HOLD ON ME TIGHT!

作家:岩永桂

THE SAFEST PLACE.

ペアルックティーチャー:KINMUGI

香取「きよしティーチャー、大変ですわ!」

お蝶夫人こと香取蘭子が勢いよく職員室に押し寄せる。


清志「何だよ香取、かまびすしい」

達観したきよしティーチャーは、火の粉を払う江戸っ子のような構えだ。

騒ぎ立てることでもないと、解っているかのように。


香取「ミッチーが屋上で、泣いてらっしゃるの」

心配で仕方がない様子の蘭子。

副担任ミッチーのめそめそ乙男(=オトMEN)すまっしゅ顔。


清志「知ってるよ、そんなこたあ」

温いな香取。訳知り顔のきよし。

香取「??? 原因は、一体なんですの?」

蘭子プチパニック。知っててどうしてそんなに余裕ですの?


清志「金麦だよ、金麦」香取「え……?」

キンムギというオトナの響きに全く聞き覚えのない蘭子。

KINMUGIで合っているだろうか。涙の理由?


清志「あいつ、バイセクシャルだからさあ」

清志「昔のカミさんのこと、思い出したんだと。全く、けしからん!」

昔は女性を好いても好いても

今は俺様の恋人だろうがと、いわんばかりの。


香取「え、LGBTQ+の世界にも、色々ありますのね」

香取「涙が枯れたら、励ましてあげて下さってね」

清志「まあ、あいつにはどの道、帰る場所は、俺の腕の中しか無いからな。

清志「ザ・セイフェストプレイス。ホールドオンミータイトだよ」

ぎゅっとして! もう離さないで!

恋人として。副担任の心からの願望。

叶えてやるのが、担任としての務め。

俺達、今日もペアルック・ティーチャー。

ざわつく餓鬼共、ティーンエイジャー。

性的マイノリティ、舐めんな!


香取「あ、向こうから、浜口先生が歩いてこられるわ。

香取「小言は嫌いなので、失礼致しますわ」


清志「及川も文化祭でチャイナドレス着るってよお」

清志「ウチのズンドコカフェ、遊びにこいよー」

氷川先生は社会科でしたよねえ、今のおまじまいみたいの

メソポタミア文明の呪いっすかあ?

陽気な浜口にゃちいとばっかし難しいかねえ。

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