第49話:強化魔法
「それで、旗の回収なんだが……四人で分かれて回収に行ってもらえるか?」
「一人で⁉︎ 確かに、このダンジョンの難易度は優しめに設計されているらしいが……さすがに魔物を倒しながらとなると時間がかかる。全員で行って確実に回収してもいい気がするが?」
リヒトが、俺のアイデアにツッコミを入れた。
確かに、普通に考えればそうだ。だが、俺たちのパーティは普通にやる必要がない。
「それは、『魔物を倒しながら旗を回収する』ならだろ? 旗を回収してここに戻ってくるだけなら、みんななら十分できると思うんだ」
「それだとここに引き連れた魔物が集まって大変なことに……ま、まさか!」
「そうだ」
どうやら、俺の意図が完全に伝わったようだ。
「魔物をチマチマと倒す必要なんてないんだ。一か所——ここに全部の魔物を集めて、まとめて始末してしまえばいい。俺たちならそれができる」
重要なのは、俺が単独で魔物を殲滅できることはない。
大量の魔物を引き連れながら、みんなが無事に旗を回収してここに戻って来られるかということ。
この四人なら、誰一人として失敗することなくこなせるはずだ。
「成功すれば、かなり時間を縮められるわね」
「やりましょう!」
「私も一肌脱ぐとしますわ」
よし、みんなのやる気も十分。これなら、きっと上手くいく。
「じゃあ、出発前に強化魔法を付与しておくぞ」
「強化魔法……ですか?」
「当然だろ? ユリア以外はそれほど防御力は高くない。引っ掛かりなく戻って来られれば大丈夫だとは思うが、念の為に『防御力強化』と『移動速度強化』はあった方がいい」
言いながら、俺は四人に二種類の強化魔法を付与した。
俺、なんか変なこと言ったか?
「す、すごいです……! 本当に! ……って、そうではなく!」
「エレンって、強化魔法も使えたの……?」
「剣に、魔法に、回復魔法に強化魔法まで……? どれだけ多才ですの⁉︎」
「エレンは本当に何でもできるな。剣だけでも超一流だというのに」
そう言えば、強化魔法はまだリヒトたちの前で見せたことはなかったな。
それにしても、『防御力強化』と、『移動速度強化』のような簡単な強化魔法でここまで驚かれてしまうとは思わなかった……。
リヒトが昨日、闘技場の魔法錠を魔法で解錠したように、専門ではない職業の技も簡単なものならできるのはそれほどおかしくないという認識だったのだ。
またもや、自分の常識の無さを知ることとなってしまった。
「じゃあ、気をつけて向かってくれ」
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