私の弟はいつの間にか

藤泉都理

私の弟はいつの間にか




「絶対に離さないでね!お姉ちゃん!」

「わかってるってば」


 私たちが手を繋いでいれば、最強だって教えた私が悪かったのだろうか。






 ホワイトデー。

 小学校の放課後。

 中庭の水槽前にて。


「えと」


 美里香みりかちゃん。本当にごめん。

 バレンタインデーの返事をもらいに来たのに、その彼が彼の姉と、しかも手を繋いで一緒に来たらそりゃあ、戸惑うしかないよねでもこれっきりだから。

 弟はこれから美里香ちゃんに付き合ってくださいって言うから。

 弟は晴れて姉離れするから。


(すんごいさみしいけどっ!)




『あんたたち、距離がバグッてるよ』


 あっちゃんに言われたのだ。

 近すぎるよそれじゃあいつまでたってもべったり姉弟で、独り立ちできないよ、とも。

 いや別にいつも手を繋いでいるわけじゃないのだ。

 どっちかが、不安になったり、心配になったりした時に、手を繋げば安心するわけで。


 両親に弟の事を任された時に、私もいいお姉ちゃんになれるのか不安でいっぱいだった。

 弟の前ではいつだって、元気満々の姉でいたかったのに、自分自身の力だけでは、消し去る事ができそうになかった。

 だから、その不安を消し去る為に、言ったのだ。

 弟にも、自分自身にも。






「っふ。姉と一緒でなければ、戦えない。というわけか?」

「へ?」


 え?何?どーゆー事?

 私が回想している間に、事態が急変しちゃったの?急変しすぎじゃない?

 美里香ちゃんが極悪な微笑を浮かべているんですけど。

 小学五年生ができる笑顔じゃないよね?


「そうだ。僕と姉は一心同体。戦う時は常に一緒なんだ」


 あれ?私の弟はこんなに漢字を使えてたっけ?もっとひらがないっぱいじゃなかったかな?

 え?戦う?え?何?

 私の弟はいつの間にか。




「お姉ちゃん。これからも僕の手を離さないでね」

「えーと。はい」




 ヒーローになっていて、ついでに私もヒーローになっていたそうです。

 手を繋いでいないと変身できないそうです。


 あっちゃん。

 私たちは当分、独り立ちできそうにありません。










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私の弟はいつの間にか 藤泉都理 @fujitori

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