を見ながら、頭にはてなを浮かべた。

「その話か。まあ気になるよな、この話になれば。詳細はお前らには伏せるが…マリアは強いから大丈夫だ。ま、だがあいつも結構なババアだからな」

 はははとオーちゃんが目を細めて笑った。

 そうなのか、と軽く息を吐きお兄様は笑みを浮かべる。

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