はなさいでね

ネオミャウ太

第1話

「離さないでね、お兄ちゃん」


「分かったよ、ちゃんとついていってやるから安心しな」


 俺はいつものように夜中に起きた妹のトイレに付き合う。


「本当だよ、何があっても離さないでね」


「心配症だな、俺がお前の手を離した事がある?」


 俺は妹を安心させようとしたが無理で


「だってあの時は手を離したじゃない」


「あの時は仕方なかったろ、ああするしか無かったんだよ」


 俺は言い訳をしながらも妹をトイレに連れていき


「着いたぞ行ってきな」


「お兄ちゃん、ちゃんと待っててね」


「分かってるって、ほらちゃっちゃと済ませな」


「分かった、いってくるから待っててね」


「分かったよ」


 俺は笑いながら妹がトイレに入って行く所を見送る。


「やっぱり、待ってくれて無いじゃない」


 私がお手洗いから出るとやっぱり兄は居なかった、それは当然かと思い、1人でベットに戻る。


 次の日、私は家族と食事をしていた。


「勉強大丈夫なのちゃんとしてる?」


 母親は勉強しているかどうか心配していた。


「大丈夫だから心配しないで」


 私は鬱陶しくなりながらも答えると


「お兄ちゃんの分、あなたにかけているのよ、分かってね」


「分かっているよ、お母さん」


 私は嫌々答えて、速攻で食事を終わらせて、家を出て食事を終わらせる。


 家を出て学校に向かっていると踏切があり、ふと立ち止まり。


 今日も話せなかったなあ、今日も一日が始まるのかと嫌な気持ちになっていると踏切が鳴り。


 このまま飛び込めば、お兄ちゃんは待っていてくれるだろうかと思いながら思わず、一歩踏み出す。


「玲子、前、前」


 と突然、友達の恵美が私の腕を引っ張ってくる。


「どうしたの、ぼーっとしてたの」


「ごめん、考え事してたらね」


「あんまり考えすぎは良くないよ」


「ほんと、ごめんね」


 私は友達に謝り、学校へ向かう。


「それにしても何を考えていたの」


「いや、今日のテストの出題範囲とかね」


「そうか、今日はテストだったか」


「そうだよ、忘れていたの?」


「忘れてたよ」


「恵美、大丈夫?」


「なんとか乗り切ってみせますよ」


 友達の恵美にも本当の悩みを話さないで嘘で誤魔化しながら、学校に向かっていると


「大丈夫だよ、玲子は私がはなさないでいるからね」


 突然恵美が変な事を言ってきたので


「何、告白?」


「うん、そうだよ、玲子ちゅきチュキ」


 と恵美が抱きついてこようとしてきたので軽くあしらい


「きもいよ、で本当は」


「秘密、はなさないよ」


 と恵美は笑いながら言うのであった。

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