おまけ 新婚旅行
新婚旅行として俺達が訪れたのは、京都、大阪、東京と修学旅行で定番のような場所だった。
京都では一日、バスツアーで有名な観光スポットや寺などを巡り、大阪では食べ歩きをしながら、あの橋で有名な看板と同じポーズで写真を撮ったりもした。
東京では人の多さに驚きつつも、ユアが服を買ったり、家に置くおしゃれな雑貨を二人で選びながら見て回った。
そして夢の国まで足を伸ばし、二人で一日遊んでクタクタになりながら泊まる予定の隣接するホテルに帰ったりと四泊五日のハードスケジュールな中、新婚旅行を楽しんでいた。
「んふふっ…… ヨウ……」
もちろん新婚旅行だ、お互いに盛り上がって夜は…… とても新婚らしい夜を過ごさせてもらったよ。
『あ・な・た…… んふふっ……』
積極的な可愛いお嫁さんにアレコレと……
『んっ…… ヨウ……』
お返しに俺もアレコレと…… うん、とにかく、より仲良くなったのは間違いない。
「あの…… ユア? こんなの聞いてないんだけど……」
「うん、言ってないもん! んふふっ」
そして最終日、飛行機に乗り地元の空港に到着したと思ったら…… 空港で待ち構えていた謎の黒いスーツを着た人達にヘリポートまで案内されて、俺達はヘリコプターに乗せられた。
どうしてこうなった……
◇
んふふっ…… 二人の新婚旅行……
高校生の時に行った修学旅行と似たような場所を巡ったが、思い出をすべてヨウで埋めつくされ上書きをされた。
……本当に修学旅行はつまらなかった。
もちろん美々や麗菜、千和と巡った楽しい思い出もあるが、あたしの悪い噂を信じた変な男達にことごとく楽しい旅行を邪魔をされたの。
美々達が守ってくれたから何もなかったが、楽しい思い出を汚されたようでずっと心残りになっていた。
あの頃はまだヨウのことを好きになってなかったし、もし修学旅行中、ヨウと一緒にあちこち見て回れたら幸せだったのに…… という思いがずっとあって、新婚旅行は海外ではなく国内にしてもらった。
でもぉ…… んふふっ! 想像以上に上書きされちゃった。
隣を見ればに愛する人がいるってこんなに幸せなのね……
しかも夜は更に愛し合って…… んふふっ!
ヨウったら真面目だからキチンと加工しちゃうんだから…… 生でも美味しいよ? って何度もおすすめしたのに……
ヨウがあたしを大切に思ってくれているのは嬉しいわよ? でも、結婚したんだから…… ねぇ?
でも真面目なヨウのことだから新婚旅行中でもしっかり加工してから『食事』をするだろうと思っていた。
んふふっ、ここまでは想定内よ!
でもぉ…… 今から行く場所ではどうなるのかしら?
あたし達が今乗せられているヘリコプターは千和の家族、
そして向かう先は…… 豪華な別荘がある小さな島。
一応何かあれば近くの島に誰かがいるみたいだけど、基本誰もいない無人島。
千和も新婚旅行的な感じで今から行く無人島に来たらしいんだけど、そこで夜な夜な『生おだんごパーティー』を開催していたって話をしてくれた。
『えへへっ、あっ、そうだ! 唯愛ちゃんも新婚旅行でその島に行ってみる? 葵さん、いいよね?』
『いいですわよ! どうぞ好きに使って下さいまし! ふふっ、わたくし達もそこで……』
そう言いながら二人はお腹をさすって自分の子供達を微笑みながら見つめていた……
つまり! ……そういうこと、よね?
んふっ、んふふっ! いいよね? だって、あたし…… ヨウのお嫁さんだもん。
授かるかは分からないしとりあえず練習ってことで……
あとはどうやってヨウをその気にさせるかが問題よね。
ヨウったら何事も慎重だから…… 結婚前もあたしの『お礼』をあれだけ耐えていたし…… そこがまた可愛いんだけど。
誠実なのかな? それだけちゃんとあたしを大切に思ってくれていたってことで…… 許してあげるわ!
結局何が言いたいのかというと……
あたしは新鮮なものを『生』でたーっぷり食べたいの! んふふっ、無人島で絶対に食べちゃうんだから!
◇
ヘリコプターが着陸した場所は…… 豪邸が一軒、中心にあるだけの小さな島だった。
「大倉様、鬼ヶ島に到着しました」
お、鬼ヶ島!? 物騒な名前だな!
んっ? 豪邸の入り口の横にある門柱に付いている家紋みたいなマーク、どこかで見たような……
「ここは鬼島家が所有する無人島にある別荘になります、三日後にまた迎えに来ますので、それまでごゆっくりお過ごし下さい、食料や設備の説明はリビングにパンフレットを作って置いてありますのでそちらをご確認下さい、それでは失礼します」
「んふふっ、ありがとうございます!」
えっ? 『鬼島』って…… あの鬼島!?
俺の会社とユアのアパレルショップの親会社で、他にも色々経営している……
「ちょっと…… あっ……」
気になるから黒スーツの人に聞こうと思ったら、ヘリコプターに乗り込んじゃった。
あー…… 本当にこの無人島に置き去りなのね……
「ヨウ! この別荘を自由に使っていいみたいだから、早速中に入ってみましょう!」
そして、混乱したままユアに手を引かれ、俺達は別荘の中に入っていった。
◇
わぁっ! 凄くおしゃれで高級そうな家具ばかり!
何人で使うのか分からないくらいの大きなテーブルとソファー、食卓テーブル。
リビングの大きな窓からは綺麗な海が一望出来るし、ベランダもあってイスも並べて置いてある。
しかもプライベートビーチだから人目も気にせず泳げるし…… 何よりビックリしたのは寝室に天蓋付きのベッドがあったこと!
ここでヨウと…… んふふっ! お姫様になった気分を味わえるかも!
『ユア、俺のプリンセス……』
『あぁん、王子様ぁ……』
そしてあたし達はお世継ぎを作るために…… お餅つき! んふふっ!
「ひぇぇ…… 食器も高級そうだから使うのが恐いなぁ……」
「大丈夫よ! 葵さんには『別荘にあるものは気にせず使って下さいまし!』って言われてるから!」
「葵さん? 鬼島…… えっ!? もしかして葵さんって、うちの会社の社長じゃないの!?」
「そうよ、気付いてなかったの? ヨウの会社の社長で、千和の家族よ」
「柴田さんの家ってどうなってるの? お団子屋さんに鬼島グループの社長がいるなんて……」
「とにかく! 許可は下りてるからぁ…… んふふっ! のんびり過ごしましょ?」
ふふっ…… ヨウはのんびりとしていられるかしらね?
あたしが考えた作戦……
『ヨウも焦らせば狼になる』作戦、開始よ!!
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