マジでヤバいよ!
朝、暑さで目が覚めると、俺の顔を見つめているユアと目が合った。
「おはよ」
「……おはよう」
目が覚めたばかりなのかトロンとした目をしたユアは、優しく微笑みながら俺に抱き着く。
汗の匂いとは違う『濃い』匂いが若干するような気がするが不思議と嫌な匂いではない……
「…………」
まだ眠たいのか大人しいな…… 今は何時なんだろう…… んっ?
少し意識がハッキリしてきて、そこで俺はある違和感に気付く。
えっ…… あっ、これ…… も、もしかして!
「ト、トイレ!」
「あっ! ……もうっ」
ヤバいよヤバいよ! マジでヤバいよ!
そしてトイレには行かずに風呂場へ直行した俺は、そのままシャワーを浴び、色々とサッパリ綺麗に洗い流した。
……何があったかは聞かないでくれ。
朝から疲れたな……
ため息をつきながら風呂場から出て身体を拭き、洗面所兼脱衣場の隅にある洗濯機の中に着ていた服を全部入れる。
パンツは…… よく絞ってから洗濯機に入れ……
「あたしもシャワー浴びちゃおっかなー?」
服を着て洗濯機を回す準備をしていると、ドアが開きユアも洗面所に入ってきて…… 俺に構わずスルスルと服を脱ぎ始めた。
「何してるの!? もう少し待っててよ!」
「待てませーん、ふふっ、見てもいいのよ?」
む、無理だよ! デッ…… いや、ダメだ!
慌てて目を逸らし、見ないように下を向く、すると視界に三角形の布が……
「ついでに一緒に洗っておいて ……洗濯しないといけないんでしょ? ふふふっ」
……き、気付いて、いるのか、ユア!?
う、うわぁぁぁーー!! あぁ、恥ずかしい……
そんな俺の様子を見ていたのか、クスっという笑い声が聞こえ、ユアはそのまま風呂場へと入っていった。
◇
ふぅ…… ドキドキしたぁ……
まさか寝ている間にあんな……
お礼としてはノーカン? うん、ノーカンよね、だって……
急に押し付けられるんだもん、ヒヤヒヤしたわ…… でも…… あたしもちょっと…… ふふっ、本当にビックリしたぁ。
さっきのことを思い出し、少し熱くなった顔を冷ますようにシャワーを浴びる。
色々とサッパリ綺麗に洗い流して…… まだ洗面所でガサゴソとしているヨウに話しかける。
「ヨウー? 着替え持ってくるの忘れたから準備しておいてー」
「わ、わ、分かった!!」
何してたのかなぁ? 恥ずかしいからあまりじっくり確かめないで欲しいけど…… ヨウにならいいかな? ふふっ。
そして、慌てて洗面所から出ていくヨウを確認してから、あたしは風呂場から出た。
◇
き、着替え、着替え……
危なかった、何をしていたかバレたらタダじゃ済まなかったな、きっと。
だって三角形の布が少し濡れ…… いや、俺が人のことを言えないからユアのために黙っておこう。
それにしても…… 下着までクローゼットの中にある収納ケースに綺麗に入っていた。
……もしかして、実家から色々持ってきたのか? 服もそうだけど、小物も増えてるし。
三日泊まるのに必要な量ではない、もっと居ても大丈夫なくらい…… ま、まさか!
物置にされている!? いらない服や小物を俺の家に……
いや、なら下着がある意味が……
「ヨウー? まだぁー?」
「い、今行くー!」
いけない、とりあえず着替えを持っていかなければ…… えーっと、えーっと…… て、適当に選ぶか。
「持ってきたよ」
「遅ーい! 風邪引いちゃうわよ、もう!」
「ユア!? バ、バスタオルくらい巻いて!」
「あら? ……忘れてたぁー! んふっ」
わ、わざとだ! 絶対!
……デッカ! ……うぅ、だから見ちゃダメだって!
「ふふっ、ありがと…… って、ヨウったらあたしにこれを着けて欲しいのー?」
そう言われると同時に、視界の端ではヒラヒラと動いている…… 紐? みたいなものが見えた。
「えっ? ……えぇー!!」
紐みたいな、じゃなくてほぼ紐!!
しかも紐の一部にスケスケな布がくっついて…… 何でそんな物を持ってるの!?
「何でって…… ヨウが持ってきたんじゃない」
「そうじゃなくて! 何でそんな物が収納に入ってるんだよ!」
「普通に下着のラインが出ちゃうような服を着る時に、嫌だからこういうの着けてるんだけど…… ダメだった? ふふっ」
そうなのか…… でも、それじゃあわざわざそれを持ってきた俺って……
「ヨウのエッチ…… ふふふっ」
そして紐と部屋着を受け取ったユアは、そのまま洗面所のドアを閉めた。
……えっ? つ、着けちゃうの? あれ。
一瞬、紐を着けたユアを頭の中で想像してしまい、慌てて頭の中から追いやるように首を横に振った。
「あら、まだ居たの? そんなにあたしが着替えるのが気になったんだぁー、ふふっ」
「ち、違うよ!」
「ふーん…… しかも白で無地のシャツを選ぶところがまたエッチよねぇ」
「……っ!!?」
す、透け……
「ダメ! ダメダメダメっ! い、今パーカー持ってくるから!」
「二人きりなのに気にし過ぎよ」
「ダメ! はい、これを着て!」
「はぁーい、ふふふっ」
まったく…… そのままじゃ透けからの透けだからスケスケだよ? ……何を言ってるか分からないって? 俺だって分からないよ。
「ふぅ…… ところで明日は休みなの?」
まあ、スケの前にモロしてるけど、それとこれは別…… えっ?
「あ、あぁ、休みだよ」
ユアは渡したパーカーを素直に着てくれて、そしてソファーで冷たいお茶を飲みながら俺に聞いてきた。
明日は日曜日だから俺は休みだけど……
「あたしも休みなのよねー」
「あぁ、そうなんだ」
「…………」
えっ? 何? ちょっとムッとした顔をしている…… さっきまで俺をからかってニコニコしてたのに。
「あたしも休みなのよねー」
「…………」
同じこと言ってるけど…… ユアはアパレルショップの販売員だから、日曜の休みって珍しいのかな?
「あたしも! 休みなのよねー」
これ…… なんて返事をするのが正解なんだ? 睨む…… いや、何かを訴えているような目で俺の顔を見て…… まさか違うと思うけど……
「……もしかしてどっか遊びに行きたいの?」
そう言った瞬間、ユアは満面の笑みになり立ち上がった。
「うん! だからヨウ、あたしとデートしましょ? ふふふっ、ねぇ、お願ーい!」
「えぇ!? うわっ、急に抱き着かないでよ」
『お願い』と言いながら抱き着いてくる。
俺達は身長差があるから、俺より背の低いユアはどうしても見上げる形になってしまうのだが……
ユアのお願いする時の上目遣いはズルいんだ、お願いのたびに何度もこれをされている。
「一緒にどこかおでかけしよー、ねぇいいでしょ? ヨウ、お願い! ねっ?」
「わ、分かったよ…… どこか行きたい所でもあるの?」
「やった! 行きたい所はいっぱいあるけど…… 今日中に考えておくわ!! ふふっ、ふふふっ!」
『お願い』を聞くとすごく喜んでくれて、可愛い笑顔を見せてくれるというのもあるから…… 断れないんだよ……
ところでユア、喜んでくれるのは嬉しいけど、俺のお腹に顔を何度もスリスリしないでね? くすぐったいから。
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