ねぇ、もう一回!
「んふふーっ、ねぇ、ヨウ?」
「な、何かな?」
「……ちゅっ」
……また!? 昨日の夜から何回してるの?
昨日の夜、ついにユアに告白をして、ようやくと言っていいくらいだが俺達は正式に恋人同士になった。
それからすぐにファーストキスも経験して……
「あぁん、幸せ…… ねぇ、もう一回! んー、ちゅっ」
あはは…… 朝、目覚めてから俺達は何度もキスをしている。
いや、キスよりも凄いことをしてるだろ! とツッコまれそうだが、ユア曰く『それはそれ、これはこれ』……らしい。
でも…… ユアは酔っ払っていたけど、ちゃんと記憶がハッキリしていて安心した。
ちなみにこんなにのんびりと過ごしている理由は、今日は二人とも仕事が休みになったからだ。
昨日の事で俺達の心配をした大庭竹部長と古江さんが電話してきて、急遽俺達二人を休みにしてくれたんだ。
有給みたいだし、昨日はどっと疲れたから助かったのだが、理由を聞こうと思ったら……
…………
朝早く、古江さんが俺の家に訪ねてきて土下座をして謝られた。
何故謝っているのか古江さんの話を詳しく聞くと、古江さんはユアが危険な目に合う可能性があった慰労会に誘ってしまった事を悔やんで謝っているみたいだ。
そして更に詳しく話を聞くと、どうやら鎌瀬は裏で悪いことをしているらしく、内容は聞かなかったが『女の子を使ってお金を稼いでいた』らしい。
鎌瀬の動きを探るためにと、そして以前巻き込まれて音信不通になった職場の後輩を行方を調べるために参加した慰労会で、まさかユアが巻き込まれるとは思っていなかったようで『怖い思いをさせてごめんなさい』と何度も頭を下げていた。
俺は鎌瀬がそんな人物だと知っていながらユアを慰労会に参加させ、危険な目に合わせたことに怒りを覚えたが……
「亜梨沙さんが何か思い詰めていたのは知ってましたし、まさかあたしが狙われるとは思ってなかったんですよね?」
「うん…… 本当にごめんなさい」
「謝らなくても大丈夫ですよ! んふふっ、身を守るために格闘技も習ってましたし、あたしには…… 何があっても守ってくれる素敵な『彼氏』がいますから! ふふっ、んふふー! 『彼氏』が…… ふひっ!」
「「気持ち悪い笑い方……」」
「あぁっ! 二人ともヒドい! 特に…… ヨウ! 可愛い『彼女』に向かって、気持ち悪いはないでしょ!? ……バカ!」
「ご、ごめん……」
「んふふっ…… チュウしてくれたら許してあげる!」
「……後でね」
「はーい! んふふっ!」
「いつの間にか二人がバカップルになっているし…… でも、何もなくて本当に良かった……」
…………
そういうわけで俺達は今日休みなんだ。
古江さんに関しては…… ユアが許すのなら俺がとやかく言うことはない。
ただ……
「ユア、格闘技を習っていたって本当?」
「そうよ! 高校時代、ヨウに助けてもらったでしょ? ……あの時に、自分の身は自分で守らないと! って思って、近所のジムに通い始めたの」
へ、へぇー…… 道理で力が強いというか、身のこなしが普通じゃなかったんだな…… 特にベッドの上で。
そういえば昨日、個室で倒れていた二人もユアにやられたとか言っていたような……
「どんな格闘技を習っていたの?」
「うーん…… それがよく分からないのよねぇ……」
分からないって…… あまりメジャーじゃない格闘技なのかな?
「サンドバッグをパンチしたりキックしたり……」
キックボクシングとか? いや、メジャーだよな。
「変な重い甲羅? みたいなのを背負ってランニングマシンで走ったり……」
こ、甲羅!? 何それ……
「イメージトレーニングだって言われて、カマキリと戦わされたり……」
カマ…… キリ?
「あとは…… 絶対にメロメロにして逃がさないための四十八個の奥義を教えてもらって……」
格闘技…… だよね? えっ? 何の話をしてたっけ?
「センスあるって褒められたのよ! ふふっ ……あっ! 先生は女性だから心配しないで! ふふっ、凄く強いのよ先生…… 結婚しているんだけど、いつもジムに行けば旦那さんとスパーリングしてるの! ……でもいつも寝技をかけているタイミングで見かけるのよねぇ、どうしてかしら?」
うん、怪しい!! ……でも、それで実際に強くなったのなら凄いなぁ! ……凄いのか? うん、あまり深く考えないでおこう。
「就職してからはあまり頻繁に通えてないんだけどね、最近は特に…… んふふっ」
俺の家に入り浸ってるからね。
とりあえずユアが強いという事と、酒癖がちょっと…… 悪いという事がわかった。
これからは飲み過ぎ注意ね?
あっ、あと他に聞きたいことがあったんだ!
「そういえば高校時代のあの時のユア、黒髪でメガネだったよね? だから余計に気付かなかったんだけど」
「そういえばそうだったわね、あの時は確か…… ああっ! 『髪の色が明るい!』って生活指導の先生に怒られて『このままじゃ留年するわよ!』って言われたから仕方なく…… それに、派手な見た目をしていたら変な男が寄ってくるからと思って、髪を黒く染め直した時期だったはず…… どうせならメガネもかけて地味にして過ごそうと思っていたけど、結局言い寄られていたから意味なかったわ」
……あまり関わりがなかったのもあるけど、いつも明るめな茶髪のイメージがあったから気付かなかったのかも!
それにあの時は…… ユアの心配よりも、叫び声を上げてのたうち回る男の方が心配になっちゃって、ユアの顔をよく見てなかったもんな。
「でも…… ユアだったのかぁ…… あっ! だから『お礼』のクリームパンだったんだ!」
「そうよ? でもヨウったらとぼけたふりをして『助けた礼はいらないぜ、可愛い子ちゃん!』みたいな顔をしていたから…… 『あぁん、そこがまた素敵!』って思ってたのに! まさか本当に気付いてなかったなんて! ヒドいわ…… でも、やっぱり大好き! んふふっ、んー……」
あぁっ、またキスをしてきて…… もう昼になるけど今の時点で数え切れないくらいキスされてる!
「んふっ! ねぇ、お願い、ヨウからも…… んー……」
……もういいよね? 恋人なんだもん、遠慮なんかしないよ?
「んっ…… んふふっ! あぁん…… 幸せぇ……」
俺の膝の上に向かい合うように座り、抱き着いたりキスしたりと、朝からベタベタチュッチュッと…… 恋人ってこんなもんなのかな? よく分からないけど、ユアが嬉しそうだからいいか。
「ヨウ?」
「んっ?」
「んふふっ…… ヨウ、大好き……」
「俺もユアが大好きだよ」
ようやく言えたんだ、何度だって言うよ。
再会して約一ヶ月、だけど凄く濃い一ヶ月だった。
ユアは高校三年のあの頃からだとしたら…… 約二年か。
俺があの女の子がユアだと気付いていたらどうなっていたんだろう。
でも、両想いになれたんだからいいよね?
これからはユアを一番に大切にするから…… それで許してくれないかな?
「ふふっ、一番大切で大好きなら…… 独り占めしたくならない?」
「……へっ?」
「恋人同士なんだから…… ねっ?」
ユアはそう言いながら更に身体を密着させ、褐色プリンをプリンプリンと動かしている……
「ど、どういう…… こと? ……っ!?」
ビ、ビッツが…… プリンプリンとチンされている!
「また危ない目に合ったら恐いなぁ……」
更に背中に手を回してきて…… ムニュリさんがムニュリ…… 顔もくっつきそうなくらい近い! そして、俺の耳元で囁くように
「誰かに奪われる前に…… ヨウのものにしたくない? んふふっ、明日は日曜日で休みだよ? もう恋人同士なんだし…… 大切にしてくれるんでしょ?」
あっ…… あっ……
「ヨウなら…… あたしは…… いつでもいいのよ?」
あぁ……
…………
…………
そして……
理性が吹っ飛んだ俺は……
ユアに『初めて』を捧げて……
ユアの『初めて』を捧げてもらった……
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