最終話 二人で幸せになろう

「おめでとー! 唯愛、凄く綺麗よ!」


「唯愛さん、おめでとうございます」


「美々、麗菜、んふふっ、ありがと」


 結婚式のあとはチャペルがある建物の中の会場で披露宴を行う。

 まあ、式に呼んでいる人数も少なくしたし規模的には小さいが、こうして友人達に直接お祝いしてもらえるのは凄く嬉しい。


 今もユアの友人、美々さんと麗菜さんがユアの横に来て何枚も写真を撮っている。


「オーくん、唯愛を幸せにしてあげてね!」


「うん、頑張るよ」


「美々、大丈夫よ、もういーっぱい幸せにしてくれているから、んふふっ!」


「これでもう毎日のように惚気のメッセージが来ることは無さそうですね」


「麗菜、安心して、これからは二日に一回くらいにしておくから」


「お、送ることは送るんですね」


 はははっ、ごめんね二人とも…… これからもよろしく。


「オーくん、おめでとう!」


「あっ、さっくん、今日は来てくれてありがとう!」


 若瀬くん…… さっくんは俺達の高校時代のクラスメイトで、俺の親友。

 今は就職のために別の地方に引っ越してなかなか会う機会はないが、メッセージのやりとりはしていた。


「は、初めまして…… 」


「オーくん、この娘は俺の婚約者の詩織しおり、俺達ももう少ししたら結婚するから、その時はよろしくな!」


「ああ、前に言ってた…… 初めまして、さっく…… 若瀬くんの友人の大倉陽です」


「よ、よろしくお願いします、結婚おめでとうございますぅ」


「はははっ、ごめん、詩織は恥ずかしがり屋だから」


 そしてさっくんと少し話をして、写真を撮り……


「陽くん、久しぶり! 結婚おめでとう」


「あっ、総一そういち先輩! お久しぶりです!」


 次に来たのは高校の先輩の総一先輩…… 今は鬼島きじまって名字になったんだっけ?


 一学年上の先輩で、美化委員をやっていた時にかなりお世話になったんだ。

 あの頃から頼まれれば断れない性格だったから…… 総一先輩には色々手伝ってもらったなぁ。


 で、両隣に居るのは…… 総一先輩の奥さんとその母親…… のはず。

 そして母親の方に抱っこされているのが総一先輩の息子らしいのだが……


「あー…… 左にいるのが美海みうで、右にいるのが晴海はるみさん、そして晴海さんが抱いてるのが息子の大海たいがだよ……」


「美海です、結婚おめでとうございます」


「晴海です、結婚おめでとうございます」


 んんっ? 美海さんの母親って聞いていたけど、ずいぶん若々しいからお姉さんの間違いだったのかな?

 それに奥さんは美海さんと言っていたような気がするんだけど……


「まぁま、まぁま!」


「あらあら、どうしたの大海? うふふっ」


 お姉さんを『ママ』って…… 総一先輩の息子…… だよね?

 いや、頭がおかしくなりそうだから考えるのはやめよう。


 その後もお互いの会社の同僚や先輩、あとは親戚なども入れ替わり立ち替わり来てくれて話をしたり写真撮影をしたり、俺達を祝福してくれた。


「んふふっ! こんなに『おめでとう』って言ってもらえて嬉しいわ……」


「うん、みんなに感謝しないとね」


 あの時、親父と母さんが援助すると言ってくれなかったら、こんなに幸せそうな花嫁姿のユアを見ることは出来なかったな。


 本当に…… ありがとう。


 その後、ケーキ入刀や二人の思い出が会場のスクリーンで写し出されたりとみんなで盛り上がりながらもプログラムは順調に進行して……


「それではここで、新婦の唯愛さんからご両親に感謝のメッセージを伝えてもらいます」


 披露宴ももうすぐ終わりを迎えるという時間になり、俺達は並んで立っているお互いの両親と向かい合いながら、事前に用意していた感謝の手紙をユアが読むことに。


「パパ、ママ、二十一年間、大切に育ててくれてありがとうございます…… パパ、小さい頃からちょっぴりワガママなあたしにいつも優しくしてくれてありがとう、お姉ちゃんと二人でパパにイタズラをしても、少し怒りながら笑顔であたし達を抱き締めてくれたことを今でも忘れずに覚えているよ」


 …………


「ママ、いつも友達のようにおでかけしてくれたり、料理も教えてくれてありがとう、おかげでヨウさんと毎日楽しく一緒にご飯を食べることができてるよ、時には悪いことをしたらパパよりも厳しく叱ってくれたり、でものびのびと育ててくれたおかげで今のあたしがあると思っているわ」


 ユアのメッセージを聞いて、ユアの両親が涙を流している…… 特に優次郎さんなんかもう…… あっ、麻里愛さんに鼻水を拭かれてる。


「パパ、ママ、あたしは今日から、隣にいるヨウさんと手を取り合って二人でこれからの人生を歩んで行きます…… そして…… ヨウさんのお父さん、お母さん、あたしを家族として迎え入れてくれてありがとうございます、お互いの両親をお手本にしてあたしたちも幸せな家庭を築いていきたいと思ってますので、これからも末永くよろしくお願いします……」


 ユア…… ああ、ハンカチハンカチ…… うぅっ、俺も涙が出てきたよ。


 会場にいる人の中にもハンカチで目元を拭っている人が見えた。


 そして披露宴も終わりに近付き最後の挨拶…… ユアと一緒に練習したから大丈夫……


「本日は私達二人のためにお集まり頂きありがとうございました、皆様のおかげで今日、無事結婚式を行うことが出来ました、感謝でいっぱいです、まだまだ未熟な二人ですが、ユアさんと一緒に、夫婦として日々成長して幸せな家庭を築いていきたいと思ってますので、これからもよろしくお願いします、本日は本当にありがとうございました!」


 言い終わると会場から大きな拍手が。

 そして俺の腕に添えていたユアの手にギュッと軽く力が入り……


「絶対に幸せになろうね、ヨウ」


「うん、二人で幸せになろう」


 こうして…… 俺達の結婚式、披露宴が終わりを迎えた。


 最後に来てくれたゲストの方々を見送り、俺達は着替えのためにそれぞれの控室に戻った。




「はぁぁ…… 終わっちゃったよ……」


「んふふっ、楽しかったわ……」


 結婚式を終え、疲労感はあるが緊張していたせいか、高揚感というか興奮した状態が続いているような気がする。


 私服に着替え終わったユアが俺の隣へ来ていつものようにピッタリとくっついてくる。


「本当、あなた達は仲が良いわねぇ」


「ふふっ、これからも仲良くやっていけそうね」


 母さんと麻里愛さんが少し呆れながら笑顔で俺達を見ている。


「うぅぅ…… 唯愛、良かったなぁ、うぅっ、良かったぁ……」


「パパったら泣き虫なんだから、えへへっ、私達の時もそうだったよね」


 優次郎さんはずっと泣きっぱなし、咲希さんが隣で慰めながら笑っている。


「夏輝くん、今度一緒に釣りでもどうだい?」


「凰祐さん、ぜひ行きましょう!」


 親父と夏輝さんは意気投合して楽しそうに釣りの話をしているし……


「んふふっ、じゃあ明後日からは楽しみにしていた新婚旅行ね!」


「明日はゆっくり休みながら準備しないとね」


 俺は貯まっていた有給を使い、ユアはパープルサウンドがリニューアルオープンするまで、代わりに新しい販売員さんがヴァーミリオンで働き始めたみたいで、長めに休みがもらえたらしく、その期間で新婚旅行に行く予定を立てた。


 海外なんて良いんじゃないかと考えていたけど、ユアの希望で国内であちこち巡る予定になっている。


 行き先はまるで修学旅行で行くような所ばかりなのだが、これには理由があって


『修学旅行で良い思い出がないから、ヨウと新婚旅行して思い出を上書きしたい!』


 という理由らしい。


 ユアは修学旅行中、『頼めばヤらせてくれる』というデタラメな噂のせいで変な男に絡まれてばかりでイライラした思い出しかないとか……


 ちなみに変な噂を流した犯人は、クラスメイトだったあのギャルグループの内の一人らしい。


 なんでもその人が好きだった人がユアに気があったらしく、フラれた腹いせにギャルグループ内でデタラメを言っていたのがどこからか漏れて、いつの間にか『頼めばヤらせてくれる』という噂になり…… おかげでユアは高校時代に嫌な思い出しかなく、軽く男性不信になったとか……


 まあ、そんな事はどうでもいい。

 これからは下らない噂に振り回された過去を忘れてしまえるくらいユアには幸せになってもらわないとな。


「んふふっ、ヨウ、愛してるわぁ……」


「うん、俺も愛してる、ユア……」


 そして俺達は、また永遠を誓い合うように長い長いキスをした。





『頼めばヤらせてくれると噂だった黒ギャルビッチが、なぜか俺に色々頼んでくる』



  ー完ー ???

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