おまけ3 新婚…… だもんね!

 ◇


 

 あぁ……


 凄く良かった……


 んふっ…… これで本当の意味で『身』も心もヨウのものにされちゃった気分……




 焦らされてお腹ペコペコになったヨウは、直前になって包装するものが無いのに気が付いた。

 少し慌てていたが、もう食欲を抑えられなくなったヨウは…… あたしのおねだりがトドメとなって、初めての踊り食い……


 生食チンアナゴがお口の中でピチピチと暴れるように踊って…… 凄かった。


 更に脂の乗ったトロがアツアツのおこめの上に乗って…… トロ握り…… いや、押し寿司って感じかな?

 逃げられなくて苦しいくらいにギュッと押し潰されて……


 でも…… 『ああ、食べられている』って感覚が…… たまらなかった。


 そして…… 最後に大量の生シラスを口いっぱいに食べさせられて…… んふふっ


「はぁっ、はぁっ…… ユア……」


 ヨウ…… 満足した?


 誰にも食べさせない、俺だけのものだ! って伝わるくらい、ギュッと押されて…… 

ああ、これであたしは完全にヨウのものになったと実感出来た。


「ユア……」


 えっ? まだ食べたいの? ……もう、ヨウったら。


 はい、どうぞ…… 好きなだけ、召し上がれ…… んふふっ!



 ◇



「ヨウぅ…… んふふっ!」


 初めての経験だが『ガッツリ食べた』って感じがして欲が満たされた気がする。

 それに…… ユアにも満腹になるくらい食べさせて…… 


「ユア……」


 最後まで食べてくれたユアに、感謝の気持ちを込めて、さっきから抱き締めながら何度もキスをしている。


「あたし、ヨウのお嫁さんにしてもらえて幸せよ……」


「俺もユアと結婚出来て凄く幸せだよ」


 そして、満腹になった俺達は、しばらくベッドの上で横になりながらイチャイチャと過ごし……



 …………

 …………



 新婚旅行の延長戦となった『鬼ヶ島』での二泊三日。


 一日目に『生食』を経験してしまった俺達は、タガが外れて暴飲暴食を繰り返した。


 寝室、浴室、リビング、しまいにはビーチでもパクパクパクパクと『食事』をして、あっという間に時は過ぎてしまった。


「ヨウ…… んふっ」


 時間的にも最後の食事を終えた俺達は、色々と後片付けをしていた。

 

 もうしばらく食事はいいかな? ってくらいいっぱい食べたので大満足、あとは…… なるようにしかならないよな。


「こればかりは授かり物だからね…… んふっ、でも早いか遅いかだけの話よ、あたし達の子供を早く見たいっていう親戚もいたし、授かったら嬉しいでしょ?」


「うん、もちろん嬉しいよ、ユアと俺の子供だからね」


「んふふっ…… じゃあ帰ってからも…… いっぱいしましょうね」


「う、うん……」



 ◇



 あぁん、クセになっちゃうかも…… 

 だって、いつもよりもガツガツ食べるヨウ…… 凄いんだもん。


 んふふっ…… 授かるまでは好きなだけいいから…… これからも二人で仲良くいっぱい食べましょうね。



 そして、ある程度片付けをしたあたし達は、迎えに来たヘリコプターに乗り、島を離れて二人の家へと帰り、それから楽しい新婚生活をスタートした。




 ◇



 新婚旅行を終えて、二人の生活を初めてもうすぐ二ヶ月。

 ユアも仕事に復帰して、忙しいながらも俺達は幸せな生活を送っていた。


 ちょっとした喧嘩をしたこともあったが、夜には一緒に寝て仲直り…… それ以外では家族や友達に呆れられるくらい仲良くやっている。


 そんなある日……


「んふふっ…… おかえり、ヨウ」


「ただいま、朝、体調悪いって言ってたから心配してたんだけど、良くなったの?」


「ううん、ちょっと調子は悪いわ」


「なら何でそんなにニコニコして……」


 すると、ユアは後ろに隠し持っていた何かを俺に見せてきた。


「じゃじゃーん!! ヨウ、デキちゃったかも!」


「……えっ?」 


 これ…… 見たことあるぞ! たしか妊娠検査薬…… しかも、この印が出ているということは、ユアの言う通り……


「えぇっ!? ちょ、ちょっとヨウ! 大丈夫!?」


 あ、あはは…… ビックリし過ぎて腰が抜けたみたいになっちゃった……


「もしかして…… 嬉しくなかっ…… あっ!」


 心配して覗き込むように俺を見ているユアの腰に、思わずしがみついてしまった。


「うぅぅ…… おめでとう、ユアぁぁ……」


 大切な俺のお嫁さん、ユアのこのお腹に俺達の赤ちゃんがいると思ったら…… うぅぅ…… 感動して涙が出てきたよ……


「ちょっと! まだ病院に行ってないんだからハッキリとしてないのに…… んふふっ、もう、ヨウったら気が早いんだから!」


「だってぇぇ…… 俺達の赤ちゃんが…… 来てくれたと思ったらぁ…… うぅぅ……」


「んふふっ…… 情けない声出さないの! ……でも、ヨウがこんなに喜んでくれたら、お腹にいるかもしれない赤ちゃんも嬉しいと思うわ」


「ユアぁぁ……」


「んふふっ、明日病院に行ってくるから、結果が分かったら連絡するわ」


「うぅっ、うん……」




 そして……


 次の日、会社でソワソワしながらユアからの連絡を待っていたら


『やっぱり妊娠してたわ! だいたい六週目くらいじゃないか、だって!』


 ユアからの妊娠報告があり、俺は思わずデスクからジャンプしそうな勢いで立ち上がってしまった。


「大倉くん、どうしたんだい?」


 ユアが俺達の子供を妊娠した! と叫びたかったが、俺はそれをグッと堪えて


「……いえ、ちょっと足をぶつけちゃって」


「……そうかい、気をつけるんだよ?」


「はい、すいません」


 ああ、早く帰ってユアを抱き締めたい!

 とりあえずお礼を言わないとな、あっ、お互いの両親にも報告しないと…… いや、ユアに詳しい話を聞いてからにしよう! 


 あー、赤ちゃんかぁー! 男の子かな? 女の子かな? ユアに似てくれたらいいけと、俺に似てぽちゃぽちゃしたらどうしよう! ……それはそれで可愛いからいいか! 名前も決めないとなー! 


 これから忙しくなるぞー! 


 頑張って働いて家族を養わなきゃいけないし…… あっ! それよりもユアの体調を気にかけないと! 体調悪そうにしていたもんなー!



「……部長、大倉のやつ、さっきからブツブツうるさいんですけど、それに急に気持ち悪い笑顔を浮かべたりして……」


「……新婚で浮かれてるんだろう、ほっときなさい」


「チッ! 幸せそうな顔しやがって、リア充め!」



 …………


「た、た、ただいまぁーー!!」


「あら、おかえりヨウ、今日はいつもより早いわね」


「ユ、ユア!? 何してるんだよ!」


「何って…… 晩ごはんの準備だけど……」


「お、俺がやるからユアは座ってて! 赤ちゃんがお腹にいるんだから!」


 お腹の赤ちゃんに何かあったら大変だ!


「料理くらい大丈夫だから! ほら、早く手洗いうがいしてきなさい!」


「えっ? あっ、うん……」


「もう、妊娠したからって心配し過ぎよ、気を付けなきゃいけないこともあるけど普通に生活出来るんだから」


「そ、そっか……」


「ふふっ、もう、しっかりしてよね…… パ・パ!」


「……うん!」


 そう言いながら優しく微笑むユアの顔は……


 美しくも凛としていて大人の女性…… いや、もう既に母親のような顔になっていた。

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