お昼の続きをしよ?
結局、ユアとの交際を始めたという挨拶のつもりで訪れたユアの実家だったが、何故か婚姻届に記入させられ、話が飛躍しユアとの結婚挨拶みたいになってしまった。
ちなみに晩ごはんをご馳走になるも、はしゃいだユアの父、
あと、本当は咲希さんの旦那さんにも挨拶したかったのだが、仕事で遅くなるというので後日挨拶することとなった。
「ごめんね、パパったらあんなはしゃいじゃって…… 恥ずかしいわ」
「俺達の交際…… いや、婚約をあんなに喜んでくれるとは思わなかったから、安心したし嬉しいよ」
余程ユアの将来が心配だったのか、上機嫌で笑っていたかと思えば最後は嬉しさのあまり号泣していたくらいだからなぁ。
ユアはどれだけ心配をかけていたんだろう。
「一時期ジムに行くのにハマっちゃって、結婚どころか彼氏も作ろうとしてなかったからパパがかなり不安がっててねー…… あたしはヨウと再会するために頑張ってただけなのに」
「あ、あははっ……」
親が心配するほど格闘技にハマってたというのもどうかと思うが…… そのおかげでユアが何事もなく済んで、こうして腕を組んで歩いてられるんだから結果は習っていて良かったのかもしれない。
「それよりも…… んふふっ、帰ったら…… ねっ? お昼の続きをしよ?」
続き……
「大丈夫なの? その…… 痛みとか」
「うん、多分大丈夫…… だから格闘技と一緒で、いっぱい鍛練しないと! んふふっ」
元々間違ったアドバイスにより鍛えられていた小技を含め、更に鍛練されたら負けちゃうよ! 色々な意味で……
「お義父さんとお義母さんにも挨拶に行きたいし、パープルサウンドの指導もあるし、いっぱいイチャイチャもしないといけないから…… これからは忙しくなりそうね!」
「うん…… 頑張ろうね」
なんだかんだイチャイチャは毎日していたと思うんだけど、まだ足りないみたい。
そうだ、俺の両親にもユアとの事を直接伝えないと…… でも、母さんは実家にいるけど親父は単身赴任中なんだよなぁ。
そして、歩いて二十分もかからず自宅に帰って来た俺達は……
「んふふっ……」
早速、足りない分のイチャイチャを補うことにした。
◇
はぁ…… やっぱりトントロトロトロ肉巻きおにぎりは…… んふっ、幸せ……
お互い味見をしてタレを作り、茹でたりこねたり、チンしたりと様々な調理方法を試しながら二人で料理を完成させる。
お互いの協力なくして完成しないこの料理を二人で美味しく頂いた後は…… んふふっ
「ヨウ……」
ごちそうさまのキスをして、まったり横になって過ごす。
「ユア、寒くない?」
「うん…… ヨウがぽかぽかしてるから大丈夫……」
ヨウに頭を撫でられながらぴったりとくっつき、食事の余韻に浸るこの時間が大好き……
「…………」
「どうしたの?」
「……いや、ユアが可愛いから見てただけ」
「んふふっ! ……んーっ」
きっかけはあまり良いとは言えないけど、結果的には良かった。
もし鎌瀬の件に巻き込まれてなかったら、ヨウがこんなに独占欲を出すことはなかったと思う。
だからパパとママにも挨拶してくれたし、婚姻届のことも驚いてはいたけどちゃんと記入してくれた。
今だって…… 『誰にも渡さないぞ』という気持ちのこもったお肉で包まれて…… んふっ!
そして、ギュッと抱き締められ、ヨウと二人で過ごす幸せな未来を想像しながら、あたしは幸せな気持ちで今日も眠りについた。
◇
「じゃあ仕事が終わったら連絡するから」
「うん…… いってらっしゃい…… ヨウ…… んっ」
「んんっ! いっ、て、ん! き、ま…… す」
ユアも今日は仕事だが、俺より出勤時間が遅いため玄関でお見送りしてくれている。
玄関で何度もいってらっしゃいのキスをされた俺は、少し名残惜しく感じつつもドアを開けて家を出た。
「あたしも仕事が終わったら連絡するから、いってらっしゃーい、んふふっ」
玄関先で小さく手を振りながら微笑むユア。
最近泊まりに来ていた時にも見送りしてくれた日もあったが、今日は少し特別に感じる。
関係をハッキリとさせて色々と経験したからかもしれない…… それに将来の約束もしたからな。
これからも二人で仲良くしていくために仕事も頑張らないと!
……そういえば鎌瀬達はどうなったんだろう?
古江さんからは謝罪の時以来、特に連絡はないし。
心配だなぁ…… ただ古江さんの話だと、鎌瀬達はユアに危害を加えるようなことはもう出来ないらしいが…… 理由がいまいち分からないんだよ。
『鎌瀬達は敵に回してはいけない人に目を付けられたから、目立った行動に出ない』
敵に回してはいけない人って、どんな人なんだ? 裏社会の恐い人とか?
とにかくこの件には俺達のこれからの生活のためにもこれ以上関わらない方がいいと言われて、恐くて追求出来なかった。
俺が一番大事なのはユアだし、気になるからと首を突っ込んでまたユアが危険な目に合っても嫌だから…… 古江さんの『大丈夫』という言葉を信じよう。
そして色々考えながら歩いている間に会社に到着した。
だが、建物の中に入ると何だか朝から慌ただしい……
受付の女性社員はまだ勤務時間前なのに電話対応しているし、走って会社から出て行く営業部の社員もいた。
「おはようございまーす…… って、大庭竹部長? どうしたんですか?」
「大倉くん! ……ここでは話せないからちょっと会議室に行こう」
大庭竹部長まで慌てて…… 何かあったのかな?
そして会議室に入ると部長は出入口のドアの鍵を閉めて、会議室にある机に両手をついてうつ向きながらため息をついた。
「どうしたんですか?」
「参ったよ…… 実は今日付けで鎌瀬が退職したらしい、あの部下二人もまとめて……」
「えっ!? た、退職!?」
「ああ、しかもどうやって手を回したのか…… キチンと退職願が受理されている状態だったらしい」
だって慰労会をしたのは金曜日だよ? あの時は辞める雰囲気なんてなかった、むしろこれからもっと出世しようと意気込んでいたくらいだ、なのに……
「それとは別に、パープルサウンドの経営にも関わる予定だった『URANO』との契約が鬼島会長の一言で突然白紙になって会社中大混乱だよ、まあURANOに関しては理由は分かってるんだけどね」
URANOといったら数年前に鬼島グループの傘下に入って、アパレルブランド関係の店舗の経営管理を任されている会社だったよな? 鎌瀬達の退職と何か関係があるのか……
「ここまで教えておいてなんだが、これは大倉くんは関わらない方がいい話という事で、私が何を言いたいかというと……」
えっ? ぶ、部長? ニコニコしながら俺に近付いて来て…… 何ですか?
「
そ、そんなぁぁぁー!!
鎌瀬…… 許さないぞーー!!
◇
「兄貴……」
「ケンか…… ははっ、しくじったみたいだな」
「チッ! まさか『鬼島の虎』が浦野に目を付けていたとは…… 気付かなかったよ」
「ふん、まあいいさ、浦野のヤロー、変な
「……で? 俺はどうすればいい?」
「ケンも『鬼島の虎』にマークされているかもしれない、だからしばらく浦野の金を使って海外でのんびり休んでいるといい、会社は…… 鬼島グループのお偉いさんに手を回して今日付けで退職扱いになっているから心配しなくていい」
「兄貴…… すまない」
「気にするな、俺達はたった二人の兄弟じゃないか、浦野も今頃大変な事になっているだろうし…… くくっ! ほとぼりが冷めたらまた金持ちを食い物にして楽しく遊ぼうぜ」
「ああ、そうだな…… ふふふっ…… うぐっ!」
「……ケン、その前に病院に行ってこい、腫れてるんだろ?」
「わ、分かってる…… クソッ! あのデカブタ……」
◇
「へっ…… くしゅん!!」
「大倉くん、風邪かい?」
「いえ、別に体調は悪くありませんよ」
「ははっ、あんまり薄着で寝ていたら本当に風邪を引くから気を付けるんだよ?」
…………部長、何を言ってるんですか?
……ユアと一緒だったらとても温かいんですよ? とは言えないよなぁ……
部長はニヤニヤしてるけど。
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