そばにいたいから

もちっぱち

寝る前には…

「お母さん!!

 ほら、行くよ。」


「はいはい。今行きます。」


ゆうは、お風呂上がり、

すっかり寝る準備を終えると

眠くなったのかお母さんの手を引いて

寝室の2階に連れて行く。


後ろから姉のみかが静かに着いていく。


「今日は絵本読んでね。」


「えーどうしようかな。

 疲れているからなぁ。

 今日の幼稚園の出来事お話会では

 ダメなの?」


「えー、読んで欲しいんだもん。」


「私も読んで欲しい!!」


みかも同じように要望する。


「うん、わかった。わかった。」


お母さんはベッドの真ん中に

寝転び、絵本を持って2人に読み聞かせよう

とする。


「ゆう、苦しいよ。」


左腕をがっちりとつかむ。


「やだ。つかんでる。」


「え、ゆう。ずるい。

 わたしも。」


 みかは右腕をしっかりつかむ。

 お母さんの隣争奪戦。

 ものすごく近くにいるのに

 べったり隣にいたいらしい。

 これ以上近いと苦しい。

 絵本も読めやしない。


「あのさぁ、絵本読めないんだけど。」


「やだやだ。

 お母さんの隣は私。

 絶対離さない!!」


「違うよ、僕だよ。

 僕がお母さんの隣。

 絶対離さないから。」


「うん、わかった。

 隣はそれぞれ左右にあるから

 いいじゃない。」


「そういうことじゃなくて!!」


「よぉおーし!!」


お母さんはみかとゆうを両腕で

体を持ち上げて、ぎゅーーと

体に近づけた。


「離さないでね!!!」


「えーーー、苦しいぃいい。」


「お母さん、やめてよぉ。」


「くっついてきたのはみかとゆうでしょう。

 もう離れられません。

 そういう魔法がかかりました。

 そういうことで

 今日の絵本は中止です。

 おやすみなさい。」


 お母さんはベッドの宮においていた

 スタンドライトの電気を消した。


「やだーー。絵本読みたい!」


「おやすみなさい。」


「お母さん!!!」

 みかが言う。


「諦めてください。」



「……あたたかいから、もういいや。」

 ゆうは諦めた。


「うん。まぁいいか。」

 みかも目をつぶる。


 お母さんは半分目をつぶって寝たふりを

 した。


 本日の寝かしつけ完了。


 2人の寝息を確かめて、

 そっとベッドから抜け出した。


 絵本を読まない日があっても

 たまにはいいかな。

 

 ハグタイムが長かったから。



【 完 】

 

 




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そばにいたいから もちっぱち @mochippachi

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