またね、大倉

 食事を終えファミレスを出た俺達は、真野さんの実家があるという方に向かって歩いていた。


 夜も遅くなってきたし、少し露出が多めな格好の真野さんが夜道を一人で歩いていたら危ないと思い送っていくことにした。


 さすがに真野さんの実家まで行くのは気が引けるので途中までだが。


「ありがとね、でも大倉の家から意外と近いでしょ?」


「そうだね」


 それでも実家に居たくなかった理由があったんだろうな。


「もうすぐそこだからここでいいよ、じゃあ…… またね、大倉」


「うん、またね、真野さん」


 時々振り返って手を振る真野さん。

 その姿が見えなくなるまで見送った俺は、道を引き返して帰宅した。


 

 真野さんと過ごした休日を振り返り、改めて思うのが、すごく濃厚な土日だったということ。


 真野さんのような美人と二人きりで過ごし、そしてあんな事まで……


 思い出すだけでドキドキするが、実際にあんな経験をしてしまったわけで……


 目を瞑れば映像が浮かびそうだから、寝る前に一人でしておこう。


 あれ? そういえば『またね』と言ったけど、そういえば連絡先を交換してない!


 ……真野さんにも聞かれなかったし、やっぱり『また』はなさそうだな。


 うん、良い経験が出来たから、それだけで十分だよな。


 そう自分に言い聞かせながら歩いていると、すぐに自宅へと到着した。


 ファミレスに行った帰りだったから遠く感じたけど、真っ直ぐ帰ってきたら意外と近かった…… それならまた偶然会うこともあるかもしれないな。


 自宅に帰ってすぐに部屋着へと着替え、着ていた服を洗濯カゴに持っていく。


 すると洗濯カゴの中には……


 ま、真野さん! あの…… 豹柄の下着! 持って帰るの忘れてるよ!?


『まっ、それは大倉にあげるから、好きにしていいよー』


 あげるとも言っていたけど、こんなの俺が持ってても仕方ないよ!


 そう思いつつも…… 手に取って確認してしまうのが男なんだよ。


 改めてじっくり見ると…… これに真野さんのアレやコレが収まっていたのか。


『大倉ぁ……』


 アレ…… コレ……


 す、好きにしてもいいって言ってたもんな! うん…… 


 そして真野さんの下着を洗濯カゴから抜き寝室へ……


 するとスマホの着信音が鳴った。

 しかもこの音…… 電話じゃないか? 


 こんな時間に誰からだろう? そう思いながらスマホの画面を見ると


『ユア♥️』


 と、登録した覚えのない名前が表示されていた。


 ユアって…… その名前で覚えのある人物は一人しかいない! そして慌てて電話に出ると


『やっほー! 大倉? 今大丈夫?』


「ま、ま、真野さん!? いつの間に俺のスマホを……」


『ふふっ、大倉がぐっすり寝ている間に登録しておいたの! 嬉しい?』


「いや…… 連絡先を聞きそびれたとは思っていたけど」


 寝ている間って真野さん、そもそもどうやって俺のスマホのロックを解除したんだ!? それに……『ユア♥️』って何!? ちょっとこれは恥ずかしいというか、もし誰かに見られたら勘違いされそう!


『その登録名だったらすぐに電話に出たくなっちゃうでしょ? 大倉なら喜んでくれるかなぁーって思ったんだけど、ふふふっ、あっ、勝手に変えちゃダメよ?』


「えぇっ……」


『あっ、そうそう! それよりも無事に家に着いたわ! 昨日と今日は色々ありがとね』


「そ、そう、それは良かった…… こちらこそありがとう」


 ファミレスもそうだが、色々と…… ね。


 でも、わざわざそのためだけに連絡を? まあ夜も遅かったし、無事に着いたのならこっちは心配がなくなるからいいんだけど…… 


『ふふっ、ねぇ大倉…… 今何してたの?』


 うっ!! ……真野さんの下着を、なんて言えない!


「き、着替えてリビングでくつろいでたよ」


『ふーん、そっかぁ…… ふーん……』


「な、なんだよ!」


『てっきりあたしが居なくなって寂しいから一人で…… って思ってたのに、残念ね』


 うぐっ!! ……当たりと言えば当たりだけど、どう返事していいか分からない!


『まっ、それはいいわ、じゃあ明日も仕事だろうしそろそろ切るね? ……また連絡してもいい?』


「あっ、うん…… いいよ」


『ふふっ、ありがと! ……大倉も寂しくなったらいつでも連絡してね?』


「分かった…… ありがとう」


『じゃあまたねー! おやすみー!』


「うん、おやすみ」


 何だよこの電話! まるで…… 

 いや、真野さんはきっとからかい半分で連絡してきたんだ! そうだ、そうに違いない!


 するとすぐにスマホの通知音が鳴り、確認してみると新着のメッセージが届いていた。


 送信者は予想通り…… 『ユア♥️』となっていた。


 そして画面をクリックしてメッセージを開いてみると……


『寂しくなったら使ってね♥️』というメッセージと共に…… ドドーンと画面いっぱいに片腕で大事な部分を隠しつつ持ち上げている形になった、褐色の巨大おまんじゅう二つが写った画像が送られてきた。


 既読をつけてしまったから見たのはバレている…… でも何と返せばいいんだよ……


 そして俺は適当に、サムズアップしているブタのスタンプで返信して、スマホをソファーに軽く放り投げた。


 風呂に入って明日の準備をして早く寝よう…… その方がいい。


 そしてその前にまんじゅう画像で一人ファイトした後、風呂に入ってぐっすり眠った。

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