Chapter18 嫉妬
はぁ……眠い……首が痛い……枕欲しい……
歓迎会の翌日、眠すぎて
あぁ……柔らかくて気持ちいい……いい匂い……
どれくらい経っただろうか? 今、何時だ?……10時くらいかな?
先ほどよりも進化して薄らと瞼が空いたが、二日酔いで重い体は抵抗するように瞼を閉じようとする。
スマホで時間を確認する気も起きない……今日は休みだし、昼までもう少し眠ろう……動画の編集は夕方からやろう……
寝返りをうつと顔にぽふっと柔らかいものが触れた。
何だろう? 壁にしては柔かい……クッションかな?
仰向けなり、目を開けると見たことない景色が広がっていた
白い月が二つ……月の裏側か? いや月は二つ無いよなぁ
「お、おはよう……」
「おっ?」
月の向こう側から零が困った顔をして俺を見つめている。頬が赤く染まって恥ずかしそうだ……俺は頭を動かして辺りを確認すると白い脚が見えた。
え? 嘘だろ!?
もう一度、双月の裏側を見ると夢? 幻?
「頭……動かさないで欲しいな?」
膝枕ァァァァッ!
俺は腹筋を使って慌てて飛び起きると、小さな零の悲鳴と共に、俺の顔に双月の裏側が
起き上がると俺の腹の上にはタオルケットが掛けられていた。足元でわらしが羨ましそうに睨んでいる。
わらし! これは事故なんだ!! 許せ!!でも何で膝枕してたの??
混乱しながら振り向くと、零と目があった……タオル素材のショートパンツに白T姿の彼女は、恥ずかしそうに目を逸らす。
「零、おは……よう……。なんかごめん……」
「ううん……大丈夫……。怖い動画見ようと思ってここに座ってたらその……」
俺に捕まったのね?……しかも起こさず寝かしてくれたの? 嫌だったらもっと嫌がったり起こして良かったんだよ??
だが、良い目覚めだったのかもしれない……顔にも柔らかい感触が残っている。マジで柔らかかった……。
幸せを反芻していると、わらしが俺の背中をポカポカと叩いていてくるが、痛みは無くむしろゾクゾクした……霊障が起ってる!!
「わらしっ! ゾクゾクするっ! ごめんって!」
「駄目だよ。わらしちゃん! こっちにおいで」
わらしは零の声に従って
「昨日は帰ってくるの遅くなってごめん!大丈夫だった!?」
「うん。こっちは大丈夫だよ。久々の飲み会楽しめた?」
こんなに大きな飲み会は俺の新歓以来だったので、確かに楽しかった。だが、楽しかった後のひと悶着を思い起こして頭を抱えた。運が良かった……
「あ、ああ……新人と二人で置いてかれて、新人が酔って終電見逃して大変だったけど、同期に助けてもらって事なきを得た」
「えー! 大変だったね。新人さんって女の子?」
「ああ、うん……。あ! そうだ、無事に帰れたか確認させて」
俺はスマホを取り出し青山さんとのトーク画面を見ると、既にメッセージが一件届いていた。開いて確認すると泣き顔のスタンプが押されていた。
え? まさか……三ノ輪に食われた?? 慌ててメッセージを送る
『昨日はお疲れ様。大丈夫? 無事に帰れた?』
すると、すぐに既読が付き、返事が返ってくる
『今、家に着きました』
『私を置いてヒドい! 起きたら三ノ輪先輩の家に居ました』
ぷんぷんと可愛く怒ったスタンプが送られてくる。
なんだ、良かった。それに告白についても触れてこない。きっと忘れてるな。酔った勢いで……って……彼女、俺の事好きってこと??
冷静に考えてしまい動揺した、気持ちは嬉しいけど……いや、酔った勢いだから! このまま触れずにいよう。
『無事そうで良かった。じゃ、また来週』
そう送ってチャットを終了した。その後も青山さんからメッセージが入ったようだが、とりあえず無事は確認で来たので保留した。彼女を預かってくれた三ノ輪にも礼を言わねば……俺は続けて三ノ輪にもメッセージを入れる。
『おす、昨日は青山さん預かってくれてありがとう。大丈夫か?』
『うっす……青山ちゃん、すこまえ帰った』
誤字脱字を直す余力が無いメッセージが送られてくる。二日酔いか寝不足か……
『助かった。後で埋め合わせする』
『おけ』
そして、チャットは沈黙した。きっと三ノ輪の事だ、二度寝が始まったのだろう。
安らかに眠れ、三ノ輪……
俺は安堵のため息を吐いて零に向かいなおる。
「新人は無事に帰れたみたい」
「良かったね! 終電を逃してまで呑むなんて……よっぽど好きなんだね」
「えええっ……!」
好きって……なんで青山さんから告られた事知ってるの? エスパー? 寝言で言ってた??
慌てふためいていたら零が首を傾げる。
「お酒が……って、何でそんなに驚くの? アヤシイ……新人さんとなにかあったの?」
零と彼女にしがみついているわらしが俺に顔をぐっと近づけてくる。そして何かに気づいたように今度は俺からさっと離れる。
「まさか……お酒を飲んだ流れで……!!」
「ないないない! そうなる前に同期の女友達に預けたんだってっ!!」
そう口走ってしまいハッとして口を塞いだが遅かった。
彼女はジト目で俺に問いかける。何か怒ってません? 零さん?
「へぇ~……もしやその新人さんって、地雷系女子?」
「うっ!……そうだけど……零……怒ってるよね??」
恐る恐る聞いてみた。これはもしや……嫉妬!?
「怒ってなんか……ごめんなさい。私、変だね……」
彼女は我に返ってしゅんとする。素直な子で助かった!!
俺は姿勢を正して彼女に向き直る。
「その子とは本当に何もないから安心して。それに彼女、心霊がすごく苦手だから俺とは無理だよ。今は零のボディガードと心霊動画の方が大切だよ」
零は少し悲しそうな目で俺を見つめて告げた。
「……本当に好きな子が出来たら、私よりその子を優先してね?」
「大丈夫! もう既に好きな物しか優先してないから」
あ……二人して驚いてしまった。まるで告白しているみたいじゃないか。
置いてけぼりのわらしが機嫌を損ねてまた俺をポカポカと叩いてくる。
ううううっ!!! また霊障がっ!!!
「わらし! それホント、ゾクゾクするから~!!」
この後、わらしの嫉妬を二人で収めるのが一苦労で、俺達はこの話どころではなくなってしまったのであった。
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