チンしてアツアツ

 ◇


 ふふふっ、ヨウったら驚いた顔をしちゃって…… もういい加減見慣れたでしょ?


 でも…… 調理中だとは思わなかった。


 あたしも見慣れたわけじゃないけどビックリ…… あれがああなるって不思議よね。


 慌てて調理しているのを隠してるけど、んふっ、もう見ちゃったもんね!


 仕方ないなぁ、あたしが代わりに調理してあげる!


 チンしてアツアツになったものを揉んでほぐして…… 俵型にコネコネ。

 上手く調理出来ているみたいでヨウは喜んでくれている。


 ここで一回味見をして…… んっ……


 うん、調理方法は大丈夫みたい…… ふふっ、ヨウったら変な声を出さないでよ。


 そして仕上げにアツアツのビッツハンバーガーを作るためにあたしもバンズを準備して…… んっ、しょっと。


 ふふふっ、しっかりバンズで挟んで…… 上手くサンド出来てるかな? もう一回味見して…… うん、美味しい。


「ユア……」


 なーに? まだ作ってる途中よ? 仕上げにたーっぷりマヨネーズを出さないと。


「……ユ、ユア!」


 ……キャッ!! ……マヨネーズがはみ出ちゃったぁ。


 んふっ、これで…… 完成かな?


「ユア…… あ、ありがとう」


 やん! 上手く作れたから褒めてくれるの? ……嬉しい! 


 こうして大好きな人が喜んでくれるならあたしは…… ああ、千和が幸せそうにしていたわけが分かったわ…… これは幸せだもん。


 そしてあたしはバンズからはみ出て付いているマヨネーズをペロリと舐めて、ヨウに抱き着いた。 



 ◇



 あぁぁ…… 


「ふふっ…… かゆいところはないですかー?」


 ムニュリ、ムニュリとムニュリさんが背中に触れている……


「じゃあ流すわよ…… ふんふーん♪」


 頭にシャワーを当てられ、シャンプーが洗い流されていく……


「はい、終わり! ふふふっ」


 目を閉じて、されるがままユアに頭を洗われていたが…… ゆっくりと目を開ける。


「じゃあ次はあたしね! 場所を交代して?」


「わ、分かった……」


 狭い風呂場だし俺は縦横とデカいから、どうしても肌が触れ合ってしまう。


 しかも目を逸らすことも出来ず、バッチリ色々と…… 見えてしまう。


 今までは薄暗いベッドの上でされたあれこれもバッチリ見える状態でされてしまい、心臓が飛び出そうなくらいドキドキしている。


「ふぅ…… じゃあお願いね!」


 俺がさっきまで座っていた風呂場にある椅子にユアが座り、俺に背を向けている。

 綺麗な褐色の背中、プリンが丸見え……


「じゃ、じゃあ髪を濡らすよ?」


「はーい! ふふふっ」


 綺麗に染められている金髪をシャワーでしっかりと濡らし、ユアお気に入りのシャンプーでユアの頭を洗う。


「んー、ちょうどいい力加減ね! ふふっ、毎日洗ってもらいたいくらい気持ち良いわ」


「毎日はさすがにマズいんじゃない?」


 俺達、別に付き合ってるとかそういうんじゃないから…… さっきパクッと食べられた俺が言うのは変だと思うけど。


「じゃあ…… たまには一緒に入りましょうね、んふっ!」


 それって、これからも泊まりに来るつもりってことだよね?


 ……再会してからまだ二週間弱。

 なのに何だか長年一緒に居たような感じがするくらい、ユアと過ごす時間は濃密だ。

 だけどお互いに、今の関係を決定付けるような言葉を口にしていない。


 ……それは俺の中で、もし遊ばれているだけだとしたら『怖い』という気持ちが強いからだと思う。


 ユアにしてみればこの関係は『ただの暇潰し』かも、なんて考えが頭の片隅にあって……


 やっぱり『ビッチ』と言われていたからな。


 多分頼めばヤらせてくれそうな雰囲気はある。

 でも、『それを簡単にしてしまったらいけない』という…… 良くない予感がするんだよなぁ……


『据え膳食わぬは男の恥』なんていうが、この『据え膳』を食べたら……



「はぁん…… 気持ち良い……」


 あっ、そろそろいいか。


「ユア、洗い流すよ……」


「ふふっ、はーい!」


 シャワーでシャンプーを流した後、続けてトリートメントもして……


「じゃあ次は…… 身体を洗ってもらおっかなぁー? んふふっ」


「か、身体は自分で洗ってよ!」


「えぇっ!? あたしは洗ってあげたのに! ……ふふっ、でも仕方ないからはいいわ」


 そして……



 …………

 …………



「はぁー! サッパリしたわね…… んぐっ、んぐっ、んぐっ…… ぷはぁー! お風呂上がりの炭酸ジュースが美味しいわ! はい、ヨウも飲む?」


「あ、あぁ……」


 自分で洗ってって言ったのに! 洗わされた!

 ……どこかは言わないが、モチモチと手に収まらないくらいだったな。


 しかも明るい場所で自ら触ってしまったから…… 食べられてなかったら暴走してしまっていたかもしれない。


「はぁ…… 気持ち良かったね! ふふっ」


「……うん」


「んふっ…… ヨウ、髪を乾かしてー、お願ーい!」


 風呂上がりにバスタオルを巻いただけでソファーに座るユア、その横に座りドライヤーを使ってユアの髪を乾かす……


 ところでこのドライヤーも見たことないよ? いつの間に持ってきたの?

 ……どんどん俺の家にユアの私物が増えていくな。


「ヨウー? どうしたの?」


「いや…… 何でもないから、ほら、乾かすよ」


「はーい…… ふっふーん♪」


 ……もうこれ、付き合ってる雰囲気だよね? 経験がないから分からないけど。


 それともビッチ界隈では普通なのか…… 分からないから誰か教えてくれ!


「明日は仕事だもんね…… もっと休みたかったなぁ」


 明日は仕事…… ユアも明日は実家に帰るんだろうな…… あっ!


「ユア、そういえばスペアキー……」


「えっ? ……あっ!」


 そういうとユアは立ち上がって、床に置いてある今日持ち歩いていたバッグを四つんばいになりガサゴソ…… バスタオルを巻いた姿で…… 四つんばい!? 


「あった! ……見て見て! ショップで買ったポゥさんのキーホルダー! はい、これはヨウの分よ! あたしはもう付けた…… って、どうしたの?」


 あ…… あぁ…… み、見ちゃっ…… た。


 言えない! 言えないけど…… あぁ……


「何よー! ……はい、ヨウのカギにも付けておいたからね! ふふっ、これでお揃い……」


 初めてハッキリと見た衝撃で、スペアキーのことなんてどうでも良くなって…… 


 そしてスペアキーはいつの間にかユアのものになっていた。

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