毎日作ってあげようか?

「うん、美味しいよ!」


「ふふっ、良かった」


 ユアが作ってくれた晩ごはんは、カレイの煮付け、キャベツと大根の味噌汁、ほうれん草とニンジンの白ごま和えと和食だったが、どれも俺好みの味付けでとても美味しい。

 味噌汁はかつおぶしと昆布で出汁からとって作ったみたいだから特に美味しい。


 笑顔で俺の食べている様子を見守っているユア…… 


「……食べないと冷めちゃうよ?」


「ふふっ、あたしは気にしないで食べて?」


 ずっと見られてると少し食べづらいが…… んん、はぁ…… 美味っ。


「味噌汁美味しい……」


「んふっ! 喜んで食べてくれるのを見てると、作って良かったなぁーって思うわ…… 毎日作ってあげようか?」


「ぷふっ! ……えっ?」


「ふふふっ、冗談よ…… 冗談じゃないけど」


 最後…… ゴニョゴニョと言うから聞こえなかったんだが…… なんだ、冗談か。


 さすがに味噌汁を毎日って…… あれだよな。

 俺達は友達、勘違いしたら駄目だ。


「……んっ、美味し、キャベツが少し安かったのよねぇ、明日の朝の分もあるからまた食べてね?」


「そっか、ありがとうユア」


「んふーっ!」


 変な笑い方してるなぁ…… まあいいや。


 あっ、そういえば……


「明日ってどこに行きたいとかあるの? 出かけるんでしょ?」


「出かける…… じゃなくてデートよ、デート!」


 似たようなもんじゃ…… 


「うーん…… とりあえず買い物したいから付き合って欲しいなぁ、あとはヨウと二人きりになれる場所で…… ふふふっ」


 二人きり!? ……いけない想像をしてしまうんだが、また勘違いしたらからかわれるんだから! ……落ち着け、平常心だ。


「あと、ディナーは予約しておいたから!」


「ディナーって…… お高いレストランとかじゃないよね?」


「知り合いにリーズナブルで良い店を知ってるっていう人がいて教えてもらったの! ドレスコードとかもないみたいだし、心配しなくても大丈夫よ!」


「それならいいけど……」


 あまり高くないんだったら二人分くらい大丈夫だな…… 一応多めにお金を下ろしておこう。

 昨日は部屋の掃除をしてくれたみたいだし、今日ご飯を作ってくれた…… 色々してくれたお礼をしないとな。


「んっ? そんなに見つめられると照れちゃうわ…… ふふっ」


 ユアの笑顔…… やっぱり可愛いな。


 そしてカレイの煮付けを一口…… うん、これも美味しい。

 

「あっ! あと、ポゥさんのショップも行きたい!」


 明日の話をしながら楽しく二人で食事…… こんな幸せな気分になるのはきっと……


「うん、そこも一緒に行こう」


 ユアだからなんだよな。



 ◇



「鎌瀬部長」


「どうしたんだい?」


「慰労会の後ですが、例のあの店を貸し借りにしてもらいました」


「ははっ、仕事が早いねぇ、さすが私の部下だよ」


「ありがとうございます」


「じゃあマスターにも?」


「はい、VIPルームを使用の許可をもらいました、ではいつも通り……」


「ああ、浦野うらの社長に直接確かめてもらおうと思っているよ、新しいを」



 ◇



「ねぇ…… ヨウも参加するんでしょ? パープルサウンド完成の慰労会」


「ああ、断れなくてね」


「はぁ、良かったぁ…… あたし、パープルサウンドで働く店員の教育係としてしばらく新店舗の方に行かなきゃいけないらしいから、顔合わせも兼ねて出席して欲しいって言われたんだけど、嫌だったのよねぇ……」


「もしかして…… 鎌瀬部長がいるからか?」


「うん…… あたし、ああいう男が苦手なの……」


「そ、そうなんだ……」


 鎌瀬部長ってイケメンだから女性社員からも人気があるし、人望もあるからてっきり…… ユアは意外と人を見る目があるのかな? ……いや、俺が一方的に苦手なだけだから、俺が見る目がないだけの可能性もある。


「ヨウ…… 何かあったら守ってね?」


「……えっ? 」


「ふふっ、またとぼけちゃって…… それよりぃ…… ねぇ、お願いがあるんだけど」


「お、お願い?」


 って何だろう? 心当たりがないんだが…… それより! お願いって何だ? また変なことを考えてるんじゃないのか?


「あのね…… ふふふっ!」


 その笑い方、ちょっと怖いなぁ……



 …………



「あぁん! 気持ちいいぃ……」


「ちょっと! 声が大きいって!」


「だってぇ…… ヨウ、上手なんだもん…… あっ、そこ…… いいっ……」


 紛らわしい声を出さないでよ……


「立ち仕事って疲れるのよ? 足がむくんじゃって…… はふぅ、ヨウのマッサージ気持ちいい……」


 ユアのお願いは、足のマッサージをして欲しいということだった。


『今日は足が疲れちゃってぇ…… ねっ? お願い、マッサージして? ヨウ……』


 またいつものおねだりの仕方でお願いされ、またまた俺は断れずにうつ伏せになったユアの足の間に座り、両方のふくらはぎをマッサージしている。


「太ももも、お願ぁい…… んふぅ…… はぁ、気持ち良い……」


 太もも…… 力加減はこれくらいでいいのかな?

 それにしてもユアの太ももは…… ムチムチモチモチ、女の子ってあちこち柔らかいんだな。


「次は仰向け…… 続きをお願いね? ふふっ」


 あ、仰向け? ……目が合うから恥ずかしんだが。

 それに…… バレないかな?


「…………」


 ユアは気持ち良さそうに目を閉じているから大丈夫そうだ。

 オークビッツの存在がバレたらまた何を言われるか分かったもんじゃないからな。


「…………んふっ!」


 あっ! ユア…… もしかして薄目を開けて見てる!?


「ふぅ…… ヨウ、じゃあ交代しよっか?」


 ……お、俺は大丈夫だから!


「ほらほら、仰向けになって?」


 ちょ! 意外と力が強いんだよな、ユアって…… い、今はそれどころじゃない! 何とかして脱出しないと…… あぁっ!!


「次はあたしが…… ヨウをマッサージしてあげるね? ふふふっ」


 そして……



 …………

 …………



 ユアは『マッサージする』と言いながら『ホットドッグ』を作り、口いっぱいに頬張りながらペロリと食べた。

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