息子はやらん!!
ヨウの実家かぁ…… ドキドキする……
お義母さんとはランチに行ったりと仲良くさせてもらっているけど、お義父さんとは初めましてなのよね。
「ユア、どうしたの?」
『お前に息子はやらん!』って言われたらどうしよう…… 不安だわ…… んっ。
「ちょっ…… またするの?」
心を落ち着かせるためにビッツを一口。
おこめで包むと刺激的な味になって、しかもアツアツになっちゃうの…… んふふっ
最近は毎日のように、ちょっと食べ過ぎなくらい二人で『食事』をして幸せいっぱいだし……
大丈夫、よね…… ヨウのことを誰よりも大切にするって気持ちを伝えれば…… 許してもらえると思う。
「はっ、激し……」
んふっ、まるで餅つきしてるみたいね。
ふわふわモチモチなヨウに、あたしがペッタンペッタン…… でも、柔らかくなるどころか硬くなってきちゃってるわ!
「ユ、アっ!」
…………んふふっ
◇
ユアの実家に挨拶に行って以降、ユアとの同棲生活が始まった。
今までと変わらないだろ、と思うかもしれないが、そこは…… 気持ちの問題だ。
それにお互いの親に同棲が認められたというのは大きいと思う。
ユアの私物は…… 増えたといえば、あの大きなポゥさんのぬいぐるみくらいかな? いつの間に運んでいたのか、気が付いたら俺の家のあちこちにユアの私物が置かれるようになってたからなぁ。
「んふふっ、はい、飲み物持ってきたわよ」
さっき『食事』を終えて、俺達はまったりとした時間を過ごしていた。
「おっ、ありがとう」
お揃いのポゥさんグラスに炭酸ジュースを注いでくれたユアは、グラスをテーブルに置いて、いつものようにぴったりとくっついてくる。
お互いにちょっと『しっとり』はしているが、この後風呂に入るし、ユアだから気にはならない。
「はぁぁ…… 大丈夫かなぁー」
「まだ心配してるの?」
「それはそうよ、だって大切な挨拶だもん」
明日俺の実家に行き、挨拶をしたらその足で二人で市役所に行く予定だから緊張しているのかな? 俺もドキドキしてるけどね。
善は急げということで、俺の両親に挨拶をしたら入籍することに決めた。
そうしたら正式にユアは『大倉 唯愛』になる。
デートの時にユアが冗談で予約した名前が本当になってしまうな。
……冗談? いや、ユアは本気であの名前で予約していたんじゃないか?
いつの間にか婚姻届を取りに行っていたくらいだし……
まあ、幸せだからいいよね?
「ボーッとしてどうしたの? 疲れちゃった?」
「いや、大丈夫だよ」
今日はどちらかというとユアの方が疲れてるんじゃない? ……凄かったし。
「良かったぁ…… んふっ」
寄りかかって甘えてくるユアの頭を撫でながら炭酸ジュースをグッと飲み干す。
肉体的な疲れは多少あるけど、こうしてユアと一緒にいると仕事でのストレスも吹き飛ぶくらい癒される。
こんな幸せな時間がずっと続くよう、これからも頑張るか!
…………
…………
「息子はやらん!!」
……へっ?
「んふふっ、ダメです、貰っちゃいますから!」
……はっ?
険悪な雰囲気…… じゃないんだよ、これが。
日曜日、ユアと二人で俺の実家に結婚の挨拶をしに来たんだけど、突然親父がふざけ始めた。
一応電話で話はしてあったんだけど、まさか『息子はやらん!』と言われるとは思わなかった。
ユアもユアでニコニコしながらいつものように俺の腕にしがみつき、親父に言い返しているし…… どうなってるんだよ。
「はははっ! 一度は言ってみたかったんだよ、うちは子供が陽だけだし、娘じゃなくて息子だからなぁ…… 付き合わせてごめんね、唯愛ちゃん」
「ふふっ、お義父さんったら! お茶目なんですから」
「あなた! もう…… せっかく唯愛ちゃんが直接挨拶に来てくれたのに、ふざけてないでちゃんと話を聞いてあげて!」
「電話で色々聞いていたし、ユアちゃんとは何度も話をしたことがあったから初めましてって感じがしなくてね、つい……」
「ふふふっ!」
ちょっと待って! ……もしかして親父とも連絡を取り合ってたの!?
「陽ちゃん、今更何を言ってるのよ! ほら…… 」
母さん? いきなりスマホの画面を俺に向けてきて、何を見せようとしてる……
うぇっ!? 『大倉家』というメッセージアプリのグループが出来ている! 俺、聞いてないんですけど!
「チャットに参加してないのは陽だけだぞ! せっかく唯愛ちゃんがグループを作ってくれたのに」
……ユアちゃん?
「んふふっ、ヨウに参加してもらうのを忘れてたわ!」
何でそんな重要なことを忘れるんだよ! ……まさか、俺に見られちゃマズイことでも連絡していたのか!?
「マズイことなんてないわよ! お泊まりの許可とか、晩ごはんの献立の相談とかしていただけよ!」
「あと写真を送ってくれたりしたわね」
「陽の寝顔がアップで送られてきた時はビックリしたよ! あははっ」
やっぱり…… 息子の俺より頻繁に連絡取ってた! しかも大した連絡でもないし、まるで『家族』のやり取りだよ!
「唯愛ちゃんが陽を貰ってくれるならひと安心だなぁ! 陽、唯愛ちゃんを大切にするんだぞ? もし泣かせるようなことがあったら…… 分かってるんだろうな!」
えっ? 俺…… 息子、だよね? 両親とも唯愛の味方なの?
「んふふっ」
策士ユア…… 親父まで手中に収めていたとは…… 完敗だ。
いや、ひょっとすると先輩が言ってた通り俺は勝ち組なのでは?
「ふぅ…… さて、じゃあ二人とも、これからの大事な話をしようか」
親父? 何だよ急に真面目な顔をして
「そうね……」
母さんまで…… 一体何の話をするんだ?
「唯愛ちゃん、本当に陽でいいんだね?」
「はい! あたしはヨウじゃなきゃダメなんです! んふふっ……」
コラッ! 真剣? な話をしてるんだから、テーブルの下で太ももをナデナデしない!
「そうか…… それなら安心だ、ありがとう唯愛ちゃん」
……親父? 母さんをチラっと見て頷いているけど、どうしたんだ?
「唯愛ちゃんが陽ちゃんとずっと一緒にいてくれるって決めてくれて私も嬉しいわ、今まで陽ちゃんにはひとりぼっちで寂しい思いをさせることが多かったからね、特に高校生になってからは…… 留守番ばかりさせて」
中学卒業まで両親は共働きだったし、高校生になってから親父は単身赴任になってほとんど家に居なかったもんな。
母さんは母さんで出勤日数を減らして、親父の単身赴任先に何度も通ったり泊まったりして家を空けることが多かったし、ひとりぼっちといえばひとりぼっちだった。
母さんがずっといなかったわけでもないし、高校生だった俺的には自由にのびのびと生活出来て良かったんだけどね。
「それでね、お父さんと話し合って決めたの…… この通帳には、陽ちゃんの将来のために貯めていたお金が入っているわ、これをあなた達に渡すから、このお金を使って……」
…………
…………
そして……
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