色と芸
キーンコーンカーンコーン、昼休みのチャイムが鳴り、生徒たちが教室に戻っていく。
そのことで、少し足取りが軽くなっていた俺だったが――
「おい、
そして、その隣には去年のクリスマスに俺を振った
彼女はクラスの中でもひときわ輝いており、その人当たりの良さで多くの生徒から好かれていた。
俺は、この二人の組み合わせに今までとは違った緊張感を抱えながら、山口の問いかけに「ああ、ちょっと保健室に」と短く答えた。
山口は、「ふーん」と気のない返事をしてから隣の
去年の出来事から、俺は
そんな彼女と俺は、一瞬目が合った。彼女は、どんな時も明るく振る舞う人気者だ。その笑顔は周りを自然と明るくする魅力が有った。
当時の俺は、
苦みと共に俺の胸を過去が、突き刺してドロドロとした感情が溢れ出してきた。
そんな俺の感情を知らず、
「
「……」俺は、
「
「
そんな、
彼女は、成績も良くて非の打ち所がないが、山口の家はお金持ちだからなのかもしれない。
中学生にして、既に相手を選ぶ基準が、お金なのか。それが”大人になる”ってことなのか、俺にはまだ分からない。
自分の気持ちを把握しかねていると山口と話していた
その表情は、普段の彼女とは雰囲気が違っており、ちょっとした意地悪を楽しむかのような仕草だった。
「ねえ、
今の彼女はまるで舞台に立つ女優、計算された仕草が男心をくすぐる。その瞳は普段の明るさとは異なり、ある種の色が入っている。
その瞬間、俺は
「お前、まさかまだ
山口は嘲笑うような笑い声をあげた。彼は、
俺は、粘りつくような空気の中で、一つ深呼吸をして、彼らに強い視線を送った。
「そうだね。まだ少しは気にしてたかもしれない。でも、今はもう大丈夫だよ」と力強く応えた。
「ふーん、そーなんだ。私への気持ちはそんなに軽かったんだ。ざーんねん」ちっとも残念そうじゃない調子で、
流石に様子がおかしいことに気付いたのか、山口が割って入った。
「おい、
「そうじゃないけど。でも、ちょっと残念じゃない?」クスクスと笑っている
俺たちの間に濃密な空気が流れ込んできたのを感じた。
「ちっ、もう行こうぜ」そう言いながら山口は、
「あ、それじゃね。
引っ張られていた
その様子を見ていると、俺の中の心がざわついた。
何だかんだ言って、俺はまだ
山口と
彼らの後ろ姿を見送りながら、自分の感情を整理しようとしたが、なかなかうまくいかなかった。
今は廊下には誰も居なくなった中で俺は一人、取り残されていた。
人気のない廊下の静けさの中で、俺は深い息を吐き出した。
耳を澄ませると、奥からキーンとした耳鳴りが聞こえてきた。
(大丈夫だ、俺はもう大丈夫)瞳を閉じて、心の中で自分自身に言い聞かせた。
――目を開けると、ふと、廊下の窓から射し込む日差しが目に入った。
その光は、温かくて、俺を慰めてくれるようだった。
「すみません。遅れました」俺は教室の扉を開けて、教室に入ると「もう授業始まってるぞ」国語の先生が気だるげに黒板に向かっていた。
俺は、自分の席に戻り、ノートを開いて、先生が板書をしている内容を黙々と書き記した。
その間、体は手慣れた様子で文字を書いているが、心ここにあらずだった。
頭の中は、『緑化プロジェクト』、
つづく
―――――――――――――――――――――――――――
あとがき
察しの良い悪女ムーブするキャラクターを描くのは初めてかも。
わりと好きなんですよね。悪女。
ブラックラグーンとか最高だなぁ!
佐内さんは、はな さない ケイティBr @kaisetakahiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。佐内さんは、はな さないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます