神に呼ばれた俺は謎の生物の母親になる!?
眞柴りつ夏
第1話 初めまして世界
湊斗は困惑していた。
さっきまで家のキッチンでオムライスを作ろうとしていて、制服のジャケットを脱いだ上に母親のピンクの可愛いエプロンを着け、いざ!と卵を持ち上げたところだったはず。
がしかし、目の前の光景は、家の白い壁ではなかった。
「あれ?」
2メートルほど離れたところに立っている長身の男が、驚いたような顔で言った。光が透けるような金髪に白い肌。手には剣を持って、……剣!?
「今回は女が来ると聞いていたんだけどな。まあ、特に支障はないけれど」
言いながらその人は湊斗の方へ歩いてくる。剣から目が離せない。あっという間に向かい合った。
「お前、名前は?」
「……田中です」
「そっちじゃない、ファーストネームの方だ」
「みなと」
「ミナト、か。ご両親は海が好きなのか」
ふむふむと勝手に納得したその人は、笑顔を浮かべた。
「私はレオ。この場所で神官のようなことをしている」
「……状況が」
「分からないよな」
また納得したようにレオが頷く。どうしたものかと視線を振ると、自分の右手が目に入った。
「あ……」
そうだ。さっきまでオムライスを作ろうとしていて——。
「っ!放さないで!!!」
急にレオが叫んだので、危うく卵を取り落としそうになった。
握り潰す可能性もあったわけで、湊斗はレオを睨んだ。
「放しませんよ。この距離でいきなり大声は辞めてください」
目を見て言うと、初めて男が怯んだ。
「いやその、たまにいるんだ。この場で割ってしまう者が」
そう言ってレオは、卵を包み込むように持てとジェスチャーした。仕方なくその通りにする。
「説明するよ。君は、呼ばれたんだ。異世界から」
「い、せかい?」
「ああ。呼んだのは他でもない。この世界を作っている神だ」
「神ぃ?!」
あまりに驚いて顎が外れそうになった。何を言っているんだ、この男。
「いやちょっと待って、だって俺、普通の高校生だし」
「呼ばれた理由おいおい分かるだろう」
「そんな適当な、」
と手の中の卵から、コツコツとノックされた気がした。
「え?」
驚いて顔の前まで上げると、「ほお?」とレオが驚いたように呟いた。
「この場で孵化させた者は、俺が知ってる限りいなかった。ミナト、もしかしてお前は——」
「ああ!ちょ、なんか割れ、割れてきたんですけど!」
「そのまま!絶対に手を離すなよ」
「そ、そんなこと言われたって!!」
ヒビが入った殻の中にある小さな丸と、目が合った。
「ひ!目!!」
「姫?人型か!」
「はぁ?!何言ってんすか、目!目があります!!」
「そりゃあるだろう、生きてるんだから」
生きてる。そうか、卵から、生まれるんだ。
だがしかし、怖いものは怖い。なんせ初めての経験だ。
「お願いします、助けてください!」
「それは初めて言われたな」
「感心してないで、ねぇ!本当に!助けて!!」
涙が滲んだ目で見つめると、レオはうっと息を呑んで固まった。そして一瞬悩むそぶりを見せたあと、大きなため息をついて手を伸ばす。
神に呼ばれた俺は謎の生物の母親になる!? 眞柴りつ夏 @ritsuka1151
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