肉巻きおにぎり

 あぁ…… やっとヨウと一つになれた。

 ちょっぴり痛かったけど、幸せな気分……


 本当は焦らずゆっくり、二人の関係をじっくりコトコト煮込んで、ヨウから食べたいと言って欲しかったけど…… あたしが我慢出来なくなっちゃった。


 ……だって『また』あたしのピンチを救ってくれたのよ? 

 

 一度目にヨウに救われて好きになって、再会して大好きになってからの二度目だもん…… んふふっ


 凄く恥ずかしかったけど食欲を刺激して…… お腹ペコペコになったヨウがパクリ、まるで肉巻きおにぎりになった気分だったわぁ……


 トロトロのトントロ肉巻きおにぎり……

 ギュッと包まれてトロトロに…… ふふっ!


 おこめの中に入っているビッツが…… 凄かったの…… 

 肉汁がどんどん溢れてきて、思わずヨダレと大きな声が出ちゃった……


 ヨウも『おいしい、おいしい』って……

 デザートの黒糖まんじゅう二つを交互にパクパク食べて、黒蜜プリンもプリンプリンして…… あぁん! やみつきになっちゃう!


 あたしも最後のデザートとしてホワイトチョコバナナを口いっぱいになるまで食べさせてもらったし…… 大満足。


 初めての『食事会』にしては上出来だったわね! でも『食事』に慣れたらもっと楽しくて美味しくなるって千和達が話していたし…… これからもヨウと二人きりの『食事会』をもっともっとしたい。


「……ヨウ?」


「あ、あのさ…… 大丈夫? 俺…… ユアが初めてだと思ってなくて……」


 ……ヨウもあのくだらない『噂』を信じていたんだ。

 ちょっぴり怒っているけど、疑いは晴らせたわよね? ……ちゃんと疑わしい所を隅々まで調べたもんね?


 でも……  最後は苦しかったなぁ……


 ヨウったら肉巻きおにぎりを作るのに…… ギュッと握り過ぎ!


 トントロでトロトロになる中、強く握られて…… 押し潰されるかと思ったわ!


 でもぉ…… トントロに包まれて、身動き取れないくらい強く握られて…… 意識がフワっとなって…… 


 このまま一つになって、丸ごと食べられちゃうんじゃないかっていうくらい…… 全身でヨウを感じて…… 幸せだった。


 ……クセになっちゃうかも! んふふっ…… また一緒に作りたいなぁ…… トントロ肉巻きおにぎり。


「大丈夫よ…… んふっ、ありがと、ヨウ…… これからもよろしくね?」


「ああ、俺の方こそありがとう、大好きだよ……」


 そして……


 ヨウの腕の中で満腹になった幸せを感じながら……


 ……こうなったからには、まずはママに連絡しないと! 『善は急げ』よ!


 ……そして、あたしは実家にいつヨウを連れて行くかを考えていた。


 

 ◇



「あいたたたっ…… よいしょっと…… んふふっ」


「本当に大丈夫?」


「大丈夫だって! ……もう、心配し過ぎ! ……それよりもぉ、んふふっ!」


 初めての事が終わり、ベッドで横になりながら俺達は休んでいた。


 ユアは俺の腕を枕にしながら甘えるようにくっついてきて、手を握ってみたりキスしてきたりと嬉しそうに笑っている。


 俺も嬉しいし、とても良かったのだが…… ユアが『初めて』だった事に驚いている。


 最近は疑わしいと思っていたけど『ビッチ』と噂されるくらいだから経験はあると思っていた。


 だけど挑んだ結果がこれ…… 

 えっ? じゃあ今までのアレやコレは?

 凄い手慣れた感じで食べたりしてたよね?


「噂を信じてたの!? ショックぅー! ……ふふっ」


「でも、慣れてたでしょ? アレコレ……」


「ああ! あれは千和に教えてもらったの! 『こんな風にして私は彼をメロメロにしたんだよ! えへへっ』って色々と話を聞かせてくれたの! それを参考にして実践したのよ! 上手に出来てた?」


 そりゃあもう、上手だからあっという間に…… って! し、柴田さん!? ナニを教えてるの!? ……噂のこともあって、ずっとユアがビッチだと思い込んじゃっていたじゃないか!


 ……たとえ本当にビッチで、数多くの経験があったとしてもユアを嫌いになることはあり得ないけど、本当に俺で良かったのかな? 


 それに、ビッチなユアに満腹になってもらおうと無我夢中で頑張った結果、ユアにかなり負担をかけちゃったみたいだ。


 最後まで気付かず必死に…… 途中、ユアは苦しかったみたいだし……


「ごめんね、ユア」 


「んっ……」


 そう言って抱き締めると、ユアは嬉しそうに笑って


「もう! 謝るの禁止! ふふっ、それなら『ありがとう、大好き』って言ってくれた方が嬉しい」


「ありがとう…… 凄く幸せだよ」


「あぁん、私も幸せぇー、ふふふっ」


 そして、しばらくベッドでイチャイチャした後、二人でシャワーを浴び、汗や色々洗い流して、リビングでのんびり過ごしていると、俺に寄りかかりながらスマホを触っていたユアが突然……


「ねぇ、お願いがあるんだけど……」


「何?」


「ママが『ヨウに会いたいから実家に遊びにおいで』って言ってるんだけど」


 ユアの実家!? ……いや、いつか挨拶くらいはしようと思っていたけど。


「うん、俺も挨拶はしたいと思ってた」


「ふふっ、じゃあ明日行くって連絡を返しておくね!」


「あ、明日!?」


「『明日、ヨウと一緒に行くから』…… 送信っと! ママにメッセージを送っておいたわ!」


 あ、あ、明日!? ちょっと急というか、俺にも心の準備ってものが必要なんだけど。


「ダメ? ねぇ、お願ーい! あたしの実家に一緒に行きましょ?」


 いつもの甘えるようなユアの『お願い』だ…… 俺がユアに頼まれたら断れないことを知っていて言ってるな?


「じゃあ…… 手ぶらで行くのは嫌だから、明日のためにお土産でも買いに行かないと」


「そんなの気にしなくていいのに! ……あっ! じゃあ明日実家に行く前に千和の家の『お団子』買ってから行きましょ? ちょっと遠回りだけど千和にお礼も言いたいしちょうどいいわ!」


 柴田さんの家のお団子かぁ…… 最近ローカルだがテレビでCMも流れているし、若い女性に人気らしく行列が出来ていたのがニュースでやってたな。

 そんな人気なら美味しいんだろうし、ユアの両親も喜んでくれるかな。


「うん、じゃあそうしよう」


「ふふっ、楽しみー!」

 

 明日か…… 緊張するなぁ。


 でも、遊びじゃなくて真剣に交際を始めたということはちゃんと伝えないとな。

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