第3話 過去の影

日々が過ぎ、甚九郎と壇鉄の間の絆は深まっていった。簪作りの技術も徐々に磨かれ、甚九郎の作品には確かな進歩が見られた。しかし、この日、甚九郎は壇鉄の表情にかつてない深い哀しみを見た。


「壇鉄さん、どうしたのですか?」甚九郎が尋ねると、壇鉄は遠くを見つめたまま、静かに話し始めた。


「私がこの世を去ったのは、無実の罪で…。私の技術が、ある人物の妬みを買ってしまったのだ。その結果、私は…。」


彼の声は霧が晴れるように、徐々に過去の真実を明らかにした。壇鉄がこの世を去ったのは、技術の妬みから生じた陰謀の結果だった。自らの名誉を汚され、理不尽な運命を受け入れざるを得なかった彼の話に、甚九郎は強い憤りを感じた。


「それは、とても不公平だ…。」


甚九郎の心に、壇鉄の名誉を回復させたいという強い願いが芽生えた。しかし、どうすれば過去の誤解を解き、彼の名誉を清算できるのか、その方法は見えなかった。


その夜、甚九郎は工房に残された古い文献や壇鉄の作品を調べ始めた。もしかしたら、何か手がかりが見つかるかもしれない。時間を忘れて調査を続ける中、彼は壇鉄がかつて作った、非常に特徴的な簪を発見した。


この簪は、壇鉄が特に誇りに思っていた作品で、その製作技法は彼独自のものだった。甚九郎は、この簪を通じて、壇鉄の技術の優れた証明を世に示すことができるかもしれないと考えた。


「壇鉄さん、この簪を使って、あなたの名誉を回復しましょう。私が証明します。あなたの技術が、いかに素晴らしいものであったかを。」


壇鉄は甚九郎の決意に感動し、彼を温かく見守った。二人は、壇鉄の名誉を回復するための計画を練り始めた。それは、ただの挑戦ではなく、彼らの絆をさらに深める旅の始まりだった。

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